AT&T(T)2021年第1四半期決算発表(2021/4)

はじめに

昨日2021年4月22日には自分が所有しているAT&T(T)の2021年第1四半期決算発表があった。

同日に決算発表のあったダウ・インク(DOW)のまとめで既に触れたが、決算を受けて株価は

と自分の記憶にある限りではAT&Tにしては1日の株価変動としては久々の大幅上昇となったのではないだろうか。

以下でAT&Tの決算内容を確認し、何故株価が大きく上昇したのか整理しておくことにする。


AT&T2021年第1四半期決算概要

以下の内容はAT&Tの企業サイトより引用・抜粋。

  • 2021年第1四半期の総売上高(Total Operating Revenues)は439億3900万ドルで、前年同期の427億7900万ドルから2.7%増加
  • 2021年第1四半期のAT&T帰属の純利益(損失)(Net Income(Loss) Attributable to AT&T)は75億5000万ドルで、前年同期の46億1000万ドルから63.8%増加

  • 2021年第1四半期の調整後一株当たり利益(Adjusted EPS)は0.86ドルで、前年同期の0.84ドルから2.4%増加

事業部の業績を見てみると、

【Communications(通信)】

DirecTVなどビデオ事業をスピンオフしてAT&Tから非連結化する(Video事業は取引が完了するまではCorporate & Otherに含まれる)ため、Communicationsは今期から

  • Mobility
  • Business Wireline
  • Consumer Wireline(以前はBroadband)

の3つに再定義されている。

Operating Revenues(売上)は前年比5.2%増。Business Wireline、Consumer Wirelineは基本的に旧来の音声サービスなどのため、IPサービスなどへの移行のため売上は減少傾向にある。

ただし、金額規模の大きいMobilityは今期も好調。月額料金を支払う携帯電話契約者数(Postpaid phone)は59万5000人増、携帯電話以外も含めた月額料金支払い契約者数は82万3000人増で市場予想の35万8200人増の倍以上となっている。

【ワーナーメディア】

Operating Revenues(売上)は前年同期比9.8%増。理由として前年のCOVID-19の影響からの部分的な回復を反映している(reflecting the partial recovery from prior-year impacts of COVID-19)ことを上げている。

HBO Max(HBO含む)の米国内加入件数は、

1年前より1100万(前四半期から270万)増加し合計4420万、世界全体では1年前から1100万増加し合計6390万。加入者数が堅調に増加していることもサブスクリプション、広告売上の増加に寄与している。

前四半期まであった財務に関するCOVID Impact summaryは今回は無し。ある程度COVIDの影響が緩和されたためだろうか。

2021年の通期見通しは

となっており、前四半期からの違いは、

  • Gross Capital Investment(総設備投資):210億ドルから220億ドルに変更
  • Capital expenditures(CAPEX):180億ドルから170億ドルに変更

の2点。


市場予測との比較

今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、

  • 2021年第1四半期の総売上高(Total Operating Revenues)は439億3900万ドルで、市場予想の426億9000万ドルを上回っている
  • 2021年第1四半期の調整後一株当たり利益(Adjusted EPS)は0.86ドルで、市場予想の0.78ドルを上回っている

となっている。


まとめ

上記の様な決算内容を受けて冒頭の通りAT&Tの株価は大幅上昇。同日のダウ工業平均が0.94%、S&P 500が0.92%、NASDAQが0.94%いずれも下落していた事を考えると、同日のAT&Tの4.15%はかなり市場に評価されたことになる。

ただ上記の決算内容でこれ程上がるのは意外の感がある。というのも売上、調整後一株当たり利益が市場予想を上回ってはいるが、これは前四半期も同じく市場予想を上回っていたのに

と下落していたのが頭にあったため。とはいえ前四半期の決算発表時はダウ工業平均が2.05%、S&P 500が2.57%、NASDAQが2.61%いずれも大きく下落していたので、市場よりはマシだったことにはなる。前四半期は前年比売上高が減少していたのが今回とは違うところだが、それ程影響があるとは思えない。

今回決算を受けてAT&T株がこれ程上昇した合理的な理由が今一つ思い浮かばなかった。キャッシュフローが以下の様に改善されていることなども一つの要因だろうが、決定的な要素ではないだろう。

と色々決算資料を見て考えてみている中、ふと思い出したのは動画配信サービス大手のネットフリックス(NFLX)が最近大幅に株価を下げた報道を見た気がした。そこでざっと調べてみると、

  • ネットフリックスの決算発表はAT&Tの前々日の4月20日米国市場閉場後
  • 決算を受けて21日のネットフリックスの株価は7.4%下落
  • 売上、EPSとも市場予想を上回る決算
  • ただし、四半期の有料加入者増は全世界で398万人、1月の決算時の同社見通しは600万人増、市場予想は630万人増
  • 第2四半期の加入者増見通しは全世界で100万人、市場予想は480万人
  • 2021年3月末時点ので全世界での総加入者数は2億760万人
  • 北米での1~3月期の加入者増は45万人(合計7440万人)

といった具合で、1~3月期の加入者が予想より大幅に少なかったことが、売上、EPSが市場予想を上回ったにも関わらずネットフリックス株が大幅に下がった原因の様だ。

このように直前に発表のあったネットフリックスの有料加入者数が想定よりも伸びなかったにもかかわらず、AT&Tの方はHBO Maxの加入者が堅調に伸びたことがAT&T株の大幅上昇に影響した可能性はあるかもしれない。

いずれにせよ今回のAT&Tの決算内容は好調で、株価も年初来の高値を更新し昨年12月以来の31ドル台まで到達。

後はこの調子が続くかどうか。決算内容を見る限りは今後大幅に下がる要素はなさそうに思えるのだがどうだろう。4~6月期にはHBO Maxのラテンアメリカへの展開、米国で広告付きHBO Maxを開始といった事が予定されている点や、最近続いている非中核資産の売却がまだあるのかなどに気を付けてAT&T株をチェックしておきたい。

ちなみに配当は今期も現在の水準での配当の維持(sustain our dividend at current levels)をしそれ以外の現金は長期負債の削減を優先するという方針は変わらず。配当が増えないのは残念だが、税引前配当率が6%を超えるAT&Tにそこまで期待するのは高望みのし過ぎだろう。

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