GEの航空機リース事業売却発表及び株式併合案、他(2021/3)

はじめに

2021年3月になってからゼネラル・エレクトリック(GE)に関して以下の2つをまとめているのだが、

UBSのアナリストがGE目標株価引き上げ(2021/3)

GEの航空機リース事業売却報道について(2021/3)

いずれもその中で米東部時間の3月10日8時から開催される2021 GE Investor Outlookでの発表内容がポイントになるだろう旨を書いた。

以下に昨日行われた2021 GE Investor Outlookの内容をまとめておく。


2021 GE Investor Outlookまとめ

以下はGEの企業サイトより引用・抜粋。

2021年通期見通し

ほぼ2021年1月の2020年第4四半期決算発表資料と変わらず。右上のOutlook assumptionsで斜体になっている部分が変わっているが数値目標自体に変わりはなく、内容も気にしなくてよい程度。

航空機リース事業の売却発表

GEの航空機リース事業売却報道について(2021/3)通りに、航空機リース事業をアイルランドのエアキャップホールディングスに売却する事を発表している。以下はその取引の概要。

このページ以外の情報も併せて簡単にまとめると、取引の概要は以下の様になる。

  • 取引総額は300億ドル強(valued at more than $30 billion)
  • 内訳は240億ドルの現金、合併後の株式の46%など
  • 第1四半期に30億ドルの現金以外の費用を負担(GE will record an approximate $3 billion non-cash charge)
  • 2021年GEキャピタルは、調整後継続利益で5〜7億ドルの損失を計上し、現金と保険を除く報告資産は約170億ドルになると想定(In 2021, GE Capital expects to generate a loss in adjusted continuing earnings of between $0.5 to $0.7 billion, with reported assets, excluding cash and Insurance, of approximately $17 billion)
  • GEの2021年インダストリアルFCFの見通しは25億ドルから45億ドルで、この決定による一時的な影響は除外されている(excludes the one-time impact of this decision)

1対8の比率での株式併合案

予想外に株式併合(Reverse Stock Split)案についても発表していた。

  • GE is also announcing today that its Board will recommend that shareholders approve a reverse stock split at a ratio of 1-for-8 and a corresponding proportionate reduction in the number of authorized shares of Common Stock.
    またGEは本日、取締役会が株主に1対8の比率での株式併合とそれに対応する普通株式の承認済み株式数の比例削減を承認することを推奨することを発表しました
  • Whether and when to effect it would be at the discretion of GE’s Board, at any time prior to the one-year anniversary of its 2021 Annual Meeting on May 4, 2021.
    それを実施するかどうか、いつ実施するかは、2021年5月4日の2021年次総会の1周年前の任意の時点でGEの取締役会の裁量に委ねられます

株式併合により、発行済み株式数が時価総額が同等の企業の典型的な数に減少するだろうとしている。


発表を受けてのGE株価とその要因

上記の様な発表を受けて3月10日のGEの株価がどうなったかというと

まさかの5.36%下落。同日のダウ工業平均が1.46%、S&P 500が0.60%それぞれ上昇し、NASDAQが0.04%の下落に留まっていると比べると大幅な値下がりであった事が分かる。

情報が多過ぎて昨日のGE株が大きく下がった理由を判断するのは難しいのだが、以下に考えられる理由を列挙してみる。

航空機リース事業の売却詳細が今一つだった

航空機リース事業の売却発表自体は、報道があった際にGE株は上昇していたのでポジティブだと思うのだが、その内容で上述した様にGEが「第1四半期に30億ドルの現金以外の費用を負担」、「調整後継続利益で5〜7億ドルの損失を計上」といった点が明らかになった点がネガティブに捉えられた可能性はあると思う。

GEの通期見通しがアップデートされなかった

先に述べた様に2021年通期見通しの数値は2020年第4四半期決算発表時と変わらずだったのだが、逆に今回の航空機リース事業の売却を踏まえたアップデートが無かった事事態が市場に失望された可能性はある。

S&Pが取引完了後のGEの格付け引き下げ可能性に言及

現時点ではS&PのGE格付けはBBB+なのだが、航空機リース事業の売却を受けて「Negative watch」としている。

コメント全体としては必ずしもネガティブなものではなく、あくまで「depending on how much debt the company still has after the deal(取引後の会社の債務額によっては)」という前提を置いた上でのNegative watchであるので特に気に掛ける必要はないと思うのだが、GEの株価に影響を及ぼした可能性はある。

ちなみにMoody’s、Fitchは同日GEの格付けを再確認し、そのまま維持している(Moody’sはBaa1で見通しNegative、FitchはBBBで見通しは安定的)。

今年に入ってからのGE株上昇の調整

年初来のGE株価は以下の様になっており、

ダウ工業平均の5.5%上昇に比べ、昨日の下落を含めても20%超上昇している。昨日の報道で色々材料が出尽くしたと考え、利益確定に動いたとしてもおかしくはないだろう。


まとめ

上記の様に昨日3月10日は、ゼネラル・エレクトリックに関するアップデートが目白押しで情報過多の気味がある。

2日前に航空機リース事業の売却について書いた際にGEの株価について、

「一応アナリストの目標引き上げや、利益率の高いGEの航空機部門(Aviation)の業績に関係するボーイング(BA)株の上昇につられる等GE株価上昇の理由はそれなりにあるのだが、それにしてもここひと月のGE株の上昇は少し急すぎる気がする」

「ここひと月程の急激な上昇の反動がある可能性」

などと書いたが、悪い方の想定通りに進んでしまったようだ。

気になるのは短期的にこの下落が一時的なもので済むのか、それともまだ下落の余地があるのか、という点。

個人的な考えとしては、来月下旬に実施されると思われる(現時点では未定)GEの2021年第1四半期決算発表で今回の航空機リース事業の売却を踏まえた2021年通期見通しがアップデートされるまでは、ここひと月の上昇傾向からはペースダウンをして市場とそれ程変わらない動きをするのではないかと思うのだが、これら発表を受けてアナリストが投資格付けや目標株価を修正するとそれに応じて上下動する可能性もある(どちらに振れるかは自分には分からないが)。

GEは一時のキャッシュフロー懸念からは回復傾向にあるのは確かだと思われるので、やはり自分としては長期的な視点で見ていくのが適切だろう。

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