はじめに
現地日付2026年9月23日(水)には米マクドナルド(MCD)の投資家向け説明会(Investor Day)が開催された。
同日の米国株式市場は

開場前に発表された9月の米総合購買担当者景気指数(PMI)が5年余りぶりの高水準となり、10月FOMCでの利上げ観測が強まった(CMEのフェドウォッチツールでは10月FOMCでの利上げ確率は前日の55.4%から69.7%へと約15%上昇)ことや中東情勢を巡る警戒感から主要3株式指数はいずれも下落したのだが、マクドナルドはそれらと比較しても

と5%近い大幅下落となっている。
冒頭に挙げた投資家向け説明会の内容が株価下落の要因と思ったのだが、実際にはその前に発表された新たな戦略「McDonald’s > NEXT(以降は原則「NEXT」と表記)」が主な下落要因だったようだ。
以下、マクドナルドの新たな戦略の概要と投資家向け説明会でのポイントを整理することにする。
2026年9月23日発表の米マクドナルド(MCD)の戦略「McDonald’s > NEXT」概要
以下の情報はマクドナルドの企業サイトより引用・抜粋。
- 成長戦略「Accelerating the Arches」を通じて築き上げた基盤を活かし、「より多くのお客様に、より頻繁に選ばれる存在」となるための戦略
- 具体的な生産性・成長性目標
- 牛肉カテゴリーにおけるリーダー的地位を維持しつつ、2030年までにチキンおよび飲料カテゴリーでそれぞれ1.5ポイントの市場シェア拡大
- 2030年までに営業利益率を50%台前半から半ばの水準へ引き上げるとともに、店舗レベルの運営効率を約250ベーシスポイント(2.5%)改善する
- マクドナルドならではの「素晴らしい食事」と「素晴らしいおもてなし」を通じて顧客体験を向上させる、数年にわたる全社的な取り組み「Make It Golden」を開始する
- 「NEXT」を構成する4つの柱(four pillars)
- メニュー
- 最高水準のオペレーション(ゴールドスタンダード)とイノベーションを通じて味と品質を向上させ、顧客からの支持強化、「第一の選択肢」としての利用機会の増加、そして客数の底上げを図る
- お客様(Consumer)
- マクドナルド・ブランドへの熱烈な支持(fandom)を活かし、顧客との関係をさらにパーソナライズすることで、長期的な来店頻度の向上につなげる
- レストラン
- オペレーションの質の向上、業務の簡素化、店舗デザインの刷新、そして生成AIを活用した「ArchIQ」の大規模導入を推進することで、成長と生産性向上を加速させる
- 米国および海外直営市場へのNEXT施策の展開に伴い、店舗レベルの効率性を約250ベーシスポイント(2.5%)改善することを目指す
- 人々(People)
- 顧客により良く一貫性のある体験をもたらす、新たなレベルのホスピタリティを従業員が提供できるよう支援し、それによってリピート率の向上につなげる
- メニュー
- 「NEXT」は顧客体験の向上を目指す全社的な中長期の取り組み「Make It Golden」によって支えられる。10月5日の創業記念日に始動する「Make It Golden」は、マクドナルドならではの素晴らしい食事とホスピタリズムの提供に向けて、システム全体を結束させるもの
- 「NEXT」は、フランチャイズ加盟店と連携して投資を行うための新たな取り組み
- 各市場は、世界規模のソリューションと地域ごとの知見を組み合わせ、加盟店の対応能力や投資収益を十分に考慮しながら、明確な優先順位に基づいて施策を進める
- 店舗の近代化、テクノロジーの導入、および業務改善を加速させるため、マクドナルドは賃料の減免や資本支援を組み合わせる形で、2036年までに総額約85億ドル(うち2030年までに約50億ドル)の「NEXT」パートナーシップ支援を提供する
- 店舗レベルでの効率化により約250ベーシスポイント(2.5%)の改善を目指すが、これは米国の平均的な店舗において年間約10万ドルのキャッシュフロー改善効果に相当し、その大部分は時間をかけて店舗の最終利益に寄与すると見込まれる
- マクドナルドの試算では、これらの投資は、顧客およびクルーの体験を向上させると同時に、加盟店に対してパートナーシップ開始後約4年での投資回収をもたらすものとなる
- 財務見通し/目標

- 店舗数拡大による売上(Sales from unit expansion)
- 2027年にはシステム全体の売上高成長に約2.5%寄与し、2030年までに約2%へと鈍化する見通し
- 営業利益率(Operating margin %)
- 2030年までに50%台前半から半ば(Low-to-mid 50%)
- 売上に占める一般管理費(G&A)の割合
- 2030年までに約1.9%
- 設備投資(Capital expenditures)
- 2027年から2030年にかけては、現在の為替レートに基づき、年間約30億ドルの基本設備投資に加え、「NEXT」の展開を加速させるための累計15億~20億ドルの資本提携支援を実施
- フリーキャッシュフロー転換率(%)
- 2030年までに80%台半ばから後半(Mid-to-high 80%)
- レストランの効率性
- レストラン運営レベルの効率化により約250ベーシスポイント(bps)の改善が見込まれ、その実現時期は米国および海外直営市場全体への「NEXT」要素の全面導入と連動
- カテゴリーシェア
- 2030年までに、チキンおよび飲料のシェアをそれぞれ1.5ポイント拡大し、牛肉市場におけるシェア首位の座を維持
- 店舗数拡大による売上(Sales from unit expansion)
2026年9月23日の投資家向け説明会(Investor Day)におけるポイント
- 最高経営責任者(CEO)Chris Kempczinski氏の発言
- インフレが高止まりする中、当社が完全所有する市場における来店客数の伸びは横ばいになると予想している
- 新たな目標と10年間にわたるフランチャイジー支援計画は、第2四半期の米国売上高の伸びが予想を下回ったことを受け、売上勢いを回復させるため
- 最高マーケティング責任者(CMO)Morgan Flatley氏の発言
- ロイヤリティプログラムを新しい階層型システムに移行する
- 顧客にとって最も重要な食事、習慣、瞬間に基づいた高度にパーソナライズされた体験を通じて、ロイヤリティ・プログラムの新規会員獲得と、既存会員の購入頻度の向上を図る
- 来店頻度に基づいて、ロイヤリティプログラムの会員を3つのカテゴリーに分類する(開始時期については言及せず)
- 月に1回以上来店する顧客に対しては、ポイントの獲得速度の向上、期間限定メニューへの先行アクセス、会社の新商品発表イベントへの招待などを提供することを検討
- 90日に1回来店する顧客に対しては、来店を促すオンラインゲームのようなチャレンジを提供することを検討
- ここ数ヶ月間マクドナルドを利用していないロイヤリティ会員に対しては、誕生日ボーナスのような特典を提供することを検討
- 米国のロイヤリティプログラム会員は今年、Uberの乗車クレジットやストリーミングサービス「Disney+」のサブスクリプションが提供される見込み
まとめ
以上マクドナルドの新たな戦略「McDonald’s > NEXT」の概要と投資家向け説明会のポイントについて整理してみた。
時間的には「NEXT」戦略の発表は米国株式市場の開場前、投資家向け説明会が始まったのは米国市場開場と同じ米東部夏時間9:30。日中のマクドナルド株の推移を見てみると

取引開始直後の一瞬は前日比とほぼ同等だったもののすぐに下落し、説明会が進むにつれ下げ幅を拡大している。やはり「NEXT」戦略への85億ドルという投資額、インフレによる客足横ばいという点が市場の懸念を生んだのだろう。
年初来のマクドナルド株の推移を市場(S&P 500)と比べると

S&P 500は約12%の上昇となっているのに対し、マクドナルドは約22%の下落。2月末には年初来10%上昇していたことを思うと年初来の下落幅は更に大きく感じる。しかもここ半年ほどマクドナルド株は下落傾向が続いている。
今後のマクドナルド株だが、ここ半年の下落傾向、新たな戦略が株価上昇のキッカケとなるどころか下落に拍車をかけたこと、インフレによる客足低迷が見込まれるとしていることを考えると、直近の第2四半期決算時に考えていたよりもかなり厳しい時期が続きそうだ。
何とか「McDonald’s > NEXT」戦略やロイヤリティプログラムの改変が経営陣の期待に沿う結果を出してくれることを願いたいが、それにはある程度の時間が必要だろうから、より一層の株価下落を覚悟しておくことにしたい。