はじめに
2021年6月第3週は米連邦公開市場委員会(FOMC)の定例会合で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0~0.25%で据え置くことを決定した一方で、2023年末までに2回の利上げを見込んでいることが示唆されて、経済が回復する中で利上げ開始時期が前倒しされる可能性が示されたことで手持ちの銀行株が大幅に下落した、と思っていた。
ただ6月を振り返ってみると実はFOMCの会合前からもじりじりと銀行株は下がっており、よく調べてみた所、掲題の米国債の金利差(10年債、2年債)が影響していた様に思われる。
以下、自分の所有米銀行株であるシティグループ(C)とJPモルガン・チェース(JPM)の株価、及び米10年債、2年債の2021年6月における変化をまとめておきたい。
2021年6月の米国債金利差と自分の所有銀行株
そもそも米国債の金利差がなぜ米銀行株に影響を与えるかというと、
FRBがパンデミック対処の大手銀優遇措置終了発表(2021/3)
でも触れたように、基本的には
- 銀行は短期金利で借り、長期金利で貸し付けるため、短期債と長期債の利回り格差が広がると、金利差による利益(純金利マージン)が上昇する
- 利益増加が見込まれるので米銀行株価が上昇する
というロジックで純金利マージンの変動が影響してくる。
シティグループ(C)株の推移
2021年6月1日~18日のシティグループの株価推移は以下の通り。
シティグループ(C) | 前日比 | |
2021/6/1 | 79.76ドル | |
2021/6/2 | 79.86ドル | 0.13% |
2021/6/3 | 79.63ドル | -0.29% |
2021/6/4 | 79.49ドル | -0.18% |
2021/6/7 | 79.31ドル | -0.23% |
2021/6/8 | 79.08ドル | -0.29% |
2021/6/9 | 78.14ドル | -1.19% |
2021/6/10 | 76.89ドル | -1.60% |
2021/6/11 | 76.48ドル | -0.53% |
2021/6/14 | 75.16ドル | -1.73% |
2021/6/15 | 73.82ドル | -1.78% |
2021/6/16 | 71.46ドル | -3.20% |
2021/6/17 | 68.66ドル | -3.92% |
2021/6/18 | 67.61ドル | -1.53% |
前半は1%未満の減少だったので気が付かなかったが、今回こうして確認してみると6月3日から12日連続下落と恐ろしい事になっていた。
JPモルガン・チェース(JPM)株の推移
2021年6月1日~18日のJPモルガン・チェースの株価推移は以下の通り。
JPモルガン(JPM) | 前日比 | |
2021/6/1 | 166.05ドル | |
2021/6/2 | 166.06ドル | 0.01% |
2021/6/3 | 166.17ドル | 0.07% |
2021/6/4 | 166.04ドル | -0.08% |
2021/6/7 | 165.66ドル | -0.23% |
2021/6/8 | 165.00ドル | -0.40% |
2021/6/9 | 162.94ドル | -1.25% |
2021/6/10 | 160.40ドル | -1.56% |
2021/6/11 | 160.29ドル | -0.07% |
2021/6/14 | 157.57ドル | -1.70% |
2021/6/15 | 155.18ドル | -1.52% |
2021/6/16 | 156.27ドル | 0.70% |
2021/6/17 | 151.76ドル | -2.89% |
2021/6/18 | 147.92ドル | -2.53% |
シティに比べるとマシではあるが、それでもほぼマイナスの日が続いていることが判る。
米10年債と2年債の利回り及び金利差の推移
厳密には2年債は短期債では無く中期債と思われるが、1年債未満は利回りの変動が顕著ではないので、10年債より短期という意味で2年債を比較対象にしている。
10年債 | 前日比 | 2年債 | 前日比 | 金利差 | 前日比 | |
2021/6/1 | 1.62% | 0.16% | 1.46% | |||
2021/6/2 | 1.59% | -1.85% | 0.13% | -18.75% | 1.46% | 0.00% |
2021/6/3 | 1.63% | 2.52% | 0.16% | 23.08% | 1.47% | 0.68% |
2021/6/4 | 1.56% | -4.29% | 0.14% | -12.50% | 1.42% | -3.40% |
2021/6/7 | 1.57% | 0.64% | 0.16% | 14.29% | 1.41% | -0.70% |
2021/6/8 | 1.53% | -2.55% | 0.14% | -12.50% | 1.39% | -1.42% |
2021/6/9 | 1.50% | -1.96% | 0.16% | 14.29% | 1.34% | -3.60% |
2021/6/10 | 1.45% | -3.33% | 0.14% | -12.50% | 1.31% | -2.24% |
2021/6/11 | 1.47% | 1.38% | 0.16% | 14.29% | 1.31% | 0.00% |
2021/6/14 | 1.51% | 2.72% | 0.16% | 0.00% | 1.35% | 3.05% |
2021/6/15 | 1.51% | 0.00% | 0.16% | 0.00% | 1.35% | 0.00% |
2021/6/16 | 1.57% | 3.97% | 0.21% | 31.25% | 1.36% | 0.74% |
2021/6/17 | 1.52% | -3.18% | 0.23% | 9.52% | 1.29% | -5.15% |
2021/6/18 | 1.45% | -4.61% | 0.26% | 13.04% | 1.19% | -7.75% |
16日が6月のFOMC会合後となる。
手持ち米銀株と金利差の推移に関する考察
10年債、2年債の金利そのものではなく10年債と2年債の金利差に注目してみると、先の自分の所有銀行株の動きにも大体説明がつく。
グラフにしてみると以下の様になる。
6月1~11日:10年債と2年債の金利差が狭まる傾向にあり、シティ、JPM共にほぼ下落
6月14日:金利差が拡大したのに銀行株が下落しているのは、同日に講演でJPモルガンが第2四半期の見通しが前年比で悪化することを示唆したため。シティもそれにつられて安い
6月15日:この日は講演でシティが第2四半期の見通しが前年比で悪化することを示唆したので、銀行株が安い
6月16日:FOMCの会見を受けて金利差が拡大したのに伴いJPモルガンは上昇。ただシティは前日の講演が15時半と閉場間際だったので、この日もその悪材料の消化で下落(FOMC発表後は少し持ち直した)
6月17、18日:10年債と2年債の金利差がまた狭まったため、シティ、JPM共に下落
この期間では、10年債と2年債の金利差及び銀行株そのものの事情で、銀行株が下落した理由が概ね納得できることになった。
まとめ
上に書いた様に今回は概ね10年債と2年債の金利差で所有米銀株の下落に説明がついたのだが、問題はあくまで過去の振り返りの結果からであって、短期的には長短の金利差及び銀行株がどうなるかについてさっぱり予想がつかない事。
自分は長期投資/バイアンドホールドの投資スタイルであり、完全リタイアした今となっては追加投資も出来ないので、大きな出来事が無い限りはこのまま何もしないで持ち続けるしかないのだが、6月に入ってからの銀行株の下落は結構キツイ。
特にシティは5750株所有しており、5月末から6月18日まで78.71ドル-67.61ドルx5750=63,825ドルとシティ1銘柄だけで約650万円のマイナスとなっているので、この傾向が今後も続くとなるとさすがに精神的なストレスが大きくなってくる。
しばらくは金利差から銀行株は下がる可能性が高いと前もって心構えをしておくことで下落の精神的ショックを和らげ、中長期的な回復に期待することにしよう。実際には配当さえ下がらなければ完全リタイア後の配当金生活に影響はないのだから。
来週6月24日(木)の米東部時間16時半に発表される2021年の米銀ストレステストの結果が、これ以上銀行株の下げ要因にならないといいのだがなあ・・・。