シティグループ(C)2020年第4四半期決算(2021/1)

はじめに

昨日2021年1月15日の米国市場開場前に、自分の所有銘柄であるシティグループ(C)の2020年第4四半期決算発表があった。

前日2021年1月14日決算発表前のシティ株は決算への期待からなのか

市場が下落傾向にあったにもかかわらず3%超の上昇。逆に自分としては決算前に上がり過ぎではという懸念があったのだが、発表された決算内容とそれに基づくシティの株価について整理しておくことにする。


シティグループ2020年第4四半期決算発表の概要

以下の内容はシティグループ企業サイトの発表資料より抜粋・引用。

  • 収入(Revenues)は164億9900万ドルで前四半期より5%減、前年同期比10%減
  • 純利益(Net Income)は46億3200万ドルで前四半期より47%増、前年同期比7%減
  • 1株あたり純利益(EPS)は2.08ドルで前四半期より53%増、前年同期比3%減
  • 純金利マージン(調達金利と貸付金利の差)は前四半期の2.03%から2.00%に減少

貸し倒れ引当準備金(Net ACL(Allowance for Credit Losses)Build)は14億9600万ドルを戻し入れ。ここしばらくコロナ下で懸念されていた貸倒引当金の確保は取り合えず一段落したのだろうか。

米銀ストレステストで詳しく精査される資本については、先月2020年2回目のストレステスト結果が発表されたばかりでもあり特に問題はなさそう。


市場予測との比較

今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、

  • 2020年第4四半期の収入(Revenues)は164億9900万ドル、市場予想の166億ドルを下回っている
  • 2020年第4四半期の1株あたり純利益(EPS)は2.08ドル、市場予想の1.34ドルを上回っている

となっている。


昨日のシティの株価とその要因

ここまで書いてきた情報を見る限りそれ程悪くはない気がするのだが、決算発表を受けてのシティの実際の株価は、

先に述べた前日の上昇を吹き飛ばす7%近い下落。昨日のダウ工業平均は0.57%、S&P 500が0.72%、NASDAQが0.87%それぞれ下落したが、それに比べても大きい下落。以下その原因を考えてみる。

金融株全体の下落

昨日の金融株を見てみると

概ね低調だった。このうち2021年1月15日に決算発表があったのはシティの他に、JPモルガン・チェース(JPM)とウェルズ・ファーゴ(WFC)。いずれも1株当たり利益が市場予測を上回ったにもかかわらずこの結果(JPモルガンは売上も市場予測を上回っている。シティとウェルズ・ファーゴは売上は市場予測を下回っている)。銀行株の下落の要因について考えてみる。

以下は直近1ヶ月の銀行株とダウ工業平均の比較。

1月初旬のジョージア州米上院選決選投票で民主党が2議席確保したことで、景気刺激策が迅速に遂行される可能性が高くなるとともに、長期金利が上昇したこともあり、銀行株は市場に比べて大きく上昇していた。今回の3行の決算内容を見て利益確定の売りが優勢となった可能性はありそう。また米国市場は来週月曜日がMartin Luther King, Jr. Dayで休場なので、利益確定を加速させたかもしれない。

そして1月14日にバイデン次期大統領が1兆9000億ドル規模の新たな景気対策案を発表したのだが、それが市場の下落に拍車をかけた可能性もある。

アナリストとのカンファレンスコールでの次期CEOの方針説明

昨日1日のシティと同日決算発表のあったJPモルガン及びウェルズ・ファーゴの株価推移を見てみると以下の様になる。

決算資料は米国市場開場前に開示されており、米国市場開始と共に下落したのは3行とも同じ。ただ、シティで目立つのは現地時間12時前に大きく下落していること。

シティのアナリストとのカンファレンスコールは11時から開始であり、多分この内容が株価に影響を及ぼしたのだろう。

昨日のアナリストとのカンファレンスコールは次期(2021年2月より)最高経営責任者(CEO)Jane Fraser氏が出席し、以下の方針・ポイントを説明している。

  1. 競争的優位の確立
  2. 収益性の改善
  3. 米当局から受け取った改善要求への対応

1については、

  • 事業戦略の見直しに着手したばかりで具体的な計画はまだない。しかし(新しい戦略に)合致しないと判断した場合売却を検討することは合理的と考えている

と述べ、非中核事業部門の売却(リストラ)を否定しなかった。またこの方針と関連してなのか、決算発表前の1月13日に富裕層や資産家向けに商品やサービスを提供するウェルスマネジメント部門を一元化する再編を発表している。

2については、

  • 2021年2月に収益目標を発表した上で、目標達成に向けた具体的なプランを5月にまとめる

と述べている。

3については、以前

シティ、課徴金4億ドル支払いと業務改善に同意(2020/10)

で整理した業務改善が未だ足かせとなっている事を再認識させられた(例:改善が確認できるまで新規M&Aに当局の事前承認が必要、など)。

こういった決算資料では言及されなかった、今後のシティに関する情報がアナリストとのカンファレンスコールで説明されたことが、シティの株価が一段と下がった要因だと思われる。個人的にはアナリストとのカンファレンスコールで不透明感が増した気がした。


まとめ

ということで決算発表に伴いシティの株価は大きく下落したのだが、これをどう捉えるか。

1日の下落幅は約7%と非常に大きいが、年明けからの上昇分を考えると上がり過ぎのきらいがあったのでそれが調整されたと考えたい。決算内容自体は特筆すべき悪材料があった訳ではないので過度の不安を持つ必要はあまりない気がする。

ただ、今後の見通しに関してはアナリストとのカンファレンスコールでの次期最高経営責任者Jane Fraser氏の発言にやや不透明がある。先に述べたように2月に収益目標などの発表があるとの事なので、そこである程度不透明感が拭えることを期待したい。

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