米国でIQOSデバイスの輸入・販売禁止の判定(2021/9)

はじめに

昨日2021年9月30日(水)の米国主要3市場は

ダウ工業平均:前日比マイナス1.59%

S&P 500:前日比マイナス1.19%

NASDAQ:前日比マイナス0.44%

とここ数日に下げ幅の大きかったNASDAQ以外は1%を超える大幅な下落。そして自分のドルベース米国株資産は

と2.5万ドル近く・2%を超える下落となり、市場に比べてかなり悪いパフォーマンスとなった。自分のポートフォリオが以下の様に全て下落しているので致し方のないところではある。

そんな中突出して下げ幅の大きかったのは北米でタバコ製品を取り扱っているアルトリア・グループ(MO)

と北米・中国以外でタバコ製品を扱っているフィリップ・モリス(PM)

のタバコ製品2銘柄。

このタバコ製品2銘柄が大きく下がった理由を調べてみると、市場全体の下落に引っ張られた面もあるだろうが掲題の件が大きく影響したようだ。以下にその内容について整理しておくことにする。


9月29日米国市場閉場後の米ITC(国際貿易委員会)の決定

決定内容

  • 米国際貿易委員会(U.S. International Trade Commission)は29日(水)、フィリップ・モリスとアルトリアがIQOSデバイス作成においてR.J.レイノルズが所有する特許を2件侵害しているとし、IQOSデバイスの米国での輸入と販売を停止しなければならないと裁定
  • 輸入と販売の禁止はバイデン大統領の署名を必要とする行政審査後2ヶ月で発効
  • この禁止措置により、フィリップ・モリスUSAを所有するアルトリアはIQOSデバイスの輸入し及びすでに輸入されたデバイスを販売することができなくなる

決定後の関係各社の反応

  • フィリップ・モリスは米ITCの決定に対して上訴する予定であるとコメント
  • アルトリア・グループは、「RJRの特許が無効でありIQOSがそれらの特許を侵害していないと引き続き信じている」とし、フィリップ・モリスと緊急時対応計画(コンティンジェンシープラン)に協力しているとコメント
  • レイノルズ・アメリカンは「我々の知的財産の侵害は投資と革新の能力を損なうので、世界中でIPをしっかりと守ります」とコメント

世界におけるこの問題の現状

  • レイノルズ・アメリカンの親会社であるブリティッシュ・アメリカン・タバコは既にいくつかの市場で既に同様の訴訟を起こしている
  • ただし、英国及びギリシャの裁判所はフィリップ・モリスの主張を認めている

まとめ

以上昨日2021年9月30日の自分の所有タバコ2銘柄アルトリア、フィリップ・モリスの急落原因について整理してみた。

2021年7月のアルトリアの決算発表をまとめた際に

アルトリア(MO)2021年第2四半期決算(2021/7)

この問題があることは認識していたのだが、まさかアルトリアが5%を超えるほどの急落となってしまうとは想定していなかった。

この問題については上述の通り、大統領の署名を必要とする行政審査の後2ヶ月の時間があることや、フィリップ・モリスが上訴の意向を示していること、米国以外ではフィリップ・モリスの主張が認められていることなどがあり、実際の禁止措置に至るかどうかはまだ定かではない。

もし実際に米国で従来の紙巻きタバコの出荷量減少をカバーすると期待される加熱式タバコであるIQOSデバイスが禁止されるとなると、北米のみでタバコ製品を取り扱っているアルトリアの業績への影響は大きいだろう。

それにしてもアルトリアの従来の紙巻きタバコ出荷量減少を補う投資や代替品は何かしらケチが付く印象が強い。電子タバコのJUULは投資額の10分の1ぐらいに減損されているし、大麻のクロノスへの投資も期待されたほど効果が得られていない。そしてIQOSにもケチが付く可能性がより高まってしまった。

年初来のアルトリア・グループ株の動き及びS&P 500(紫)、フィリップ・モリス(ピンク)の動きを見てみると

アルトリア株が市場(S&P 500)及びフィリップ・モリスに比べて上下動が激しく安定していない傾向が見て取れる。アルトリアは北米地域のみなので、フィリップ・モリスに比べて地理的なリスクの分散が出来ていないということなのだろう。4月の急落も

米国タバコ製品ニコチン規制強化報道とアルトリア株(2021/4)

が原因であったし、JUULの不振も若年層への健康被害のための色々な規制のためで、米国での規制や司法判断一つでアルトリア株は大きく動いてしまう。

フィリップモリスの配当増発表と直近のアップデート(2021/9)

でも触れたが、もし今後ポートフォリオの組み換えや株式の買い足しをする機会があれば、配当率が自分の所有銘柄で一番高いアルトリア(現在税引前7%超)よりも、税引前で4%台後半で毎年増配をしつつ紙巻きタバコ以外の分野への投資も進んでいるフィリップ・モリスの方が長期的に見ると有望な気がする。

アルトリア株も4月の急落時はしばらくして回復したので、今回の件もうまく乗り切って欲しいものだがどうなるか。今後の動向に注意しておきたい。

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