パウエル議長の米下院公聴会での証言と市場の動き(2023/6)

はじめに

昨日2023年6月21日には先日の

2023年6月FOMC結果とパウエル議長発言(2023/6)

まとめで触れたとおり、パウエルFRB議長が半期に一度の米下院金融サービス委員会の公聴会で証言を行った。正直前回のFOMC会合から1週間程しか経過していないので目新しい材料があるとは思えないのだが、何か変化を示唆する発言がある可能性も拭い切れないのでその内容を確認し、整理しておくことにする。


2023年6月21日パウエル議長の米下院金融サービス委員会の公聴会で証言概要

以下の内容はFRBおよび下院金融サービス委員会のサイト(YouTube動画含む)より引用・抜粋。米東部夏時間10時から約3時間ほど行われた。

【冒頭証言】

  • 同僚と私は高インフレがもたらしている困難を理解しており、インフレ率を目標の2%へと戻すことに引き続き強くコミットしている
  • われわれは、入手するデータとそれらが経済活動とインフレの見通しに対して持つ意味合いの全体像、さらにリスクのバランスに基づき、今後も会合ごとに(利上げの)判断を行っていく
  • FOMC参加者ほぼ全員が、年末までに幾分かの追加利上げが適切になると予想している
  • インフレ鈍化には、経済成長が潜在成長率を一定期間下回ることと、労働市場環境の幾分かの軟化が必要になる可能性が高い

【質疑応答】

  • (連邦公開市場委員会(FOMC)の今後の計画について)向こう数ヶ月利上げを継続するが、ペースはより緩やかなものにすることが理にかなう可能性がある
  • (過去1年程の利上げペースについて)プロセスのより早い段階ではスピードは非常に重要だったが、今はあまり重要ではない
  • (6月のFOMCで利上げを見送ったことについて)われわれは一時停止(pause)という言葉を使っていない。今日ここで使うこともない。慎重さを保つための措置でありFRB当局者が年末までに必要と感じている追加利上げを決定する前に、より多くの情報を収集する時間を確保するためである
  • (6月の経済予測で年内に2回の利上げが見込まれることについて)経済がほぼ予想通りに推移した場合にどうなるかをかなり正確に推測したものだ
  • (今年春に起きた複数の銀行破綻を受け地銀や大手行の監督・規制をどう強化していくのか)FRBは銀行規制の変更についてまだ投票を行っていないが、スタッフは検討中のいくつかの修正について説明を受けた。米大手行の資本は極めて十分だが、中小規模の銀行の事業モデルに悪影響をもたらさないよう慎重になる必要がある
  • (基軸通貨としてのドルに関して)世界の基軸通貨としてのドルの地位は極めて重要だ。この地位があるのは民主主義制度と法の支配に加え力強い物価安定があるためで、これらが整っている限りドルは基軸通貨であり続ける

公聴会を受けての市場の動き

米国主要3市場

いずれも下落で始まりダウ工業平均は一時プラスに転じる場面があったものの、最終的には前日比マイナスで終えている。改めて追加利上げの可能性が示唆されたことでハイテク関連の大型株を中心に売りが優勢となったことが要因らしい。

米国債長期金利(10年債)

米国債長期金利(10年債)の利回りの日中変化は以下の通り。

開場直後からパウエル議長の発言を受けて利回りが上昇したものの、その後アトランタ地区連銀のボスティック総裁が米Yahoo Financeのインタビューで以下の様に発言したこともあって前日とほぼ同程度まで戻っている。

  • 年内は(政策金利を)現行水準にとどめるというのが自分自身のベースラインシナリオだ
  • 単純に追加利上げに踏み切れば、経済の勢いを不必要に削ぐことになりかねない
  • 連邦公開市場委員会(FOMC)がすでに行った懸命の取り組みを経済全体に行き渡らせ、インフレ率が目標に近づくかどうかを見極めるべき時期に来ていると思う
  • 制約的な政策を当面機能させることは賢明だ。なぜなら政策が本当に制約的だったのは1年に満たず、金融政策の変更が経済活動に有意に影響を与えるには時間がかかるからだ。今後数ヶ月間にわれわれの政策引き締めがますます効果を発揮すると予想する十分な理由がある
  • 2024年の大部分で利下げはないと予想している

ドル円為替

ドル円為替の日中変化は以下の通り。

上記チャートはBST(英国夏時間)であるがパウエル議長の議会証言草稿開示とともにドル安傾向。ただしこのチャート移行はじりじりと再びドル高となっている。


まとめ

以上パウエル議長の米下院金融サービス委員会の公聴会で証言とそれに伴う市場の動きを整理・確認してみたが、先日のFOMCからの大きなアップデートはなく大型ハイテク/グロース銘柄が低調だった以外には市場にも大きな動きはなかった。

ただパウエル議長の発言内容とアトランタ地区連銀のボスティック総裁の発言内容には隔たりが見られたので、今後の政策金利がどう動くかには懸念が残る。

次回のFOMC会合は7月25日、26日が予定されているが、7月半ばから本格化する米企業の4~6月期決算発表、そしてそれまでの各種経済指標を受けて政策金利をどうするかに注意しておきたい。

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