はじめに
2024年4月24日(水)には自分の所有しているAT&T(T)の2024年第1四半期決算の発表があった。
前回2023年第4四半期決算は2024年通期見通しが市場予想を下回ったこともあって約3%株価が下落し、その際には
「今回の決算を受けて株価は下がったものの、内容自体はさほど悪くなかった気はしている。ただしこれはAT&Tの前提が正しければの話で、2023年順調だったPostpaid phoneの純増が2024年も継続して続くのかという点には個人的には今一つ自信が持てない。」
と書いていた。
その後は市場に比べて株価は伸び悩んでいる印象があるのだが、今回の決算内容とそれを受けてのAT&T株はどう動いたか。以下に内容を確認し整理しておく。
AT&T2024年第1四半期決算概要
以下の内容はAT&Tの企業サイトより引用・抜粋。
- 2024年第1四半期の総売上高(Total Operating Revenues)は300億2800万ドル、前年同期の301億3900万ドルから0.4%減少
- 2024年第1四半期のAT&T帰属の純利益(Net Income Attributable to AT&T)は34億4500万ドル、前年同期の42億2800万ドルから18.5%減少
- 2024年第1四半期の調整後一株当たり利益(Adjusted EPS)は0.55ドル、前年同期の0.60ドルから8.3%減少
- 2024年第1四半期のフリーキャッシュフローは31億4200万ドル、前年同期は10億400万ドル
事業部業績
【Communications(通信)事業】
Communications(通信)事業のOperating Revenues(売上)は前年同期比1.0%減の288億5700万ドル、Operating Income(営業利益)は前年同期とほぼ変わらずの67億4500万ドル。
モビリティの売上は205億9400万ドルで前年同期比0.1%の増加。
- 月額料金を支払う携帯電話契約数(Postpaid phone)は34万9000増
Business Wirelineの売上は相変わらず高度なIPベースへ移行のため前年比7.8%減少して49億1300万ドル。
Consumer Wirelineの売上はファイバーブロードバンドの増加により前年比3.4%増の33億5000万ドル。
【ラテンアメリカ事業】
ラテンアメリカ事業はメキシコにおけるワイヤレスサービスのみで、コミュニケーション事業に比べて事業規模が極めて小さいので数値のみの参考。
2024年通期見通し
2024年の通期見通しは以下の通り。
- Revenue Growth(売上成長率)
- Wireless Service Revenues:3%
- Broadband Revenues:7%超
- Adjusted EBITDA(調整後EBITDA):3%
- Capital Investment(設備投資):210億~220億ドル
- Free Cash Flow:170億~180億ドル
- 2024 Adjusted EPS(調整後EPS):2.15~2.25ドル
いずれも前四半期決算時から変わらず。
その他
その他決算及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。
- 現在、高額後払い電話(high-value postpaid phone subscribers)の加入者は約7160万で1年前から150万人増加
- 後払い電話の解約率0.72%は、第1四半期の解約率としては過去最低
- 第1四半期の純増数25万2000を含めAT&Tファイバーの顧客数は約860万人に達し、3四半期連続で加入者ベースを拡大しておりこの傾向は今後も続くと予想される
- 過去1年で負債を約60億ドル削減し、引き続き強力なフリーキャッシュフローで負債の返済を行うことで、2025年上半期には純負債対調整後EBITDA2.5倍という目標を達成すると予想
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2024年第1四半期の総売上高(Total Operating Revenues)は300億2800万ドルで、市場予想の305億4000万ドルを下回っている
- 2024年第1四半期の調整後一株当たり利益(Adjusted EPS)は0.55ドルで、市場予想と同じ
- 2024年第1四半期の月額料金を支払う携帯電話契約数(Postpaid phone)は34万9000増で、市場予想の28万6800増を上回っている
- 2024年第1四半期のフリーキャッシュフローは31億4200万ドル、市場予想の25億3000万ドルを上回っている
となっている。
まとめ
上記の様な決算結果を受けてAT&T株は
前日比1.88%増。同日の米国市場は
方向感が定まらない動きで前日とほぼ変わらずだったことを考えるとまずまずの結果。ただしAT&Tの日中の動きを見てみると
AT&T株も一時前日(16.50ドル)比マイナスになるなど市場と同様方向感が定まらない動きであくまで結果的に終値がプラスになっただけ、という点を認識しておく必要ががある。とはいえAT&Tの決算自体は売上は市場予想に届かなかったものの、その他重要項目は市場予想を上回っているのでその点が評価されたのだろうか。
ただ年初来のAT&T株の推移を見てみると
前回決算時の下落直後の2月初にかけての上昇は一時的なもので、その後は市場と同様な推移だったものの2月上旬の下落をカバーするには至らず市場(S&P 500)が6.3%上昇しているのに対してAT&Tはほぼ横ばいにとどまっており、低調なパフォーマンス。
今後のAT&T株だが、先に述べた様に今回の決算を受けて結果的には上昇したものの日中には下落したこともあり先行きは不透明で、年初来の動きも見ると期待はあまりできそうにない。何とか市場と同程度のパフォーマンスとなってくれるといいのだが。