はじめに
昨日2020年10月12日の米国市場閉場後にウォルト・ディズニー(DIS)が、掲題の通りエンターテインメント事業の再編を発表した。
以下にその内容と経緯そして今後のディズニー株をどうするかについて整理しておく。
ウォルト・ディズニーの2020年10月12日発表内容
以下はウォルト・ディズニーの企業ページより引用・抜粋。
- The Walt Disney Company Announces Strategic Reorganization of Its Media and Entertainment Businesses New Structure Designed to Further Accelerate the Company’s Direct-to-Consumer Strategy, in light of the Rapid Success of Disney+
ウォルト・ディズニーはDisney+の急速な成功を考慮して、同社のDTC戦略をさらに加速するよう設計されたメディアおよびエンターテインメント事業の戦略的再編成を発表しました - Company’s Creative Engines Will Focus on Producing Content for DTC as well as Legacy Platforms, while Newly Centralized Distribution Group Will Oversee Commercialization and Distribution of All Content Globally
会社のクリエイティブエンジンは、DTC(Direct-to-Consumer)およびレガシープラットフォーム向けのコンテンツの作成に重点を置き、新たに一元化された配信グループは、すべてのコンテンツの商品化と配信をグローバルに監督します - The new Media and Entertainment Distribution group will be responsible for all monetization of content—both distribution and ad sales—and will oversee operations of the Company’s streaming services. It will also have sole P&L accountability for Disney’s media and entertainment businesses.
新しいメディアおよびエンターテインメント配信グループは、配信と広告販売の両方のコンテンツのすべての収益化を担当し、会社のストリーミングサービスの運用を監督します。また、ディズニーのメディアおよびエンターテインメント事業に対する唯一の損益計算書の説明責任も負います。 - The creation of content will be managed in three distinct groups—Studios, General Entertainment, and Sports
コンテンツの作成は、スタジオ、一般エンターテインメント、スポーツの3つの異なるグループで管理されます
簡単にまとめると
- クリエイティブエンジンはスタジオ、ゼネラル・エンターテインメント、スポーツの3つに分かれ、動画配信および伝統的なプラットフォーム向けのコンテンツ制作を担う
- The new Media and Entertainment Distribution groupは消費者への提供方法を決める
となり、コンテンツ制作と配給を分離し消費者のニーズに素早く対応できるようになる、ということだろう。
2020年10月12日ディズニーの発表の前段
この発表の前段として2020年10月7日にDaniel Loeb氏(いわゆるアクティビスト/物言う株主)のディズニーへの書簡が報道されている。以下はその内容の抜粋。
- “We believe the company should permanently suspend its $3 billion annual dividend, redirect capital entirely into content production and acquisition for Disney’s (direct-to-consumer) business, centered around Disney+,”
「同社は年間30億ドルの配当を恒久的に停止し、Disney+を中心としたDisneyの(DTC)ビジネスのコンテンツ制作と買収に資本を完全に振り向けるべきだと我々は考えています」 - “By reallocating a dividend of a few dollars per share, Disney could more than double its Disney+ original content budget,”
「1株あたり数ドルの配当を再配分することで、ディズニーはDisney+の元のコンテンツ予算を2倍以上にすることができるだろう」
今回のディズニーの発表では配当については触れられていないが、Daniel Loeb氏が要求していたDTCビジネスへの戦略的集中という意味では連動しているのだろう。ちなみにディズニーの発表後Loeb氏は再編を歓迎する声明を発表している。
ちなみにDaniel Loeb氏が率いるヘッジファンドのThird Pointは、2020年6月末の開示資料でウォルト・ディズニー株を550万株保有している(2020年5月15日に145万株購入という報道あり)。
2020年10月12日ディズニーの発表後の最高経営責任者Bob Chapek氏のインタビュー
ディズニーの発表後に最高経営責任者(CEO)Bob Chapek氏がCNBCのインタビューに応えている。以下はその引用・抜粋。
- “We are tilting the scale pretty dramatically [toward streaming],”
我々は(ストリーミングに向けて)かなり劇的に重点を置いています - the company is looking at all investments, including dividends, as it seeks to increase its spend on new content.
同社は新しいコンテンツへの支出を増やすことを目指しており、配当を含むすべての投資を検討しています - the board of directors will have the final say on Disney’s dividend payouts
取締役会がディズニーの配当支払いについて最終決定権を持っています
配当についての明言は避けておりどちらにも取れる。また同じインタビューの中で再編に伴う人員削減についても触れているが、9月のテーマパーク部門の28000人削減程にはならないだろうとしていた。
まとめ
ディズニーの発表は米国市場閉場後の事なので株価への影響は分からないのだが、時間外取引では上昇している模様(あくまで時間外なので実際にどうなるかは不明)。
個人的には株価よりも5月に停止された配当がどうなるかの方が気になるのだが、上記の様な流れからすると下半期(ディズニーは半期配当)の配当再開は難しそうだ。もしかするとしばらく無配が続くのかもしれない。
完全リタイアを決めた今となっては配当が期待できない銘柄を保持していくのはどうなのだろう。現在の自分が保有しているディズニー株は、
と18,000ドル程度で約7000ドルの含み益。長期的なキャピタルゲイン(売却益)狙いでは必ずしも悪くはないと思うのだが、これを売却して配当率の高い銘柄に変更するというのも一案として考えるべきなのだろうか。今年は破産法が適用されたJCペニー(JCP)の売却損があるので、もしかするとディズニー株を売却しても損益通算で税金上有利になるはずなので、完全リタイアして配当重視という観点ではディズニー株を売るなら今年が良いタイミングなのかもしれない。
今すぐと言う訳ではないが、本当に損益通算が有効に機能するかも含めて真剣に考えてみることにしよう。