はじめに
日本時間の11月23日(火)深夜に先週金曜日に報道されていた掲題の石油備蓄放出要請が合意された旨が発表された。
自分はその際に
「COVID-19の再拡大が更に続いてしまった上で実際に石油備蓄放出となれば更に原油先物価格の下落、そしてエクソン株の下落となる可能性が高い。」
と書いており、原油先物、エクソン・モービル(XOM)株が下落するのだろうなあ、と思って寝たのだが実際には原油先物が
と石油備蓄放出の報道があってから上昇。そしてエクソン株が
といずれも上昇する結果となった。
自戒する意味でもなぜ自分の想定とは逆に石油備蓄放出決定を受けて原油先物価格が上昇したのかについて整理しておくことにする。
石油備蓄放出合意について
以下は合意された石油備蓄放出についてのまとめ。
- 備蓄放出は米国、日本、中国、インド、韓国、英国との協調で実施される
- 米国は5000万バレルの石油備蓄を放出
- 3200万バレルは戦略石油備蓄(SPR:Strategic Petroleum Reserve)から将来SPRに戻すことを前提に今後数ヶ月間かけて放出
- 1800万バレルは既に議会で承認された売却分
- 早ければ12月半ばから下旬に放出を開始
- 日本は一部報道では500万バレル以下。詳細は日本の報道に詳しいので省略
- 中国は放出規模を公表していないが、報道では700万から1500万バレルの範囲と想定
- インドは500万バレル
- 韓国は規模や時期など詳細についてパートナー国と協議して決めるとしたが、350万バレル程度になる可能性を示唆
- 英国はそれらより少なくなる見込みとの報道
石油備蓄放出合意にもかかわらず原油先物価格が上昇した原因
以下は各種報道からのまとめ。
- 全体での放出規模5000万バレルが予想を下回ったため
- 事前の予想では調査会社のライスタッド・エナジーが各国の合計備蓄放出量は7000万バレル強になる見通しとしていた
- また石油会社BPは今月世界全体の1日当たりの石油需要は1億バレルを超えるとの見方を示しており、それが正しいとすると備蓄放出量は1日分にも満たない
- 米国放出される石油の大部分が購入する精製業者にSPRへの将来の返還を義務付けているため、結局は原油価格の抑制に寄与しない可能性
- OPECプラスが現在の生産引き上げを中止して備蓄放出の効果を打ち消すなどの対抗手段に出る可能性
- OPECプラスの日量生産力は約700万バレルとされているので、もしOPECプラスが対抗手段を取れば、それ程の時間がかからず今回の備蓄放出量による供給分を打ち消すことが可能
まとめ
石油備蓄放出の合意とそれを受けての原油先物価格上昇についてまとめてみた。実際にまとめてみると、なるほどと思わせることばかりで昨日の様な結果となったのも納得できる。とはいえ過去1ヶ月のニューヨーク原油先物価格を見てみると、全体的には下落傾向が続いている。
OPECプラスが供給拡大に消極的な理由の一つとして挙げているCOVID-19再拡大による石油需要の減少の懸念が確かに影響しているのだろう。
OPECプラスは現行の協調減産縮小ペースを変更することに消極的(それもあって今回石油備蓄放出合意に至った)であるので、次回12月2日に予定されているOPECプラス会合でOPECプラスがどう動くのか。12月にOPECプラスが更なる供給拡大に動くとは個人的には考えにくいのだが、COVID-19の状況も考えると原油先物価格がどうなるのかは判然としない。しばらく原油先物価格については不安定な状況が続きそうだ。