はじめに
米国時間2024年8月14日(水)に2024年7月の米消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が米労働統計局から発表された。
前回2024年7月発表のCPIはインフレ鈍化が見られ9月に利下げとの観測が高まり、米国株式市場はAI関連の大型ハイテク銘柄から小型株へのシフトが進みNASDAQ総合、S&P 500は下落、ダウ工業平均はほぼ横ばい。一方米国債利回りは低下、ドル円為替はドル安に振れるという結果になった。
その後米国株式市場は7月半ばからの決算発表で、AI関連の大型ハイテク銘柄で振るわない銘柄が多かったこともあって、NASDAQ総合、S&P 500は伸び悩み、ダウ工業平均がそこそこ上昇して7月を終えたのだが、8月に入っての3営業日は色々な要素が重なって米国株式市場は大幅下落、ドル円為替は大幅ドル安。以降はまずまず落ち着きを見せていたのだが、経済指標次第ではまた大幅変動があるのでは、という懸念が残る状況だった。
そんな中で今回のCPI結果、そしてそれを受けて市場はどう動いたのか。以下に確認して整理しておく。
2024年8月14日米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)発表の2024年7月消費者物価指数(CPI)
以下の情報は米労働省労働統計局の発表資料より引用・抜粋。
- 2024年7月の前月比消費者物価指数(季節要因調整済)は前月比0.2%の増加、市場予想も0.2%の上昇
- 2024年7月の前年比消費者物価指数(季節要因調整済)は全品目では2.9%上昇、市場予想は3.0%の上昇。変動の大きい食品及びエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは前年比3.2%上昇、市場予想も3.2%の上昇、前月比では0.2%の上昇、市場予想も0.2%の上昇
- 家庭用食品(Food at home)は前年比1.1%上昇。2024年6月も前年比1.1%上昇
- 電気代(Electricity)は前年比4.9%上昇。2024年6月は前年比4.4%上昇
- 住居費(Shelter、主に家賃。サービス分野で最大の構成要素でCPI全体の約3分の2を占める)は前年比5.1%上昇。2024年6月は5.2%上昇
全品目の指数は前年同月比2.9%で、3%を下回ったのは2021年3月以来。そして食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年同月比4ヶ月連続で鈍化。今回の前年同月比での伸び率は2021年4月以来の低水準となっている。
ただサービス分野で最大部分を占める住居費は前月の前月比0.2%上昇に対して0.4%上昇となっているのは気にかかる。労働統計局によると総合CPIの前月比上昇率の90%近くは住居費の伸びによるもの。
またブルームバーグの算出によると住宅とエネルギーを除いたサービス価格は0.2%上昇。3ヶ月振りの上昇となったが、引き続き低水準ではある。
同日の市場の動き
米国株式市場
今回のCPI結果は概ね市場予想通りだったため、米国株式市場に大きな変動はなし。NASDAQ総合が伸び悩んだのは、CPI結果というよりは米司法省がグーグルの分割を含む選択肢を検討しているなど報じられたことで大型ハイテク関連銘柄がやや軟調だったためだろう。
米国10年債
CPI発表を受けていったん利回りが上昇したもののその後利回りは低下し、結局前日比ではほぼ変わらず。結局CPIが市場予想通りだったことから、大きな変動幅ではなく最終的にも落ち着いた結果。
ドル円為替
CPIの発表があった米EDT8:30は上記ドル円チャートのBST13:30。1ドル=147円前後から147.50前後までドル高になったが一瞬で、その後値を戻した後は147円を超える辺りで方向感には乏しい動き。やはりCPIが市場予想通りだったことからか大きな変動とはならなかった。
まとめ
2024年8月発表のCPIはほぼ市場予想通りで、米国株式市場、米国債利回り、ドル円為替のいずれも小幅な変動に留まった。
冒頭に挙げた様に2024年8月は市場が大きく変動しており、そのきっかけの一つとなったのは8月1日発表の新規失業保険申請件数、製造業景気指数といった経済指標が予想以上のペースで景気減速している可能性を示唆したためで、その後も経済指標に敏感に反応していただけに今回のCPIでも大幅変動があるのでは、と思っていたのでまずは無難に通過して一安心。
とはいえCPIはFRBの政策金利に影響を及ぼすインフレ関連の重要経済指標であるのだが、上述した8月初めの様にその他の経済指標の結果次第では、市場が大きく動く可能性もある。経済指標の動向に注意しながら、8月22日~24日のジャクソンホール会議でのFRBパウエル議長の発言を待ちたい。