はじめに
昨日は2020年2月19日のアルトリア・グループ(MO)のCAGNY(Consumer Analyst Group Of New York)におけるアップデートをまとめたのだが、今日は2020年2月20日にやはりCAGNYで発表を行ったプロクター・アンド・ギャンブル(PG)のアップデートをまとめておくことにする。
繰り返しになるがCAGNYとは消費財産業向けの投資家、経営陣、メディアに対してプレゼンテーションやイベントを提供している非営利の団体のこと。
プロクター・アンド・ギャンブルのプレゼンテーション内容
以下はプロクター・アンド・ギャンブルの企業サイトより引用・抜粋。
2020年上半期の結果と通期の見通しに関して
基本的には先日の2020年第2四半期決算内容と変わらず。2020年第1四半期当初の見通し(GOING IN GUIDANCE)から前回見通しを上方修正(CURRENT GUIDANCE)している。
ただし、Jon Moeller氏(副会長兼COO兼CFO)は今回のプレゼンテーション資料で以下の様に述べている。細かい内容も含まれており少し冗長になるが、全文を載せておく。
- We face the demand and supply challenges associated with the coronavirus outbreak.
我々はコロナウイルスの発生に伴う需要と供給の課題に直面しています。 - China is our second largest market—sales and profit.
中国は我々にとって2番目に大きな市場です (売上と利益の面で)。 - Store traffic is down considerably, with many stores closed or operating with reduced hours.
店舗の来客は大幅に減少しており、多くの店舗が閉店または営業時間を短縮しています。 - Some of the demand has shifted online but supply of delivery operators and labor is limited.
需要の一部はオンラインに移行していますが、配送業者と労働力の供給は限られています。 - There are also impacts outside of China: travel retail, a significant reduction in department store traffic in many Asian metro areas, and global supply.
また、中国以外にも影響があります。トラベルリテール(旅行客を対象とした小売。空港免税店や機内販売など)、アジアの多くの大都市圏におけるデパート来客数の大幅な減少、そして世界的な供給の問題です。 - We access 387 suppliers in China that ship to us globally more than 9,000 different materials, impacting approximately 17,600 different finished product items.
我々は中国にある387社のサプライヤと取引をし、世界中に9,000種類以上の材料を出荷しているため、約17,600種類の製品に影響が出ています。 - Each of these suppliers faces their own challenges in resuming operations.
これらの各サプライヤは、業務を再開する際に独自の課題に直面しています。 - The operating challenges change with the hour, and of course the path of the virus is unknown, making it very difficult to provide precise estimates of impact.
運用上の課題は時間とともに変化し、もちろんウイルスの経路は不明であるため、影響の正確な推定値を提供することは非常に困難です。 - Results for the January to March quarter in China and for the total Company will be materially impacted on both the top and bottom line by these dynamics.
これらのダイナミクスにより、中国の1月から3月の四半期および会社全体の業績は、トップラインとボトムラインの両方に重大な影響を与えます。 - We continue to believe, based on what we know today, that our fiscal year top and bottom line guidance ranges—and I emphasize ranges—remain the right ones. We will continue to monitor the situation and obviously update you if and when a different reality becomes apparent.
私たちは現時点の情報に基づいて、2020年度のトップおよびボトムラインのガイダンスの範囲(範囲を強調しますが)は正しいものとしています。私たちは状況を監視し続け、異なる現実が明らかになった場合に明確に更新します
個人的なまとめとしては、コロナウイルスによる中国の影響で次四半期の業績は下がるが、2020年の見通しは変わらない、ということになるのだろう。具体的な四半期に及ぼす影響の数値は出なかったが、サプライヤー数や製品の数値を出している点は、興味深かった。前四半期の決算発表及びその後のカンファレンス刻子でも、ここまでコロナウイルス関連で踏み込んだ説明はなかったのだが、アップデートがあるのは有難い。
その他カンファレンス資料で興味深かった点
CAGNYの性質上、上記以外はプロクター・アンド・ギャンブルの市場戦略の説明がなされていた。その中では特に「SUPERIORITY(優位性)」というキーワードが頻繁に出てきていた。
特に以下のスライドに簡潔にまとめられている。このスライドは何度も使用されていた。
画面の中ほどにあるProducts、Packaging、(Bland)Communication、Retail Execution、Valueの観点でSuperiorityを上げていく施策、そして実施してきた結果がプレゼンテーションで事細かに説明されていた。
個々についての説明は省くが、例えばBland Communicationの説明では以下の様なスライドが使われていた。
これはブランドの1つであるSK-IIの動画で、6億6100万回閲覧され、検索においては27%増の貢献をもたらした説明のスライド。まさかここで渡辺直美さんがP&Gのプレゼンテーション資料に出てくるとは思わなかった。
まとめ
昨日のP&Gの株価は、
0.91%の上昇。ダウ工業平均が0.44%のマイナス、S&P 500が0.38%のマイナスだったことを考えると、コロナウイルス/中国の状況が2020年第3四半期の業績に影響を及ぼすと明言した割には、頑張った方だろう。これは上記の様な状況にもかかわらず、通期目標を据え置いたことが市場に評価されたのだろうか。
2020年1月中旬から2月上旬に続いた保有銘柄の四半期決算発表では、コロナウイルスの影響がどの程度なのか不明な企業が多かったが、今後はP&Gや先日のアップルの様に適宜情報を開示する企業が増えてくるのだろう。そういった情報を見落とさずに、あと1ヶ月後に迫ってきた自分の米国株購入に活かすようにしたい。