はじめに
昨日2024年2月12日(月)の米国市場は
各市場でまちまちながらもほぼ横ばいだった中、シティを除く大手米銀株は
ここ最近先月発表されたニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の第4四半期決算が銀行業界の健全性に対する懸念を呼び起こしていたのだが、その懸念が和らいだためか軒並み上昇。
しかしシティグループ(C)は
前日比やや下落と市場と同程度。日中の動きを見てみると、一時は1%を超える下落幅であった。
他の米銀大手が上昇している中シティが下落していた理由が気になったので調べてみると、掲題の報道があったことが原因らしい。以下、その内容について確認しておく。
2024年2月12日のロイター報道
以下はロイターの報道より引用・抜粋。
- 関係筋によると、昨年末米連邦準備制度理事会(FRB)はシティに対し、デリバティブ取引における取引相手のデフォルトリスクをどのように測定するかを今後数ヶ月以内に対処するよう指示する3通の通知を送った
- FRBがシティに送付したこの3つの通知は「要注意事項の即時喚起(MRIA:Matters Requiring Immediate Attention)」と呼ばれるもので、通常、欠陥に関するものであり、銀行は随時多数の未処理のMRIAを抱えている可能性があるが、それらは機密扱いであり公の場に現れることはほとんどない
- 関係筋によると指示内容は以下
- 1件の期限は半年:データに関連して銀行が修正する必要がある十数の問題が列挙
- 2件の期限は1年間:データが利用できない場合にシティが取引相手の信用リスクを計算する際の方法及びガバナンスの欠陥、特に銀行のさまざまな法人における責任の所在が明確でないこと
- またこの3件とは別に、ロイターが入手した電子メールによるとシティの内部監査部門は、規制当局が以前に提起した問題(2020年10月の業務改善命令)に対処するために少なくとも1件でさらなる作業が必要
- 電子メールによると、内部監査部門は2023年12月に銀行全体のリスク管理を改善するために行われた作業の一部が不十分であることを発見
- 取締役会と上級管理職が全社のリスクに関する包括的な報告書を確実に受け取るための手順を整備するという要件を満たしていなかった
- 匿名の関係者よると、銀行規制当局である通貨監督庁(OCC)も2023年9月と10月にデータの完全性に関してシティが進捗を遂げたかどうかを評価するための検査を実施したが不合格となり、追加作業を余儀なくされたとのこと
- 監督官庁の通知や同意命令を巡る個別の作業の問題はこれまで報告されていおらず、ロイターはこれらの問題がシティの規制問題解決に向けた取り組み全体に影響を与えているかどうかを判断できなかった
- 匿名のシティ関係筋によると、規制上の通知と検査は銀行監督の標準的な慣行である
- シティのロイター取材への声明
- 「規制当局の期待に応えることが最優先事項であり、当行の簡素化と近代化は着実に進んでいる」
- 「この規模の複数年にわたる取り組みと同様、進歩は直線的ではなく、その過程で重要な学びがあり、規制報告、インフラストラクチャ、データ強化の分野など、私たちの取り組みに取り入れている」
- FRBとOCCはコメントせず
まとめ
ロイターの報道では
「監督官庁の通知や同意命令を巡る個別の作業の問題はこれまで報告されていおらず、ロイターはこれらの問題がシティの規制問題解決に向けた取り組み全体に影響を与えているかどうかを判断できなかった」
「匿名のシティ関係筋によると、規制上の通知と検査は銀行監督の標準的な慣行である」
としているものの大手米銀の中でシティだけが下落したことを考えると、やはりシティのデータ、ガバナンス、リスク管理に関する問題は不安材料ではある。実際今回の通知も2020年10月の改善命令に関連したものであり、他行にはないデータ、ガバナンス、リスク管理に関する問題が長期間存在し、それに対処するコストも余計にかかっている事実は再認識しておく必要があるだろう。
ここ最近はデータ、ガバナンス、リスク管理への対処が決算発表で重きを置かれることが無かったので、解決への道筋が順調に進んでいるという漠然とした印象があったのだが、残念ながらこの懸念が解消されるまでの道のりはまだまだ遠そうだ。アナリストがこの件をどう判断するかにしばらくは注意しておきたい。