はじめに
今週アルトリア・グループ(MO)とフィリップ・モリス(PM)の合併協議についてまとめたばかりでその際にも株価が下落したのだが、昨日はまた両社の株が結構下がっていた。市場全体は上向きだったため、その下げには何らかの理由があったのだろうと思う。そこで両社の株価が昨日下落した理由について確認してまとめてみることにする。
2019年8月29日のアルトリア、フィリップ・モリス株下落の原因
調べてみたところ、昨日の下落はウォール・ストリート・ジャーナルが関係筋の話として、米連邦取引委員会(FTC)が電子たばこの新興企業ジュール・ラブズの販売活動を調査していると報道したことが主たる要因だったようだ。以下はWSJ誌記事からの引用・抜粋。
- The Federal Trade Commission is investigating whether e-cigarette startup Juul Labs Inc. used influencers and other marketing to appeal to minors,(FTC/連邦取引委員会は、電子タバコの新興企業Juul Labs Inc.がインフルエンサーやその他マーケティングを使用して未成年者にアピールしたかどうかを調査している
- also determining whether to seek monetary damages(また、金銭的な損害賠償も検討している)
- “We fully cooperate and are transparent with any government agency or regulator who have interest in our category,”(ジュールの担当者は「私たちはこのカテゴリーに関心を持っている政府機関や規制当局と完全に協力し、透明性がある」と語っている)
アルトリア・グループはジュール・ラブズの株式を35%保有しているので、この報道がアルトリアと先日合併報道のあったフィリップ・モリスの株価下落につながったのだろう。
まとめ
昨日のダウ工業平均は前日比1.25%、S&P 500は1.27%の上昇だっただけに、アルトリアの3.49%、フィリップ・モリスの2.15%のマイナスはとりわけ目立つ。
市場全体が上向きでなければ、下落幅はもっと大きかったのかもしれない。
とはいえ、この報道内容だけでアルトリア株が3.5%下落したのは下がり過ぎだと個人的には思うのだが、以前に言及したように米国内での電子タバコ、特に若年層に対する規制の強化がされる方向であろうことが、改めて想起されたことが下落に拍車をかけたのだろうか。今回はFDA(米食品医薬品局)ではなく、FTCという別の部局の指摘ということも影響しているのかもしれない。
元々紙巻タバコの出荷量は規制や社会的な風潮として減少傾向にあるのだが、それをある程度肩代わりするであろうと見込まれている電子タバコに対する規制が米国内でさらに高まるとなると米国を市場としているアルトリア、そして合併協議をしているフィリップ・モリス共に先行きに不安が出てくるのは致し方のないところだろう。
それにしても今後両社の株をどうするか。今週の合併協議の際既にまとめた通りに様子見すべき要素がさらに強化されたと考えるべきなのだろう。
ただ、株価が下がるということは配当率が高くなるということでもあり、昨日終値時点でのアルトリアの配当率は7.59%、フィリップ・モリスは6.27%と恐ろしく高くなっている。この配当率の高さは正直魅力ではあるのだが、上に書いてきたような理由から長期視点で見るとこのレベルの配当率を維持できるのか疑問である。一方で両社とも着実に毎年増配をしているのもまた事実。以下は2008年にアルトリアとフィリップ・モリスが分社してからのアルトリア・グループ(MO)の配当推移。
株価の変動にかかわらず配当は右肩上がりではある。とはいえ、自分が所有している銘柄で言うとゼネラル・エレクトリック(GE)の様に安定していると思っていた銘柄でも、株価、配当も低調になるという実例もあることだしなあ。判断が悩ましいところ。それが分かる様であれば誰も投資で苦労はしない、ということだよなあ…。