はじめに
2024年10月23日(水)には自分の所有しているAT&T(T)の2024年第3四半期決算の発表があった。
前回2024年第2四半期決算は市場が大きく下落した中で5%を超える上昇となり
「今後のAT&T株だが、短期的には下半期もこの傾向が続くのか次第なのだろう。カンファレンスコール中では、モビリティ事業が下半期も好調を維持できる旨の説明をしていたが実際にはどうなるのか。経営陣の目論見通り物事が進んで欲しいものだ。」
と書いていたのだが、その後AT&T株は順調に推移していた様な気がする。
今回の決算内容とそれを受けてのAT&T株はどうなったか。以下に内容を確認し整理しておく。
AT&T2024年第3四半期決算概要
以下の内容はAT&Tの企業サイトより引用・抜粋。
- 2024年第3四半期の総売上高(Total Operating Revenues)は302億1300万ドル、前年同期の303億5000万ドルから0.5%減少
- 2024年第3四半期のAT&T帰属の純利益/損失(Net Income(Loss) Attributable to AT&T)は1億7400万ドルの損失、前年同期は34億4400万ドルの利益
損失となっているのは今四半期に主にBusiness Wireline部門に関連する減損処理等(Asset impairments and abandonments and restructuring)として44億2200万ドルをけいじょうしているため。
- 2024年第3四半期の調整後一株当たり利益(Adjusted EPS)は0.60ドル、前年同期の0.64ドルから6.3%減少
- 2024年第3四半期のフリーキャッシュフローは50億9500万ドル、前年同期は51億8200万ドル
事業部業績
【Communications(通信)事業】
Communications(通信)事業のOperating Revenues(売上)は前年同期比0.6%減の290億7400万ドル、Operating Income(営業利益)は前年同期比1.6%減の71億5600万ドル。
モビリティの売上は210億5200万ドルで前年同期比1.7%の増加。
- 月額料金を支払う携帯電話契約数(Postpaid phone)は40万3000増
Business Wirelineの売上は相変わらず高度なIPベースへ移行のため前年比11.8%減少して46億600万ドル。
Consumer Wirelineの売上はファイバーブロードバンドの増加により前年比2.6%増の34億1600万ドル。
【ラテンアメリカ事業】
ラテンアメリカ事業はメキシコにおけるワイヤレスサービスのみで、コミュニケーション事業に比べて事業規模が極めて小さいので以下の図表数値のみ参考として。
2024年通期見通し
2024年の通期見通しは以下の通り。
- Revenue Growth(売上成長率)
- Wireless Service Revenues:3%
- Broadband Revenues:7%超
- Adjusted EBITDA(調整後EBITDA):3%
- Capital Investment(設備投資):210億~220億ドル
- Free Cash Flow:170億~180億ドル
- 2024 Adjusted EPS(調整後EPS):2.15~2.25ドル
いずれも3四半期連続で変わらず。
その他
その他決算及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。
- 第3四半期中にAT&Tが所有するDirecTVの株式(全体の70%)をプライベート・エクイティ会社TPGに76億ドルで売却すると発表
- 買収は2025年後半に完了する予定
- AT&Tは2025年に20億ドルの初回支払いを受け、2029年まで追加支払いを受ける
- モビリティでは第3四半期にPostpaid phoneの純増数が40万3000件に達し、Postpaid phoneの解約率とアップグレード率が前年同期より低下し効率的に成長している
- 今年3四半期が経過した時点でモビリティ事業はEBITDAが6%以上増加しており、これは通年で示したガイダンスの上限に相当する
- Consumer Wireline事業では南東部での1ヶ月に及ぶストライキとハリケーンの影響にもかかわらず、5四半期連続でブロードバンド加入者が純増(22万6000件)
- ファイバーの約17%の成長に牽引され、Consumer Wireline事業はEBITDAが8%以上増加
- 12月3日にAnalyst & Investor Dayを開催予定で今後の戦略を説明する
- 2つのハリケーン及びストライキに関連して約1億1500 万ドルの財務的影響が見込まれるが、通年見通しは変わらない
- 9月末の純負債対調整EBITDA比率は2.8倍で、2025年上半期の2.5倍台の目標達成に向けて着実に前進している
- 質疑応答
- 2025年の利益動向について
- 現時点ではもちろん詳しくは言えない
- ただDirecTVの売却がいつ完了するか次第でReportベースではEPSが伸びないかもしれない。ただし有機(Organic)ベースでは、EBITDAと営業利益が来年も伸びると予想していることに変わりはない
- 2025年の利益動向について
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2024年第3四半期の総売上高(Total Operating Revenues)は302億1300万ドルで、市場予想の304億4000万ドルを下回っている
- 2024年第3四半期の調整後一株当たり利益(Adjusted EPS)は0.60ドルで、市場予想の0.57ドルを上回っている
- 2024年第3四半期の月額料金を支払う携帯電話契約数(Postpaid phone)は40万3000増で、市場予想の39万3400増を上回っている
- 2024年第3四半期のフリーキャッシュフローは50億9500万ドル、市場予想の46億9000万ドルを上回っている
となっている。
まとめ
上記の様な決算結果を受けてAT&T株は
4.60%の上昇。同日の米国市場が
いずれも下落していたことを考えると、AT&T株の上昇はかなり大きかったと言える。前日に同業のベライゾン(VZ)の決算発表があり約5%下落していたのでかなり不安だったのだが、売上は市場予想に届かなかったものの、利益率の高い月額料金を支払う携帯電話契約数(Postpaid phone)の純増数やその他重要項目が市場予想を上回ったことが評価されたのだろう。
決算翌日を含めた年初来のAT&T株の推移を市場(S&P 500)と比べてみると
7月24日の第2四半期決算後の上昇時点では年初来でS&P 500と同程度の上昇でその後8月末まではその状態を維持。そして9月前半に経営陣が講演で通期見通しが維持できるとしたこともあって大きく上昇。その後は方向感に乏しい動きをしていたが、今回決算を受けて年初来高値を更新している(ただし翌日は利益確定もあってか1.29%下落している)。
今後のAT&T株だが、これまでの様に利益率の高い携帯電話契約数(Postpaid phone)の純増数がどこまで市場予想を上回り続けるかがポイントになるだろう。ここ数四半期は好調だがそれが本当に持続的なものなのかはまだ確信が持てないのも正直なところ。来年1月の第4四半期決算までに適宜行われるであろう経営陣のアップデートや12月3日に開催予定のAnalyst & Investor Dayの内容に注目しておきたい。