はじめに
2026年8月6日(木)には自分が所有しているワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)の2026年第2四半期決算発表があった。
前回2026年5月の決算では売上は市場予想とほぼ同じ。EPSは市場予想を大きく下回ったが、その主要因となったNetflixへの違約金は実際にはパラマウントが支払っており会計処理上の問題に過ぎないこと、何よりパラマウントによる買収を控えていることが決算内容よりも重視されているため0.29%の下落に留まっている。その際には
「今後のワーナーブラザース株だが、パラマウント・スカイダンスの全社買収提示額が一株当たり31ドルであるため、買収が成立すれば31ドルに近づくと思われるのだが、現在は何故かそれを下回る27ドル台での推移が中心。まずは規制当局の問題をクリアして、このまま買収が成立するのかどうかに注意しておきたい。」
と書いていた。
その後は規制当局の審査が逐次行われていたのだが、
米地裁がパラマントのワーナー買収を一時差し止め(2026/7)
でまとめた様に7月に入ってから米連邦地裁での動きが活発化している。このまとめ以降、今回決算前までの主な動きを追加すると、
- 2026年7月24日に州司法長官連合による反トラスト法訴訟と一時差し止め命令を受け、パラマウントは「裁判の判決が出るか、2027年6月1日のいずれか早い方まで買収手続きを完了させない」ことで原告側と合意し、裁判所に文書を提出
- 2026年8月4日に米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所が反トラスト法訴訟の審理を2027年3月2日に開始する日程を確定
- パラマウント側は2026年秋の早期開催を求めていたが、却下された
- 2026年8月6日、ワーナーブラザースの決算発表前に英国の競争・市場庁(CMA)と文化・メディア・スポーツ省が買収を承認
- パラマウント側が英地上波「チャンネル5」の編集の独立性や、英国内での番組制作委託を最低5年間保証するという法的拘束力のあるコミットメントを提示したため、介入を回避
となっている。
現状は主な政府レベル(米、EU、英国、中国など)では承認済み、米州レベルでの審査待ちという状況。また上述の動きを反映してか7月下旬にはワーナーブラザース株は年初来安値を更新したことは覚えている。
そんな状況の中、今回のワーナーブラザース決算内容及びそれを受けての株価はどうなったのかについて確認し整理しておく。
ワーナーブラザース・ディスカバリー2026年第2四半期決算概要
以下の内容は、ワーナーブラザース・ディスカバリーの企業サイトより引用・抜粋。
- 2026年第2四半期の総売上高(Total Revenues)は87億1700万ドル、前年同期は98億1200万ドルで為替の影響を除くと前年同期比12%減少
- 2026年第2四半期のシリーズA株希薄化後1株当たりの純利益(Net income per share allocated to Warner Bros. Discovery, Inc. Series A common stockholders Diluted)は0.06ドル、前年同期は0.63ドルで前年同期比90%減
前年同期に比べてシリーズA株希薄化後1株当たりの純利益が大きく減少しているのは、NBA放映権の喪失、スタジオ部門に前年同期のA Minecraft Movieの様なヒット作が無かった事、合併・買収関連の一時的費用と償却費として11億ドルを計上していることなどが影響している。

- 2026年第2四半期のフリーキャッシュフローは5億7200万ドル、前年同期は7億200万ドル
フリーキャッシュフローは、事業分離および取引関連の項目により約3億5000万ドルのマイナスの影響を受けたとのこと。

事業部別業績
【ストリーミング部門】

- Total Revenues(売上):29億9500万ドル、前年同期は26億9200万ドルで前年同期比11%増加(恒常為替ベースでは10%増加)
- Adjusted EBITDA(調整後EBITDA):5億1200万ドル、前年同期は2億9300万ドルで前年同期比75%増加(恒常為替ベースでは63%増加)
【スタジオ部門】

- Total Revenues(売上):23億2800万ドル、前年同期は38億100万ドルで前年同期比39%減少(恒常為替ベースでも39%減少)
- Adjusted EBITDA(調整後EBITDA):9600万ドル、前年同期は8億6300万ドルで前年同期比89%減少(恒常為替ベースでも89%減少)
【グローバルリニアネットワーク部門】

- Total Revenues(売上):39億9100万ドル、前年同期は48億300万ドルで前年同期比17%減少(恒常為替ベースでも17%減少)
- Adjusted EBITDA(調整後EBITDA):14億4600万ドル、前年同期は15億1200万ドルで前年同期比4%減少(恒常為替ベースでは5%減少)
2026年見通し
2026年の見通しについてはいつもと同様資料での発表は無く
- Warner Bros. Discovery, Inc. may provide forward-looking commentary in connection with this earnings announcement on its quarterly earnings conference call.
とカンファレンスコールで言及する可能性があると述べるに留まっている。
その他
その他決算発表及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。カンファレンスコールは決算資料の説明はほとんどなく(事前資料あり)、質疑応答が中心。
また質疑に関しては前回と同様「第2四半期の業績および関連する事業・財務トピックに関する質問に限定していただきますようお願いいたします。株主の皆様への書簡に記載されているとおり、経営陣はパラマウント・スカイダンス社との買収提案に関する質問にはお答えできません」と前置きされていた。
- 第2四半期のハイライト
- 当初から、私たちの戦略は世界をリードするストーリーテリング企業を構築すること、つまり最高のクリエイティブ人材を引き付け、維持し、世界中の視聴者にリーチし、最終的に株主価値を創造することだと述べてきた
- それが力強い成果につながっており、そのことはストリーミング事業において最も顕著に表れている
- 第2四半期にはストリーミング部門の売上が初めて30億ドルを超え、加入者関連の利益成長率は、エンゲージメントと加入者数の好調な推移により、為替変動を除いて前期比200ベーシスポイント加速して10%となった
- 同様に重要なことに、ストリーミングは調整後EBITDAで5億1200万ドルを生み出し、2025年の同時期と比較してEBITDAが60%以上改善し、調整後EBITDAマージンが17%近くになった
- HBOの番組シリーズは、これまで以上に一貫してより多くのグローバル視聴者を獲得し、いくつかの番組は平均視聴者数が3000万人を超えている
- 2027年も強力なコンテンツパイプラインにより、この勢いは続くと予想
- また第2四半期には、当社のプレミアムスポーツコンテンツの価値が証明された
- 史上最高の視聴率を記録した全米選手権バスケットボールの試合
- MLBレギュラーシーズンの視聴者数がこれまでのところ20%以上増加
- NHLプレーオフの視聴者数が50%増
- メディア業界は本質的に当たり外れのあるビジネスであることは疑いようがなく、それは今四半期の当スタジオの業績にも反映された
- 最近の映画作品の中には期待を下回るものもあったが、重要なのは、リスクと変動性をより適切に管理するために、スタジオ部門の変革と多様化に長年取り組んできたこと
- 2026年と2027年の映画作品から、今後の展開に大きな期待を寄せている
- 長期的には、この部門が調整後EBITDAで30億ドル以上を創出するという目標を達成できると引き続き期待している
- 財務関連
- 当四半期にブリッジ・ファシリティの残高150億ドルを、130億ドルおよび17億ユーロのタームローン・ファシリティ(TLB)へと借り換えることに成功
- 結果、当初のブリッジ・ファイナンスの構成と比較して、年間で約150bpsの支払利息の削減が見込まれる
- 当四半期のフリーキャッシュフローは5億7200万ドル
- これはWBDとパラマウント・スカイダンスとの間で進行中の合併取引に関連する約3億5000万ドルの費用を負担したにもかかわらず達成されたもの
- 基礎的なキャッシュ創出能力は引き続き堅調であり、当社の事業が持つ収益力とキャッシュ創出の特性を反映している
- 当四半期末時点での純有利子負債は約300億ドル、純レバレッジ倍率は3.4倍
- 当四半期にブリッジ・ファシリティの残高150億ドルを、130億ドルおよび17億ユーロのタームローン・ファシリティ(TLB)へと借り換えることに成功
- 買収関連
- パラマウント・スカイダンスへの売却は合意通り完了すると確信している
- 本取引の完了は、法的手続きの終了から5日後、または2027年6月1日のいずれか早い時点まで保留されている
- なお、決算説明会において本取引に関する質問は受けつけない
- まとめ
- パラマウントとの合併完了に向けた準備を進める一方で、事業変革を継続するための3つの戦略的優先事項の遂行に引き続き注力していく
- スタジオ部門を業界のリーダーとして維持し、当社の多岐にわたる事業全体で活用可能な高品質なコンテンツやフランチャイズをさらに発展させること
- HBO Maxのグローバル展開を拡大しつつ、加入者関連の収益および収益性の力強い成長を牽引すること
- グローバルリニアネットワークを最適化するための戦略的投資を行うこと
- パラマウントとの合併完了に向けた準備を進める一方で、事業変革を継続するための3つの戦略的優先事項の遂行に引き続き注力していく
- 質疑応答
- スタジオ部門のEBITDAを長期的に30億ドルの水準に戻す具体的な方法について
- まず映画ビジネスにおける今四半期は、明らかに予想通りではなかった
- (好調だった)2025年は比較対象としては厳しいもので、前年と比較すると、映画ビジネスは今年は間違いなく厳しい状況になるだろう
- ここで重要なのは、このような四半期を消化できるような体制を整えるために、スタジオの多様化と変革に多額の資金、時間、経営陣の注意を投資してきたということで、こうした投資はやがて大きな成果をもたらすだろう
- 2027年を非常に楽しみにしている。ラインナップは素晴らしいもので、2026年と比較しても、より大規模で、将来性の高い「テントポール(大型)」IPが揃っている
- またワーナー・ブラザース・テレビジョンは非常に好調に推移しており、あらゆるプラットフォームで80以上の番組が放送・配信されている。今後、我々の追い風となる要素を一つ挙げるとすれば、SVOD(定額制動画配信)向けに制作された番組がライブラリーに戻ってくることによる恩恵を受けられるようになる点
- ゲームに関しては今年発売されるLEGO Batman、今後発売予定のHogwarts Legacyの第2弾などで将来的な成長の機会が見込まれまる
- 最悪の場合、パラマウントとの取引が成立しなかった場合、実際に会社分割を実行するには何ヶ月、あるいはどれくらいの時間がかかるか(注:買収発表前の2025年6月にWBDは分社化計画を発表していた)
- 取引は必ず成立すると確信している
- 私たちはPSKYと取締役会に最高の会社を提供できるよう、会社の価値向上に努めてきた
- 会社は非常に高い業績を上げており、取引が成立し、我々がPSKYに提示した計画よりもさらに優れた業績を上げると確信している
- NBA放映権の喪失により30%近く減少したリニア広告を踏まえて広告市場の現状について
- リニア放送の広告に関しては、確かにNBAに関連する要因が最大の変動要素となっている
- これは広告収入にとってはマイナス要因である一方、利益面では第1四半期と同様、あるいはそれ以上にプラスに寄与した(放映権料との関連)
- 一般エンターテインメント分野は好調に推移しており、ニュースやスポーツ分野では大幅な伸びを見せている。年初の時点と比較しても、同様の水準を維持しており、この点において傾向に変化はない
- 一方、海外市場の状況はやや異なり、第2四半期は第1四半期を下回る結果となった。地政学的に困難な状況にあることを踏まえれば当然のことと言えるが、あらゆる市場において、消費者の慎重な姿勢や消費の弱まりといった兆候が見られる
- 市場ごとに傾向は多少異なるが、全体として第2四半期は第1四半期よりやや低調で、第3四半期に入ってからの7月、8月の状況もまちまちで、一部の市場では改善が見られるものの、他の市場では引き続き第2四半期と同様の傾向が続いている
- 年内の今後の見通しについては不透明な部分が多く、今後の推移を見守る必要がある
- スタジオ部門のEBITDAを長期的に30億ドルの水準に戻す具体的な方法について
市場予想との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2026年第1四半期の総売上高(Total Revenues)は87億1700万ドル、市場予想の92億9000万ドルを下回っている
- 2026年第1四半期のシリーズA希薄化後一株あたり利益(Diluted EPS)は0.06ドル、市場予想は0.13ドルの損失
となっている。
まとめ
上記の様な決算発表を受けてワーナーブラザース・ディスカバリーの株価は

前日比1.66%の上昇。同日の米国市場が

米イランの交渉進展見極めもあってか不安定な動きでいずれも小幅ながらマイナスに沈んだことを考えると、ワーナーブラザース株の上昇はやや意外。
売上は市場予想を下回ったもののEPSが市場予想を上回ったことやストリーミング部門が堅調であること、決算前に英国の合併承認が得られたことも影響したかもしれない。
決算後数日を含めた年初来のワーナーブラザース株の推移を市場(S&P 500)と比べると

前回決算以降から今回決算前までの動きは冒頭に挙げた通り。そして迎えた今回決算では上昇し、決算後も買収交渉中にもかかわらず何故か上昇傾向が続いている。
決算後の買収に関する主な動きとしては以下の様なものがあった。
- 2026年8月11日に米Puckがパラマウント・スカイダンスのDavid Ellison最高経営責任者(CEO)が社内会議で以下の発言をしたとの報道
- 同州からの移転を望んでいるわけではないとしながらも、パラマウントが本拠を置くカリフォルニアから歓迎されているとは感じていない
- Rob Bontaカリフォルニア司法長官が和解交渉に応じなければ、本社を皮切りに州外への移転を進め、最終的にはスタジオ関連の雇用も移す考えを示す
- 上記報道を受けてのRob Bontaカリフォルニア司法長官のSNSへのコメント
- 違法な取引を成立させるために州を脅迫しようとする試みだ
- パラマウントは裁判で負け続け、完全に方向性を見失っている
- 7月の訴訟前夜、最初の試みはうまくいかなかったし、今回もうまくいかないだろう
- 2026年8月12日にパラマウントのMakan Delrahim最高法務責任者(CLO)が講演で以下の発言
- (パラマウント社がカリフォルニア州から撤退する可能性について)ある時点で株主に対する義務、つまり受託者責任が生じ、そうした要素を考慮することになる
- 私が知事ならハリウッドを州から失いたくない。パラマウントのような大手企業を他州に奪われたくない
- 2026年8月17日にパラマウント・スカイダンスがワーナーブラザースの買収に異議を唱えている12州及び全米脚本家組合に保証金18億8000万ドルの供託を命じるよう、裁判所に要請
- 買収完了の遅延に伴う費用を賄うため、とのこと
- 2026年8月18日にシネマ・ユナイテッド(映画館経営者を代表する業界団体)がカリフォルニア州司法長官およびパラマウントに対し、合併を阻止しようとする訴訟の和解について協議するよう要請
- 当初から、われわれは映画興行業界を保護する措置には前向きな姿勢を示してきた。これは、将来の世代にわたって業界が繁栄し続けることを確保するための、そのプロセスにおける次のステップである
- これ(合併の阻止)は雇用の喪失につながり、賃金の引き下げを招き、消費者が映画館に行ったりケーブルテレビを視聴したりする際の料金高騰を招くことになる
今後のワーナーブラザース株だが、決算以降は上昇傾向が続いているとはいえ、買収に関連する訴訟次第という状況に変わりはないだろう。買収成立が近付けば買収価格の@31ドルに近くなるだろうし、買収が不成立となれば急落の可能性が大きいだろう。いずれにせよ訴訟を巡っては様々な動きが発生しているので、それらの動きとワーナーブラザースの株価には引き続き注意しておきたい。