はじめに
2026年7月23日(木)には自分の所有銘柄であるダウ・インク(DOW)の2026年第2四半期決算発表があった。
前回2026年4月の2026年第1四半期決算は市場予想を上回る売上、EPS、第2四半期見通しだったのだが、中東情勢を巡る混乱から立ち直るにはかなりの時間がかかる見込みを示し、業界全体への悪影響の可能性に言及したことで0.72%の下落。その際には
「今後のダウ・インク株だが、決算内容自体は好調で第2四半期も堅調な業績が期待できるものの、それを受けて上昇とならなかった中東情勢を巡る混乱から立ち直りの長期化や、それに起因する業界全体への悪影響の可能性がどれだけ重しになるか次第だろう。決算当日および翌日時点では顕著な傾向は見られないため、今後しばらくは株価動向に注意したい。」
と書いていた。
その後は5月に16.6%、6月に18.9%と2ヶ月連続で15%を超える下落と低調な推移となったが、7月に入ってやや上昇している印象がある。
そんな状況中、今回のダウ・インクの決算内容及び株価はどうだったのか。以下に確認して整理しておく。
ダウ・インク2026年第2四半期決算概要
以下の情報はダウ・インクの企業サイトより引用・抜粋。
- 2026年第2四半期の総売上(Net Sales)は120億9200万ドル、前年同期は101億400万ドルで前年同期比20%増
- 2026年第2四半期の一時項目を除く一株当たり利益(Operating Earnings Per Share)は1.44ドル、前年同期は0.42ドルの損失

事業部別業績
【Packaging & Specialty Plastics(パッケージング・特殊プラスチック)】

- 売上高(Net Sales):63億8500万ドルで前年同期比27%増
- 営業EBIT(Operating EBIT):12億7800万ドル、前年同期は7100万ドル
- (ここには書かれていない)営業EBITマージン:20.0%、前年同期は1.4%
【Industrial Intermediates & Infrastructure(素材・インフラストラクチャ)】

- 売上高(Net Sales):31億6600万ドルで前年同期比14%増
- 営業EBIT(Operating EBIT):2億4600万ドル、前年同期は1億8500万ドルの損失
- (ここには書かれていない)営業EBITマージン:7.8%、前年同期は-6.6%
【Performance Materials & Coatings(パフォーマンスマテリアル・コーティング)】

- 売上高(Net Sales):23億6100万ドルで前年同期比11%増
- 営業EBIT(Operating EBIT):1億3300万ドル、前年同期は1億5200万ドル
- (ここには書かれていない)営業EBITマージン:5.6%、前年同期は7.1%
2026年通期見通し
2026年通期の考慮要因(FY2026 MODELING CONSIDERATIONS)は以下の通り。

主な項目:
- Equity Earnings(投資損益):前年比1億5000万~2億5000万ドル増加(前回と変わらず)
- Net Interest Expense(純支払利息):~7億ドル(前回と変わらず)
- D&A(Depreciation and Amortization:減価償却費):~27億ドル(前回の~29億ドルから下方修正)
- Operational Tax Rate(運用税率):20~30%(前回と変わらず)
- Dividends from Equity Companies (出資会社からの配当):0~6500万ドル(前回の0~2500万ドルから上方修正)
- CapEx(設備投資):~25億ドル(前回と変わらず)
2026年第3四半期の見通しは以下の通り。

- 営業EBITDA:~17億5000万ドル
- Packaging & Specialty Plastics:12億ドル
- Industrial Intermediates & Infrastructure:2億5000万ドル
- Performance Materials & Coatings:3億ドル
その他
その他決算発表及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。前回四半期決算でもアナウンスがあった通り、7月1日から最高経営責任者(CEO)がJim Fitterling氏からKaren S. Carter氏となっており、今回のカンファレンスコールはKaren S. Carter氏と最高財務責任者(CFO)の Jeff Tate氏が中心で行われた。
- 景気循環を通じて長期的な価値を創造するために当社が講じている施策の概要

- ダウが優位に立ち、お客様と共に差別化された価値を創造できる高付加価値市場において、集中的な成長とイノベーションを推進
- 競争力を強化し、お客様との関係を深め、当社が主導権を握る最大の機会がある分野での成長を加速させるため、的を絞ったイノベーション、テクノロジー、そして卓越した営業活動を優先
- ポートフォリオの競争力強化
- ポートフォリオ全体で最善のオーナーシップの考え方で事業を運営し、優れた事業、テクノロジー、そして低コストのポジションに投資すると同時に、競争力がなくなった分野では対策を講じる
- バランスの取れた資本配分アプローチ
- 一貫した原則によりバランスシートを強化し、キャッシュフローを重視し、最大限の財務上の柔軟性を確保する
- ダウが優位に立ち、お客様と共に差別化された価値を創造できる高付加価値市場において、集中的な成長とイノベーションを推進
- 第2四半期は堅調な業績を達成
- 純売上高は121億ドルで前年同期比20%増、営業EBITDAは23億ドル
- 当四半期に3億ドル以上の利益を実現
- 「Transform to Outperform」も大きな成果を上げ始めている
- 英国バリーにある上流シロキサン製造ユニットを閉鎖
- シリコーン事業全体にわたる新製品とイノベーション能力についても発表
- ダウに影響を及ぼす地域およびマクロ経済状況について
- まず、当社はいくつかの重要な市場主導の追い風の恩恵を受けている
- 例えば包装は世界的に堅調に推移しており、データセンターの需要は供給を上回っている
- 市場が依然として厳しい状況にあり建設的とは言えない分野でも、当社のチームは成果を上げている
- 例えば、欧州とアジアの両方でEVの普及が進む中、モビリティ用途向け電子機器におけるシリコーン事業を通じて市場シェアを拡大
- 南北アメリカでは、住宅市場が住宅価格の高騰と住宅ローン金利の上昇により依然として低迷しているにもかかわらず、消費者は安定しており、経済活動は建設的で、支出は堅調に推移している
- 中東では地政学的緊張が依然として高く、物流は依然として制約を受けている
- ホルムズ海峡の交通量は依然として過去の水準を下回っており、世界のサプライチェーンを混乱させ続けている
- エネルギーと原料に対する地政学的な影響は引き続きリスクプレミアムの上昇を支えており、信頼性と物流の両方を含む供給の安全性に対する新たな価値が見られる
- ヨーロッパでは、高い操業コストや労働コストといったより深刻な構造的圧力が依然として続いている
- それにもかかわらず、政府支援や貿易保護措置など、建設的な動きがいくつか現れ始めている
- アジア太平洋地域では様々な兆候が見られ、地域の消費者需要は依然として低迷しており、5月の小売売上高は弱かったものの、工業生産と製造活動は最近加速している
- まず、当社はいくつかの重要な市場主導の追い風の恩恵を受けている
- 第3四半期見通し
- 第3四半期のEBITDAの予想は約17億5000万ドルで前期比減少を想定
- この前期比の減少は、6月の北米ポリエチレン価格の最近の合意による予想されるマージン圧縮と、第2四半期の季節的な需要の高まりにから通常のパターンに落ち着くことを考慮
- 第3四半期のEBITDAの予想は約17億5000万ドルで前期比減少を想定
- 財務関連
- 約140億ドルの流動性を維持しており、バランスシートを保護しながら、景気循環を通じて柔軟に投資できる体制を整えている
- 2029年まで実質的な債務償還期限はなく、最近、リボルビング信用枠を2031年まで延長
- 現金面では、第1四半期にNOVA訴訟で約10億ドルの賠償金を受け取り、第3四半期の初めに残りの約3億ドルを受け取った
- 2025年1月に発表した10億ドルのコスト削減プログラムに関連する残りのコスト削減を実質的に完了
- 質疑応答
- 最近の原油価格の上昇や、ホルムズ海峡の封鎖が続いていることは見通しに反映されているのか
- ご指摘のとおり、多くのことが7月に入って変わり始めた
- 今週の状況を見ると、原油価格は週初めから現在までに10ドル上昇、主要な原料価格、ポリエチレン価格も上昇している
- こうした動向に加え、堅調な需要、ポリエチレン価格の上昇などを考えると第3四半期のEBITDAの予想は約17億5000万ドルにプラスとなる可能性もある
- ただ状況は依然として不安定な状態である
- 資本配分戦略について
- 引き続き取り組むことの1つは、投資適格の信用プロファイル維持
- 特に過去1年で蓄積した10億ドル強の負債の一部を返済し続けることが最優先事項
- 実際、第2四半期中に約8000万ドルの債務を返済し、余剰資金を活用して、引き続き負債削減を進めている
- 今後も自社株買いの機会を検討していくが、2026年中には実施しない見込み
- 引き続き取り組むことの1つは、投資適格の信用プロファイル維持
- SG&A(販売及び一般管理費)について
- SG&Aの数値は第2四半期の結果から低下していく見込み
- 人員削減の効果は第2四半期のSG&Aには反映されていない
- 中東におけるサプライチェーンについて
- ダウの立場から申し上げると、弊社は自社出荷分を追跡しているが、それ以外については不明
- 私たちが最も注視しているのは、サプライチェーンの物流ネットワークが実際にどのように正常化していくかということ
- 今のところ、何が起こるかを推測するには、まだ少し不安定な状況が続くと予想している
- 最近の原油価格の上昇や、ホルムズ海峡の封鎖が続いていることは見通しに反映されているのか
質疑応答では(自分にとっては)詳しすぎる質問が多く、それらは割愛している。
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想を比較してみると、
- 2026年第2四半期の総売上(Net Sales)は120億9200万ドル、市場予想の120億3200万ドルを上回っている
- 2026年第2四半期の一時項目を除く一株当たり利益(Operating Earnings Per Share)は1.44ドル、市場予想の1.28ドルを上回っている
- 2026年第3四半期のEBITDA見通しは17億5000万ドル、市場予想の17億4000万ドルを僅かに上回っている
となっている。
まとめ
上記の様な決算を受けてダウ・インク株は

前日比1.12%の下落。同日の米国市場が

前日取引終了後にアルファベット(GOOGL.O)とテスラ(TSLA)が発表した第2四半期決算が投資家の失望を誘うものであったことから、ハイテク銘柄を中心に大きく下落したのと比べると市場と同程度といったところ。
ただ日中の動きを見てみると

開場直後は決算資料から4%を超える上昇であったが時間経過と共に下落傾向となって、最終的には前日比マイナスとなっている。主要項目は市場予想を上回っただけに市場の下落に引っ張られた感は否めず、勿体ない感はある。また7月に入ってからの中東情勢変化を踏まえて今後への懸念が重しになった可能性もある。
決算後数日を含めた年初来のダウ・インク株の推移を市場(S&P 500)と比べると

冒頭に書いた流れで迎えた今回決算内容はそこそこだったものの、中東情勢への懸念や市場の下落に引っ張られたこともあり下落。翌日、翌々日も続落となってどうなることかと思ったが、その後は少し反発して一直線の下落とはなっていない。
今後のダウ・インク株だが、今回決算の主要項目は市場を上回ったものの7月に入ってからの中東情勢の変化が業績に影響してくるのでは、という懸念があるため上昇傾向へとはなりにくいだろう。何とか4月からの下落傾向に歯止めがかかり、中東情勢が落ち着くまで現状維持程度で株価推移してくれると良いのだが。