はじめに
2020年2月27日の米国市場は6日連続下落し、ダウ工業平均は1日としては最大の下げ幅といった報道がなされているが、この市場全体の動きに関しては少し前に書いた通りで基本的には待ち。
こういった状況の中、市場関連のニュースに埋没して自分が所有している個別銘柄に関連する情報を見逃さないように気を付けているのだが、そんな中で自分は所有していないが掲題のビヨンド・ミートが四半期決算を発表しており、植物由来の代替肉という点で自分が所有しているケロッグ(K)株と関連する部分があるかもしれないので、整理しておくことにする。
2019年ビヨンド・ミート第4四半期決算内容
以下はロイターの記事より引用・抜粋。自分の所有株であれば、企業サイトの決算内容を確認するのだが、所有株ではないのでそこまでする必要はないだろう。
- 純売上高は前年同期の3150万ドルから9850万ドルに増加し、アナリスト予想(約8000万ドル)を上回った
- 2020年の売上高は前年比64~71%増の4億9000万~5億1000万ドルを見込んでいる
- 1株当たり損益は0.01ドルの赤字。リフィニティブのアナリスト予想は同0.01ドルの黒字だった
- セス・ゴールドマン会長が退任すると発表した
発表は米国市場閉場後に行われたのだが、
と時間外取引で10%超の下落。時間外取引の上下は必ずしも当てにならない部分はあるのだが、それにしても大幅なマイナス。下落の理由は色々あるのだろうが、1株当たり利益/損益がマイナスだったことが嫌気されたのだろうか。
ケロッグの代替肉に関して
以前にまとめたことの繰り返しもあるが、ケロッグには自社ブランドの一つとして植物由来の人工肉を製造する「モーニングスター・ファームズ」がある。Euromonitorによると、2019年の米国小売販売における肉代替企業は、ケロッグの「モーニングスター・ファームズ」、コナグラ・ブランズの「ガーデイン」、「ビヨンド・ミート」の順になるらしい。
ただケロッグのモーニングスター・ファームズはあくまで全体の中の一部分。決算資料中では、ケロッグにおけるモーニングスター・ファームズの売上や利益が開示されておらず、2019年7月のバロンズの記事では年間3~4.5億ドルの売上と仮定しているが、その数値が正しいとするとケロッグ全体から見れば約3.3%に過ぎない(2018年の総売上から)。先日の四半期決算の中でも、以下のスライドの様にあくまで北米のFrozen Foodの一つとしての位置づけである。
一方で、2020年2月10日に行われたCOGNYでのケロッグのプレゼンテーションでは、多少詳しくモーニングスターに関して説明されてもいた。以下COGNYでのケロッグの発表を簡単にまとめておく。
ケロッグのCOGNYでの発表内容とモーニングスター・ファームズ関連情報
以下はケロッグの企業サイト掲載の資料、Webcastを元にしたもの。
- 前四半期に発表された2020年通期の見通しは変化なし
- 発表全体は以下のスライドにある「Balanced」Growthをどう達成していくか、という戦略の説明を、個別の主力ブランド/製品ごとに説明
- プリングルズなどと並んでモーニングスター・ファームズについても言及しており後述する「The Incogmeato Burger」にも触れていた
- モーニングスター・ファームズに関する財務的な言及はなし
個人的にはやや分かりにくい資料・説明だったが、これは自分の英語能力のせいもあるだろう。
「The Incogmeato Burger」の発売
COGNYでも触れていたが2020年2月18日にモーニングスター・ファームズが「The Incogmeato Burger」発売することが発表された(2019年秋口に2020年に販売という情報はあった)。以下はケロッグの企業サイトより引用・抜粋。
- Ahead of grilling season, Incogmeato™ is debuting its new, ready-to-cook plant-based Burger Patties, Original Bratwurst and Italian Sausage with complete protein.
グリルシーズンに先立ち、Incogmeato™は、調理済み植物ベースの新しいバーガーパティ、オリジナルブラートヴルスト、完全なタンパク質を使用したイタリアンソーセージをデビューさせます - The Burger Patties, Original Bratwurst and Italian Sausage are made with non-GMO soy and have 100% plant-based protein
バーガーパティ、オリジナルブラートヴルスト、イタリアンソーセージは、非GMO大豆で作られており、植物性タンパク質100%です - Starting this March, people can find Incogmeato™ Burger Patties in the fresh meat case at retailers including select Kroger, Meijer, Albertsons, Safeway, Stater Bros., and Weis, Price Chopper and coming soon to foodservice nationwide.
今年3月から、Incogmeato™バーガーパティは、厳選されたKroger、Meijer、Albertsons、Safeway、Stater Bros.、Weis、Price Chopperなどの小売店で販売を開始し、近日全国のフードサービスに登場します(ブラートヴルストとイタリアンソーセージは6月から)
この中で個人的に重要だと思うのは、販売チャネルとしてアメリカではそれなりの知名度、店舗数があるところで売り出されることになっている点。
先に述べた通り、モーニングスター・ファームズの代替肉分野での規模はビヨンド・ミートを上回り北米で1位なのだが、その認知度やメディアでの扱われ方はそれほど高くない。例えばビヨンド・ミートは、
- マクドナルドが、ビヨンド・ミートの植物由来の人工肉を使ったバーガーをカナダの一部の店舗で試験を昨年9月より行っている
- スターバックスが2月26日、カナダでビヨンド・ミートのソーセージを使った朝食サンドイッチメニューを導入すると発表
といった具合に大手企業との提携、そして株式公開時の大幅上昇(初値は46ドルで新規株式公開(IPO)価格の25ドルを大幅に上回った)などにより知名度が高い。
必ずしも代替肉として知名度がビヨンド・ミートに比べて高くないモーニングスター・ファームズが、前述のCOGNY資料でも「Investment: Increase in Brand Building (投資:ブランド構築増大)」とある方針を受けて、今後どこまで知名度を高め、市場に浸透できるか注目しておきたい。
まとめ
ビヨンド・ミートの決算を契機としてケロッグの代替肉動向を中心に整理してみた。
ケロッグ全体に対する財務的な影響は依然と変わらず具体的には不明ではあるが、決算資料、COGNY資料、そしてビヨンド・ミートの決算で売上高が前年同期比約3倍になっていることからも、肉代替製品の市場は拡大していることは見て取れる。またバークレイズは、今後10年で市場規模が世界全体で1400億ドルに達すると予測もしている。
そういった点では、ケロッグがモーニングスター・ファームズの代替肉製品の新製品を売り出すのは理にかなっていると思う。願わくばこれがケロッグの業績に貢献してくれれば良いのだが。
最後になるが、ケロッグは2月21日に定期的な配当を発表しており、1株当たり四半期配当は@0.57で前回と変わらず(通常の増配のタイミングではない)。取り合えず減配でなくて安心した。