FRBがパンデミック対処の大手銀優遇措置終了発表(2021/3)

はじめに

2月末から3月にかけて米長期債の変動が激しいことについては

【米長期債の金利上昇の影響大】2021年2月末米国株資産

でも触れたが3月19日(金)にはまたその金利に影響を及ぼしそうな掲題の発表がなされた。以下今後のために内容をまとめておくことにする。


2021年3月18日(現地時間)のFRBの発表

以下はFRB(米連邦準備制度理事会)のサイトより引用・抜粋。

タイトルは

  • Federal Reserve Board announces that the temporary change to its supplementary leverage ratio (SLR) for bank holding companies will expire as scheduled on March 31
    連邦準備制度理事会は、銀行持株会社の補足レバレッジ比率(SLR)の一時的な変更が3月31日に予定通り期限切れになることを発表しました

であり、以下資本規制の優遇措置を予定通り終了する説明として

  • To ease strains in the Treasury market resulting from the COVID-19 pandemic and to promote lending to households and businesses, the Board temporarily modified the SLR last year to exclude U.S. Treasury securities and central bank reserves.
    COVID-19パンデミックに起因する国債市場の緊張を緩和し、家計や企業への貸付を促進するため、連邦準備理事会は昨年一時的に米国債と中央銀行の準備金を除外するようSLRを変更しました
  • Since that time, the Treasury market has stabilized.
    それ以来債券市場は安定してきました
  • The Board will take appropriate actions to assure that any changes to the SLR do not erode the overall strength of bank capital requirements.
    連邦準備理事会はSLRの変更が銀行の資本要件の全体的な強さを損なわないことを保証するために適切な措置を講じます

としている。

補足すると米大手銀は優遇措置により、米国債と準備預金をSLRから除外することが認められたため、銀行は資本を積まずにバランスシートの拡大が可能となっていたのだが、特例措置が延長されなかったため、規制順守のために米国債の売却が必要となり長期金利が上昇する可能性もあると考えられる。


まとめ

3月18日の銀行株はこの発表を受けてか軒並み下落。

3月に入ってからの自分の所有銘柄であるシティグループ(C)とJPモルガン・チェース(JPM)の株価を見てみると

C株価前日比JPM株価前日比
2021/3/169.54150.50
2021/3/268.91-0.91150.01-0.33
2021/3/370.382.13152.911.93
2021/3/469.81-0.81150.56-1.54
2021/3/570.230.60150.910.23
2021/3/872.222.83152.911.33
2021/3/970.99-1.70151.83-0.71
2021/3/1073.753.89155.132.17
2021/3/1173.31-0.60154.32-0.52
2021/3/1275.182.55156.151.19
2021/3/1574.22-1.28155.37-0.50
2021/3/1673.33-1.20153.51-1.20
2021/3/1773.600.37155.091.03
2021/3/1873.840.33157.651.65
2021/3/1973.01-1.12155.14-1.59

両銘柄とも上昇・下落が同期している。個別銘柄の事情よりも銀行株という見方による上下動が強いのだろう。これに米10年国債の動きを加えてみると、

C株価前日比JPM株価前日比10年債金利前日比
2021/3/169.54150.501.45
2021/3/268.91-0.91150.01-0.331.42-2.07
2021/3/370.382.13152.911.931.473.52
2021/3/469.81-0.81150.56-1.541.544.76
2021/3/570.230.60150.910.231.561.30
2021/3/872.222.83152.911.331.591.92
2021/3/970.99-1.70151.83-0.711.55-2.52
2021/3/1073.753.89155.132.171.53-1.29
2021/3/1173.31-0.60154.32-0.521.540.65
2021/3/1275.182.55156.151.191.646.49
2021/3/1574.22-1.28155.37-0.501.640.00
2021/3/1673.33-1.20153.51-1.201.62-1.22
2021/3/1773.600.37155.091.031.630.62
2021/3/1873.840.33157.651.651.714.91
2021/3/1973.01-1.12155.14-1.591.741.75

となり、流石に銀行株と長期債が連動している訳ではない。金利は日中で大きく変動することもままあり、その流れ/傾向もあるためため単純に前日比では判断できない。そして勿論国債金利だけが銀行株に影響を与えているわけでも無い。為替やインフレ率も絡んでくる。

ただ基本的には銀行株は以前にも書いた通り

  • 銀行は短期金利で借り、長期金利で貸し付けるため、短期債と長期債の利回り格差が広がると、金利差による利益(純金利マージン)が上昇する
  • 利益増加が見込まれるので米銀行株価が上昇する

純金利マージン(調達金利と貸付金利の差)が収益に大きく関係してくる(自分も四半期決算で確認するようにしている)ので、銀行株にとっては好材料ではあるのだが一方で、

  • 通常、長期金利の利回りは景気がよくなれば上昇すると言われ/考えられている
  • ただ現在の状況はCOVID-19の影響から完全に脱却して好景気とは必ずしも言えない
  • 経済の実態と乖離した長期金利の上昇であった場合、銀行株下落のリスクがある

という見方もあり、長期金利が上昇し過ぎとされた場合には銀行株が下がる場合もある。

それに加えて

  • 1.5%の利回りはS&P 500の配当利回りに匹敵するとも言われている
  • 米国債の長期金利が3月に入って1.5%を超えてきている
  • S&P 500の配当利回りと同じであればこの一概に好景気とは言えない状況の中、株式から乗り換えて債権へ

という流れで銀行株に限らず株式市場全体が下がる場合もある。

ちなみに3月19日にBank of Americaは、新型コロナウイルスワクチンの展開や先に成立した追加経済対策法を根拠に、10年債利回りの年末予想水準を従来の1.75%から2.15%に引き上げている。COVID-19以前は10年債利回りが2%を超える時期が続いていたので、この見通しは理解は出来るのだが実際にはどうなるのだろうか。

上に挙げた様な米国債金利の影響もあってかシティもJPモルガンも前日比の株価上下が1%を超える日が多く銀行株にしては不安定な状況となっており、ここしばらくは落ち着かない動きが続きそうだ。

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