2021年に回避された米債務上限問題の懸念再び(2023/1)

はじめに

2023年1月20日(金)の米国市場は

ハイテク銘柄が大きく上昇し、主要3市場揃って前日比上昇で終えていた。

ネットフリックス(NFLX)の2022年第4四半期決算で新規契約者数が市場予想を上回ったことや、リード・ヘイスティングス共同創業者が最高経営責任者(CEO)を退くという発表が材料視され前日比8.46%高、グーグルの親会社アルファベット(GOOGL)も全従業員の6%に当たる約1万2000人を削減すると明らかにしたためか前日比5.34%高となりハイテク全体の上昇をけん引した模様。

また米連邦準備理事会(FRB)のWaller理事がニューヨークでの外交問題評議会(CFR)における講演で、金利がインフレを抑制するために「十分に制約的な水準にかなり近づいている」可能性があるという認識を示し、次回FOMCでの25bpポイントの利上げに支持を表明したことも市場全体の上昇に拍車をかけた様子。

自分のドルベース資産もハイテク銘柄が少ない割には

S&P 500と同程度の前日比上昇となり、円ベースでも日銀の黒田総裁が世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のパネル討論で、2%の物価目標を安定的、持続的に達成するため現在の極めて緩和的な金融政策を継続すると発言したためドルが買われる流れがあって大きく上昇

と自分の資産にとってもいい事が多かった。

そんな昨日の状況を振り返っている際に掲題の気になるトピックを見かけてしまった(実際には前日19日の米国市場閉場後)ので、以下情報を整理しておくことにする。


今回の米債務上限問題について

この問題については2021年の12月に

米債務上限問題が2023年初めまでは回避(2021/12/18)

でまとめた通り連邦政府の債務上限を引き上げる法案が通過して2023年までは需要に耐えられる見通しだったが、この1月にその上限に想定通り到達した。以下、直近の状況をまとめてみる。

【1月13日】

  • イエレン財務長官が超党派の議会首脳部に宛てた書簡で、債務不履行という事態を避けるべく上限を引き上げるよう求める
  • 書簡では6月上旬より早い時点に資金と特別措置を使い切ることになるとは考えにくいとしている
  • また米財務省は債務残高の上限到達を回避するため1月19日から会計上の特別措置を講じる

【1月17日】

  • マッカーシー米下院議長(共和党)が連邦債務上限引き上げを含む財政計画について、共和党との協議に応じるよう民主党に要求
  • 下院共和党は3月末までに債務に優先順位を付ける法案を提出する計画。この案では債務上限に達した場合、財務省に一部債務の返済のみを続けるよう求める
  • 対してバイデン大統領と議会民主党は無条件の引き上げを要求
  • ジャン=ピエール大統領報道官は17日の記者会見で、大統領が共和党との交渉に応じるかとの質問に対し「これまで非常に明確にしてきた通り、債務上限に関して交渉する方針はない」と返答

【1月19日】

  • 連邦債務が21兆4000億ドルの上限に到達し、財務省はデフォルト(債務不履行)を回避するための特別な措置の活用を始めた
  • 具体的には公務員退職・障害基金(CSRDF)と郵便職員退職者医療給付基金(PSRHBF)への一部拠出を停止する
  • イエレン長官は再び超党派の議会首脳部に宛てた書簡で、特別措置の活用によって政府が資金枯渇に陥るのを回避することができる期間にはかなりの不確実性があると改めて指摘し、債務上限引き上げのための早急な行動を議会に呼び掛けている
  • イエレン長官は特別措置を通じてどの程度の資金的余地が生じるかは提示していない

【1月20日】

  • バイデン大統領は、米国債のデフォルト(債務不履行)はかつてない財政的な大惨事を招くおそれがあるという見方を示し、米国の債務上限引き上げについてマッカーシー下院議長と話し合う計画と明らかにした
  • ただし、日程などの詳細には踏み込まず
  • マッカーシー下院議長はツイッターへの投稿で、バイデン大統領からの招待に応じ、無責任な政府の支出に対応するため責任ある米債務上限引き上げを巡り議論すると明らかにした

まとめ

最近の米債務上限問題の状況について整理してみたが、最近の市場を振り返ると今のところ米国市場への直接的な影響は無い様子。

しかし前回2021年12月は米議会が上院、下院共に民主党が多数派だったのだが、今回は昨年2022年11月の米中間選挙で下院は共和党が多数派、上院は民主党が多数派となるいわゆるねじれ議会となっている点が今後この問題にどのような影響を及ぼすのかは不透明。

前回2021年も米債務上限問題は懸念されていたが、その動向で直接市場が大きく下落することは無かった気がするので心配し過ぎる必要は無いのかもしれない。ただ債務上限問題が長期化した2011年にはS&Pが米国債を初めて格下げして市場が混乱した実例もあるので、その可能性は頭に留めておくことにしよう。

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