2023年4月発表の米消費者物価指数と市場(2023/4)

はじめに

2023年4月12日(水)に2023年3月の米消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が米労働統計局から発表された。

4月に入ってからは市場がやや落ち着いた印象があるのだが、前回は伸びが減速傾向にあった米CPIがどうだったか、そしてそれを受けての市場はどう動いたか。以下に確認して整理しておく。


2023年4月12日米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)発表の2023年3月消費者物価指数(CPI)

以下の情報は米労働省労働統計局の発表資料より引用・抜粋。

  • 2023年3月の前月比消費者物価指数(季節要因調整済)は0.1%上昇、市場予想は0.2%の上昇

  • 2023年3月の前年比消費者物価指数(季節要因調整済)は全品目では5.0%上昇、市場予想は5.1%の上昇で2021年5月以降最小の伸び率。変動の大きい食品及びエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは前年比5.6%上昇、市場予想も5.6%の上昇

前年同月比ベースでコアCPIの伸びが総合指数の伸びを上回るのはこの2年余りで初めて。

  • 家庭用食品(Food at home)は前年比8.4%上昇。2023年2月は前年比10.2%上昇
  • 電気代(Electricity)は前年比10.2%上昇。2023年2月は前年比12.9%上昇
  • 住居費(Shelter、主に家賃。サービス分野で最大の構成要素でCPI全体の約3分の1を占める)は前年比8.2%上昇。2023年2月は8.1%上昇

変動の大きい食品及びエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは前月比0.4%の上昇で市場予想と同じ。

総合指数の前年比上昇率が2月の6.0%上昇から急減速したが、ロシアのウクライナ侵攻直後でエネルギー価格が急騰していた昨年3月と比較しているためで、コアCPIは2月の前年比上昇率から0.1%ではあるが増加している。


同日の市場の動き

米国市場

開場直後は上昇して始まったものの一時前日比マイナスとなり、その後上昇するという方向感に乏しい動き。これは前年比の総合指数に減速傾向が見られたものの、コアCPIは6ヶ月振りに上昇するなど判断しづらい結果だったためと思われる。

そして14時に発表された米連邦準備理事会(FRB)が公表した3月21、22日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受けて再びマイナスに転じそのまま閉場している。これは米銀の経営破綻で広範な金融ストレスが引き起こされないと明確になるまで利上げを一時停止することが検討されたものの、最終的にはインフレ対応を優先すると結論付けたことが影響しているのだろう。

米国10年債

こちらはCPI結果を受けて前日から利回りが低下して始まった後はやや上昇傾向が続く。しかしその後13時ぐらいから再び利回りが低下して取引を終えるという方向感に乏しい動きとなっている。14時に公表されたFOMC議事要旨への反応は限定的だった。

ドル円為替

ドル円為替は米CPIの結果を受けてドル安となりその後はあまり変わらない状況となっている。グラフで見ると大きく変動している様にも見えるが実際には0.5円程度の変動とそこまで大きな変動ではなかった(前回のCPI時は1円程度変動していた)。


まとめ

今回のCPI結果はあまり株式市場には大きな影響を及ぼさず。どちらかというと同日午後に発表されたFOMC議事要旨の方が影響を及ぼしている。10年債や為替はそれなりに変動があったがその変動幅は今回はさほどでもなかった。

CPI結果は総合指数は前月比で減速傾向が見られたものの、先に書いた様に昨年のウクライナ侵攻を考慮に入れる必要があるだろうし、コアCPIは逆に僅かながら上昇。CPI全体の約3分の1を占める住居費も計測時に時期的なズレがあるとされるものの上昇しており、全体として判断が難しいことが市場の方向感が定まらなかった要因だろう。また時期的にこれから米企業の四半期決算が本格化するため、CPI結果の影響が限定的という側面もあったかもしれない。

前回のCPIでは市場がそこそこ動いたのに比べると穏当にイベントを通過した気がするが、明確な傾向が出なかったことで次回のFOMC会合(5月2、3日)での政策金利がどうなるかの不透明感が増した気もする。これから本格化する米企業の四半期決算、5月初のFOMCを無難に乗り切って欲しいところだが、どう転ぶか想像がつきにくいので精神的に落ち着かない日々が続きそうだ。

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