はじめに
米国時間2025年2月12日(木)に2025年1月の米消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が米労働統計局から発表された。
前回2025年1月発表のCPIは概ね市場予想通りだったのだが、変動の大きいエネルギーと住居費を除いたコアCPIが市場予想をやや下回り、6ヶ月振りに鈍化したことでインフレ懸念が和らいで株式市場は上昇、債券利回りは低下、ドル円為替はドル安とそれぞれ大きく変動した。
そしてCPI後の2025年1月末のFOMCでは市場の予想通り政策金利が据え置きされ、今後の利下げへの手掛かりが無かったこともあって市場に大きな変動は無く通過し、その後も市場は方向感が定まらない印象となっている。
そんな状況の中で今回のCPI結果そしてそれを受けて市場はどう動いたのか。以下に確認して整理しておく。
2025年2月12日米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)発表の2025年1月消費者物価指数(CPI)
以下の情報は米労働省労働統計局の発表資料より引用・抜粋。
今回の統計は例年通り年次改定がなされ、消費動向をより正確に把握するためのウエート改定が反映され、過去5年間の季節調整済み月次データも修正の対象となっているが、比較の対象となる昨年のCPIは軽微な修正に留まっているとのこと。
- 2025年1月の前月比消費者物価指数(季節要因調整済)は前月比0.5%の上昇、市場予想は0.3%の上昇
- 2025年1月の前年比消費者物価指数(季節要因調整済)は全品目では3.0%上昇、市場予想は2.9%の上昇。変動の大きい食品及びエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは前年比3.3%上昇、市場予想は3.1%の上昇、前月比では0.4%の上昇、市場予想は0.3%の上昇
- 家庭用食品(Food at home)は前年比1.9%上昇。2024年12月は前年比1.8%上昇
- 電気代(Electricity)は前年比1.9%上昇。2024年12月は前年比2.8%上昇
- 住居費(Shelter、主に家賃。サービス分野で最大の構成要素でCPI全体の約3分の2を占める)は前年比4.4%上昇。2024年12月は4.6%上昇
総合CPIの前月比0.5%上昇は2023年8月以来の大きな伸び。また米労働省労働統計局によると上昇分の30%近くが住居費によるもの。
ブルームバーグの算出によると住宅とエネルギーを除いたサービス価格は0.8%上昇(前月は0.2%上昇)となっており、2024年1月以来の大幅な伸びとのこと。
同日の市場の動き
米国株式市場
今回のCPIは市場予想を上回りインフレ圧力が未だ根強いことが示唆され、米連邦準備理事会(FRB)は利下げを急がないだろうとの見方(前日の上院公聴会でもFRBパウエル議長は政策金利の引き下げを急いでない姿勢を示した)が更に強まったことで、米株式市場は取引開始と共に大きく下落。それでも時間経過と共に徐々に回復して、NASDAQ総合はほぼ横ばい、S&P 500とダウ工業平均も開場直後の下落幅を縮小して取引を終えている。
米国10年債
CPIが発表された米国東部標準時8:30は上記チャートのCST(米国中部標準時)では7:30。
CPIの発表を受けて利回りは大きく上昇。CPI結果を受けてFRBの金利据え置きが予想よりも長引くとの見方が強まったことが要因だろう。
ドル円為替
CPIの発表があった米ET8:30は上記ドル円チャートのGMT13:30。CPI発表直後に1ドル=153円台半ばから154円台へとドル高に。その後も154円台前半での推移が続いていたが、日銀の早期利上げへの警戒からかややドル安となり1ドル=153円台後半となっている。
まとめ
今回のCPIは未だインフレ圧力が根強いことが示唆されたため下落幅は縮小したが株式市場は概ね下落、債券市場は利回り上昇、ドル円為替はドル高へと、冒頭に書いたインフレ懸念が和らいだ前回のCPIとは逆の動きとなった。
今回のCPI前までは年内の利下げ回数は2回が有力視されていたのだが、CPI発表以降CMEのフェドウォッチでは利下げ幅を0.25%とした場合、年内1回の利下げが最有力となっている(1回利下げが39.6%、利下げ無しが26.0%、2回利下げが24.7%)。
個人的には今回のCPI結果を受け、もっと市場に大きな変動があってもおかしくないと思ったのだが、実際には結果発表直後はそれなりに大きな変動があったものの時間が経過するにつれて、その幅は意外にも小さくなっている(取引が早く終わった米10年債は除く)。
今回は結果的に市場変動幅は限定的だったが、CPIに限らないその他インフレ関連の経済指標やFOMC結果次第では、FRBの金利政策を睨んでまだまだ市場は神経質な動きが続きそうな気がする。一体何時になったら方向感が定まるのやら・・・。