はじめに
米現地時間2025年3月14日、掲題の通りアメリカ2025年会計年度(2024年10月から2025年9月末)の2回目のつなぎ予算案が可決された。1回目のつなぎ予算は2024年12月20日までのものが2024年9月、2回目のつなぎ予算は2025年3月14日までのものが2024年12月に可決されており、今回も一部政府機関の閉鎖はギリギリで回避されることになった。
以下、今回のつなぎ予算案の概要と可決までの経緯について簡単に整理しておくことにする。
今回可決された米2025年度3回目のつなぎ予算案概要と経緯
- 2025会計年度の歳出法案成立までの間に政府閉鎖を回避するためのつなぎ予算法案は、9月、12月にそれぞれ可決されており、12月に可決されたつなぎ予算は2025年3月14日までのもの
- 2025年会計年度の歳出法案の現状は以下の通り
- 米上院が2025年2月21日に予算案を賛成52、反対48で可決
- 米下院が2025年2月25日に予算案を賛成217、反対215で可決
- ただし上院、下院で可決された予算案は内容が異なっている
- 今後は上下院で予算決議案の一本化に向けての調整(上下院で同一の法案を審議する必要がある)、歳出法案の策定をしていくことになる
- 上述の様な状況から、2025会計年度の歳出法案は最新のつなぎ予算が切れる2025年3月14日には成立が間に合わないため、新たなつなぎ予算が必要となっていた
- 2025年3月11日、米下院が新たなつなぎ予算法案を、賛成217、反対213で可決
- 従来と同様に基本的には2024会計年度の歳出水準を維持するもの
- ただ非国防予算を約130億ドル削減する一方で、国防予算は約60億ドルの増額
- 期間は2025年9月30日まで
- また報道によると、通常の歳出法案とは異なり個別プロジェクトと予算とのひもづけがないことも特徴で、このため予算の具体的な配分については行政府の裁量が大きくなる可能性がある
- 下院で可決されたつなぎ予算法案は上院で採決されることになるが、議事妨害があった場合には可決するためには50票ではなく60票が必要。そして上院における共和党の議席数は53議席で、共和党議員全員が賛成に回った場合でも、民主党の賛成を少なくとも7票得なければ可決することができない
- 2025年3月12日、民主党上院トップのシューマー院内総務は上院本会議場で「共和党には票が足りない」と発言し、下院のつなぎ予算案を阻止する意向を示す
- シューマー院内総務は、より包括的な予算を策定するための時間を確保するとして1ヶ月のつなぎ予算延長を提唱
- 2025年3月13日、民主党上院トップのシューマー院内総務が上院本会議場で以下の発言
- 政府機関の閉鎖は共和党のつなぎ予算案を受け入れるよりも米国にとってはるかに悪い
- 政府が機能を続けて、それを閉鎖させぬよう、票を投じる
- つなぎ予算案は好ましくないが、政府機関の閉鎖は必要不可欠な政府サービスを破壊する白紙委任状を(イーロン・マスク氏に)与えることになる
- 2025年3月14日、上院はつなぎ予算案を賛成54、反対46で可決
- 議事妨害はなく過半数の50票越えで可決
まとめ
米の関税政策で市場が大きく下落している中で、米国のつなぎ予算が成立するかどうかは大きな懸念材料であり、12日には民主党のトップが反対の意向を示したことから一部政府機関の閉鎖も視野に入ってきたのだが、翌13日には賛成の意向を示し、14日には議事妨害もなく米2025年度予算の3回目となるつなぎ予算案が可決されたのは一安心。
3月14日のS&P 500の推移を見てみると
つなぎ予算成立が見込まれ市場に安堵感が広まったこともあってか前日比1%を超える上昇で取引を開始したが、現地時間10:00に発表された3月のミシガン大消費者信頼感指数(速報値)が57.9(前月は64.7、市場予想は63.1)と、約2年半ぶりの低水準を付けて上昇幅を縮小。しかし時間経過と共に再び上昇幅を拡大して取引を終えている。
ミシガン大消費者信頼感指数という悪材料をつなぎ予算成立という好材料が上回り、そして同週(3月10日~)の市場下落
による値頃感から買い戻しが進んだことが15日の市場上昇の要因なのだろう。
最終的に2025会計年度の歳出法案がどういう形で落ち着くかは未だ不透明だが、2025年9月30日までは政府機関閉鎖という事態は避けられそう。これで米国市場の悪材料は一つ和らいだことになる(実際の法案の内容次第では悪材料となる可能性はあるのだが)。
最後に、同日発表の3月のミシガン大消費者信頼感指数(速報値)の急低下が気にかかる。市場の反応は14日は一時的なものにとどまったが、本当に1日で市場に吸収されたかは疑問が残るところ。今後の経済指標がどういった傾向を示し、それに応じてどう市場が反応するのかには引き続き注目していきたい。