はじめに
2023年6月4日(日)にはOPECプラスの閣僚級会合が行われた。
今回の閣僚級会合(OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting)は2022年12月以来半年振りのことになるが、OPECプラスの会合としては他にも共同閣僚監視委員会(JMMC:Joint Ministerial Monitoring Committee)が現在2ヶ月に一度開催されており、2023年4月にはそちらの会合で予想外の追加協調減産が発表されていた。
今回のOPECプラス会合はどうなったのか。そしてそれを受けて原油価格及び自分が所有している原油価格に影響されやすいエクソン・モービル(XOM)株がどうなったかについても確認しておく。
2023年6月4日のOPECプラス会合及びその前後の原油関連情報まとめ
以下は主にロイター、ブルームバーグの報道などより引用・抜粋。
【会合前】
- 5月23日にサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相がカタール経済フォーラムで、「私は彼ら(原油の空売り投機筋)に痛い目に遭うだろうと忠告し続けている。彼らは4月に痛い目に遭った」「私は気を付けろとだけ言っておきたい」と発言。市場ではこの発言が追加減産の警告と捉えられた
- 5月25日にロシア通信(RIA)がロシアのノバク副首相が高水準の米金利と中国経済の予想以上の回復鈍化が原油価格のさらなる上昇を妨げており、現在の価格は世界のマクロ経済状況に対する市場の評価を反映している。そのため6月4日の会合では新たな措置は発表されないと予想している、と報道
- 6月2日、ロイターは3人の関係筋の情報として6月4日の閣僚会合で選択肢の一つとして追加減産について討議しており、うち2人によると日量約100万バレルの追加減産についても議論されていると報道
【会合結果】
- 今回の会合は7時間に及んだ
- 協調減産の枠組みを2024年末まで延長することで合意
- 2024年1月から全体の生産目標を現行目標からさらに日量140万バレル引き下げ、合計で日量4046万バレルとすることを決定
- 一部諸国の削減量測定の基準変更が争点の一つとなり、結局一部のアフリカ諸国が未使用の生産枠を部分的に断念することに同意した一方、アラブ首長国連邦(UAE)が生産枠を拡大
- 次回閣僚級会合は2023年11月26日予定
- また今回、ブルームバーグ、ロイター、ウォールストリート・ジャーナルはいずれもOPEC本部での会合の取材に招待されず。記者らは会議場の外で参加者への取材を継続したものの、OPEC側から質問への回答や4日の決定に関する説明はなかった(ちなみに英フィナンシャル・タイムズ等は招待されている)
【会合後】
- サウジアラビアは7月に1ヶ月間の自主的な追加減産を実施し、石油生産量は日量100万バレル減って約900万バレルになると発表。この減産措置は延長される可能性もある
- サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は「市場は安定を必要としている」「この市場の安定化に必要なことは何でもする」と発言
まとめ
今回のOPECプラスの決定を受けてニューヨークの原油先物価格は
1バレル=74ドルまで大きく上昇したものの一時的なものに留まり、6月5日に発表された米ISM非製造業指数が市場予想を下回る鈍化だったこともあって原油価格は更に下落して会合前の水準となっている。
そのため6月5日のエクソン・モービル(XOM)株も
前日比ややマイナスで
同日の米国市場とほぼ遜色ない形で終えている。
前回2023年4月の追加減産では原油先物価格が大きく上昇したが、その後は中国の経済回復が予想よりも弱含みであることや米国を含む世界的な景気後退の懸念などから原油価格は下落傾向にあり、今回のサウジ追加減産もその流れを覆すには至らなかったということだろう。
原油先物価格が上昇すればエクソン株もつられて上昇する可能性は高いが、過度に原油先物価格が上昇し過ぎると市場全体が弱含みになる可能性もあるので、結果的に見れば今回のOPECプラス会合は自分のポートフォリオ全体にとっては悪くない結果だったともいえる。
次回のOPECプラス閣僚級会合は11月末予定だがサウジは7月の追加減産を延長する可能性にも言及しており、2023年4月の様に共同閣僚監視委員会で更なる動きがある可能性も否定できない。あまり市場に大きな影響を及ぼす様な動きをOPECプラスがしないでくれるといいのだが。