はじめに
昨年2025年12月22日にパラマウント・スカイダンス(PSKY)が自分の所有銘柄ワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)への買収修正案を通知し、ワーナーブラザース取締役会が検討をするとしたことについては
オラクル会長がワーナーブラザース買収に保証提供(2025/12)
でまとめた。
その後2026年になってからワーナーブラザースの買収を巡っては色々な出来事があったのだが、まとめるタイミングを逃しているうちに情報が溜まってしまった。
以下、遅ればせながらワーナーブラザースの買収に関する状況を最新化しておくことにする。
2026年1月7日(水)のワーナーブラザース・ディスカバリー発表
以下はワーナーブラザース・ディスカバリーの企業ページより引用・抜粋。
- Warner Bros. Discovery, Inc.(WBD)は本日、同社取締役会が、2025年12月22日に修正されたパラマウント・スカイダンス(PSKY)による株式公開買付けは、WBDとその株主の最善の利益にかなわず、2025年12月5日に発表されたWBDとNetflix, Inc.(NFLX) の合併契約条件に基づく「優れた提案」の基準を満たしていないと満場一致で決定したことを発表した
- 取締役会は全会一致でNetflixとの合併を支持する勧告を改めて表明し、WBDの株主に対しPSKYの提案を拒否するよう勧告する
- 取締役会会長Samuel A. Di Piazza, Jr.氏のコメント
- 取締役会は、パラマウントの最新の提案が、複数の重要な点においてNetflixとの合併合意よりも依然として劣っていると全会一致で判断した
- パラマウントの提案は取引完了にリスクをもたらす巨額の負債による資金調達や、取引が完了しなかった場合の株主保護の欠如など、依然として価値が不十分
- Netflixとの拘束力のある合意は、パラマウントの提案が株主に課すであろう大きなリスクとコストを伴うことなく、より高い確実性で優れた価値を提供する
- この決定に関連して取締役会は本日、株主に対する勧告の詳細を記載した書簡を株主に送付。以下は主に重要な点(原文で太字)の引用・抜粋
- PSKYの提案は、Netflixとの合併に比べて、多大なコスト、リスク、不確実性を考慮すると劣っている
- PSKYの提案を受け入れることに伴うWBD株主のコストと価値損失について
- WBDは、既存の合併契約を破棄したことによる契約解除料としてNetflixに28億ドルを支払う義務を負うことになる
- また、PSKYの同意なしにPSKYの提案に基づいて債務交換を実行できなかったことによる15億ドルの手数料を負担することになる
- さらに約3億5000万ドルの追加利息費用も負担することになる
- WBDの総コストは約47億ドル、1株当たり1.79ドルとなり、これらのコストはPSKYとの取引が失敗した場合にPSKYがWBDに支払う規制上の契約解除料の純額を、実質的に58億ドルから11億ドルに減額することになりる
- 一方、Netflixとの取引ではWBDにはこれらのコストは一切発生しない
- PSKYの提案を受け入れることに伴うWBD株主のコストと価値損失について
- PSKYの買収提案における巨額の負債調達とその他の条件は、特にNetflixとの合併の確実性と比較した場合、買収成立に失敗するリスクを高めている
- PSKYは時価総額140億ドルの企業であり、時価総額の約7倍に相当する946億5000万ドルの負債および株式調達を必要とする買収を試みている
- この取引を成立させるため、PSKYは複数のファイナンスパートナーとの契約を通じて、500億ドルを超える巨額の追加負債を負う予定
- PSKYが提案する取引は実質的にレバレッジド・バイアウト(LBO)で、これは史上最大のLBOとなり、プロフォーマベースの総負債総額は870億ドル、シナジー効果考慮前のグロスレバレッジは2026年予想EBITDAの約7倍と推定される
- WBD取締役会は、買収者が融資機関の取引完了時の資金提供能力と意欲に依存していることから、LBO構造はリスクをもたらすと判断した
- 煩雑な契約条項には、WBDが提携契約を変更、更新、または解除する能力を制限するものなどが含まれ、これらの制約はWBDの業務遂行能力を阻害する可能性、PSKYがWBDに「重大な悪影響」を及ぼしたと主張する可能性があり、その結果、PSKYとその資金調達パートナーは、取引を解消するか、取引条件を再交渉する可能性がある
- 一方、Netflixは時価総額約4000億ドル、投資適格のバランスシート、A/A3の信用格付け、そして2026年には120億ドル以上のフリーキャッシュフローが見込まれる企業で、Netflixとの合併契約はWBDにクロージングまで通常通り事業を運営するための柔軟性も提供する
- これらの要素を考慮し、取締役会はNetflixとの合併がPSKYの修正提案よりも依然として優れていると判断した
- PSKYが買収提案を成立させなかった場合、WBDの株主は多大なコストを負担し、企業価値の著しい毀損を招く可能性
- PSKYによる買収提案が成立しなかった場合、WBDの株主は事業への損害に対する十分な補償を受けられないことになる。PSKYがWBDに支払うことになる規制解除手数料の純額11億ドルは、取引株式価値のわずか1.4%という受け入れがたいほど低い金額であり、WBDが事業に及ぼす可能性のある損害への対応には全く不十分
- 対照的にNetflixが規制上の理由により合併を完了できなかった場合、WBDは 58億ドルの解約料を受け取るが、WBDの株主は従来のDiscovery GlobalとWarner Bros の計画的分離を含め、取締役会と経営陣が事業価値を確保し長期的な成功を確実にするために実施している取り組みから引き続き利益を得ることになる
- PSKYは、WBDから欠陥とその解決策の両方について明確な指示を受けていたにもかかわらず、WBD株主にとって最善の提案を繰り返し提出できていない
- PSKYの提案は、Netflixとの合併に比べて、多大なコスト、リスク、不確実性を考慮すると劣っている
2026年1月8日(木)のパラマウント・スカイダンス発表
以下はパラマウント・スカイダンスの企業ページより引用・抜粋。
- パラマウントの提案は、WBDとNetflixの既存の合意よりも優れており、WBD株主にとって最善の道筋を示している
- (我々の)1株あたり30ドルの現金は容易に評価できる
- 一方Netflixの取引には複数の不確実な要素が含まれており、総額はすでに減少している
- 12月に発表された時点で、NetflixはWBD株主に23.25ドルの現金、4.50ドルのNetflix株、そして予定されているDiscovery Globalのスピンオフ株式1株を提供したが、現在Netflixの株価は下限を大きく下回っており、WBD株主に提供される価値は低下している
- コミットされた債務ファイナンス
- バンク・オブ・アメリカ、シティバンク、アポロ・キャピタル・マネジメントは、いずれも世界的に高度な金融機関であり、歴史上最大規模かつ最も複雑な取引において企業や借入人への融資において数十年にわたる経験を積んでいる
- 各社はパラマウントによるWBD買収提案および関連する株式購入提案の資金調達のため、既に公表されている540億ドルの負債による資金調達を行う旨の以前に提出したコミットメントレターが引き続き完全に有効であることを確認した
- パラマウントは世界有数の金融パートナーを維持しており、WBD取締役会と直接協議し、提案について協議し、取締役会の最新の主張に対処する機会を歓迎する
- パラマウントは、WBDの株主に対し、本日株式の応募を通じて、パラマウントのより優れた提案に対する希望を WBD の取締役会に表明するよう求める
2026年1月12日(月)のパラマウント・スカイダンス発表
以下はパラマウント・スカイダンスの企業ページより引用・抜粋。
- 2026年1月12日Paramount Skydance Corporation(PSKY)は、本日Warner Bros. Discovery, Inc.(WBD)の株主に書簡を送付し、1株当たり30ドルの優れた全額現金による買収提案をWBDの株主に提供する今後の手順を概説した
- (注:色々詳細な説明があるがポイントは以下の2つ)
- WBD2026年次総会で取締役を指名し、Netflix取引の承認に反対する意見を募る予定
- WBD株主が十分な情報に基づいて意思決定を行えるよう、基本情報の開示を求めてデラウェア州で訴訟を起こす
- これらの措置は、決して軽々しく行うものではない
- 誤解のないよう申し上げるが、私たちの目標はWBDの取締役会と建設的な協議を行い、WBD株主にとって最善の利益となる合意に達すること
2026年1月20日(火)のネットフリックス発表
以下はネットフリックスの企業ページより引用・抜粋。
- 2026年1月20日、Netflix, Inc.(NFLX)とWarner Bros. Discovery, Inc.(WBD)は、NetflixによるWarner Bros.の買収に関する正式契約を全額現金取引に変更したことを発表した
- この修正契約により、取引構造が簡素化され、WBD株主にとっての価値の確実性が高まるとともに、WBD株主による議決権行使への道筋が加速される
- 全額現金による取引はWBD株式1株当たり27.75ドルで、従来の取引構造から変更はない(従来は23.25ドル+4.50ドルのNetflix株が基本)
- WBD株主は、WBDからの分離に伴い、Discovery Globalの株式による追加的な価値も受け取る
- Netflixの共同最高経営責任者Ted Sarandos氏のコメント
- WBD取締役会は引き続きこの取引を支持し、全会一致で推奨している
- 今回の全額現金決済による改訂契約により、株主投票までの期間が短縮され、1株あたり27.75ドルの現金に加え、Discovery Globalの分割による価値も加わることで、財務上の確実性が向上する
- 取引の完了は、Discovery Globalの分離の完了、必要な規制当局の承認の取得、WBD株主の承認、およびその他の慣例的な取引完了条件の充足を条件とする
2026年1月21日(水)のブルームバーグ報道
以下はブルームバーグの報道より引用・抜粋。
- 欧州連合(EU)の独占禁止法規制当局が、ワーナーブラザース・ディスカバリーに対するネットフリックスとパラマウント・スカイダンスの入札を同時に精査する見込み
- この件に詳しい関係者の話によると、並行審査が行われる可能性が高いのは両提案が同じようなスケジュールで進んでおり、両社ともすでにEUの合併監視当局と計画について予備的な話し合いを行っているため
- 並行して審査が行われれば規制当局は、一方の入札を迅速に承認する一方で、他方の入札をより長い調査の対象とするか、あるいは譲歩を要求することなどで、ワーナーブラザースの将来に対して影響力を持つことになる可能性がある
- ネットフリックスはパラマウント、ワーナー、EU規制当局はこの報道に対するコメントをせず
2026年1月22日(木)のパラマウント・スカイダンス発表
以下はパラマウント・スカイダンスの企業ページより引用・抜粋。
- (2026年1月20日に)修正されたNetflixの合併契約は、WBDが当初の契約が劣っていたことを認めたものだが、新しい取引はパラマウントの1株当たり30ドルの全額現金による提案より劣っている
- (Netflixの買収対象外である)Discovery Globalの資本構成がNetflixとの取引でWBDの株主が実際に受け取る金額を直接決定するため、WBDはそのような情報に加え、分離時点でDiscovery Globalの完全な財務情報を開示する必要があるにもかかわらず、WBDはこれらの情報なしにNetflixとの取引の株主承認を求める予定
- WBDの取締役会が、Netflixとの取引がパラマウントによる1株当たり30ドルの全額現金による買収提案を上回るものであると主張していることを考えると、これはさらに異例なこと
- パラマウントはWBDの株主に対し、WBDの特別総会でNetflixの取引やその他の提案に反対票を投じるよう要請する予定
- パラマウントは規制当局の承認に向けて引き続き取り組み、公開買付けを延長する
- 延長された期限は2026年2月20日
まとめ
以上、昨年末からのワーナーブラザースの買収に関する主な動きを整理してみた。
この様に様々な出来事があったワーナーブラザース株だが、過去6ヶ月の株価推移を見ると

と2025年9月半ばまでは@12ドル前後だった株価が、買収の噂が取り沙汰されてからは@20ドル台となり緩やかに上昇。そして12月にネットフリックスによる買収発表、その後のパラマウントの対案で上下動が激しかったものの、以降は@28ドル台での推移が続いており、上述した発表/報道では顕著な変化は見られない。
ここひと月の動きにもかかわらずワーナーブラザース株にほとんど変化が無いことを考えると、ネットフリックス/パラマウントの買収価格の変更、あるいは独占禁止法に引っ掛かり買収不可となるまでは、この水準での株価推移が続く気がする。一体どのような決着になるか判らないが、引き続きワーナーブラザースの株価/情報には注意を払っておきたい。