はじめに
2024年5月20日(月)に自分の所有銘柄であるJPモルガン・チェース(JPM)のInvestor Day 2024が開催された。
ひと月ほど前の4月12日には2024年第1四半期決算が発表されており、特にめぼしい内容もなく穏当にイベントを通過すると思っていたのだが実際には
前日比4.5%下落と市場
に比べて大きく下落。ダウ工業平均が前日比マイナスに沈んだのもJPモルガンの下落のせいかもしれない。
以下JPモルガンInvestor Dayの主な内容をみて、何が下落につながったのかを確認しておくことにする。
JPモルガンInvestor Day 2024まとめ
以下はJPモルガンの企業サイトより引用・抜粋。
【AGENDA】
米国市場開場前から各事業部ごとに説明され、昼には終了している。
【Opening Remarks】
- 最高執行責任者(COO)Daniel Pinto氏のコメント
- 米経済はソフトランディングに向かっているが不透明性があるのは明らかであり、JPモルガンはこの見通しを妨げるリスクに備えている
- 銀行は余剰資本を株主に還元するために自社株買いを増やす予定だが、慎重な姿勢は崩さない
- プライベート・バンクの国際的拡大に機会があると見ており、欧州以外へのコンシューマー事業の拡大方法を検討中
- AIを導入することで約10億ドルから15億ドルの付加価値が生まれる
【Firm Overview(企業全体の財務関連)】
- 2024年通年のCIBマーケット事業を除く企業全体の純金利収入(Net interest income excluding Markets):~910億ドル(前四半期決算の~890億ドルから上方修正)
- 調整後経費(Adjusted expense):~920億ドル(前四半期決算の~910億ドルから増加)
- うちテクノロジーへの支出は~170億ドル
- Card NCO(Net Charge-Off) rate(カード純貸倒償却率):~3.40%(前四半期決算の~3.50%から減少)
- 最高財務責任者(CFO)Jeremy Barnum氏のコメント
- 自社株買い額を最近のペースに比べて増やすことは理にかなっている
- 資本を投資するのに特に魅力的な機会はまだない
- 規制の強化と地政学的な不透明性から環境はより複雑になっており、今後数四半期NIIの道筋は上下を伴うノイズの多いものになるだろう
【Asset & Wealth Management】
- Mary Callahan Erdoes氏のコメント
- 今年は入社する全員が将来のAIに備えプロンプトエンジニアリングのトレーニングを受ける
- AIはAsset & Wealth Management部門において時間節約と収入増加という点で寄与している
【Consumer & Community Banking】
- 経営陣の発言
- 消費者は依然として健全で回復力がある
- 中小企業からの全般的な与信需要は依然として低調
- カードの延滞と償却は正常化している
- 2024年の預金残高は横ばいと予想
- 預金残高のシェア拡大を目指し小規模の都市でより多くの人にサービスを提供する計画で、48州の人口の50%以上をカバーするという新たな目標を設定
- 今日、グローバルな投資家になろうとするならば中国の現地調査が必要であり、中国で起こっている力と力学を理解することは重要
- ファースト・リパブリックの統合完了に向け順調に推移
- 富裕層戦略の加速を目指してJPモルガン・プライベート・クライアントを立ち上げ
【Commercial & Investment Banking】
- 特に目立った発表、コメントはなし
【Closing Remarks & QA】
- 最高経営責任者(CEO)Jamie Dimon氏のコメント
- (自社株買戻しについて)現在の株価では大量に株式を買い戻すつもりはない
- (自身の引退の時期に関して)スケジュールはもう5年先ではない*。私たちはその途上にある。私にはこれまでと変わらないエネルギーがある。それが大事だ。100%の力で試合に出られなくなれば去るのが適切だろう
- (経済見通しについて)地政学的な緊張や物価高が想定よりも長引くといったリスクがあり慎重になっている
- (当局は)銀行の合併を認めるべき
*補足:Jamie Dimon氏は2006年にCEOに就任。以前は後継者についての質問に対して、あと5年は残るだろうと答えるのが通例だった。現在68歳のJamie Dimon氏は5年の留任パッケージの3年目。
JPモルガン株下落の要因
上記の様なInvestor Day 2024だったのだが下落の要因は何だったのか。
当日のJPモルガン株の動きを見てみると
と開始直後のプラスからやや下落で推移し、11時半過ぎに下げ幅が拡大してその後下落が続いたことが判る。
純金利収入を上方修正したにもかかわらず開始直後から株価がややマイナスで推移したのは、JPモルガンの事情というよりは同日複数あった米連邦準備理事会(FRB)当局者の発言がいずれも利下げに慎重なスタンスだったためだろう。そのためJPモルガン以外の大手米銀株も
前日比マイナスで終えている。
そしてJPモルガンの下落が他米銀に比べて大きいのは、時間軸からするとやはりJamie Dimon氏の発言を受けてのことだろう。特に冒頭でDaniel Pinto氏の「自社株買いを増やす予定だが、慎重な姿勢は崩さない」という発言から更に踏み込んで「現在の株価では大量に株式を買い戻すつもりはない」としたことや、自身の退任の時期に関して従来の発言とは異なり退任の時期が近いことを伺わせたことが材料視されたようだ。
まとめ
JPモルガンにしては1日で株価が大きく下落したため翌日の株価が気になったが
続落することはなく反発し、過去1ヶ月では市場(S&P 500)とほぼ同じパフォーマンスとなっている。
18年という長期に渡るトップが交代するというのは、どう転ぶか分からないが株価/交代後の経営にそれなりの影響を及ぼすことだろう。約1年前にもし株を買い足すことがあればJPモルガンという記述をしたが(その時から約50ドル上昇している)、今後のJPモルガン株はJamie Dimon氏の退任という要素を頭に入れておく必要がある。