はじめに
2025年4月23日(水)には自分の所有銘柄の一つであるフィリップ・モリス(PM)の2025年第1四半期決算発表があった。
前回2025年2月の2024年第四半期決算は市場予想を上回る決算内容に加え、2025年通年見通しの下限さえも市場予想を上回ったこともあって10%を超える上昇となり、
「今後のフィリップ・モリス株だが、同業で自分が保有しているアルトリア・グループ(MO)は紙巻きタバコからの移行が遅々として進んでいない(売上、利益の9割近くが紙巻きタバコ製品)のと比べると、フィリップ・モリスは上手く対応している様に見え、業界全体として紙巻きタバコ製品の出荷量が減少傾向にある中で、無煙事業への移行が進みかつ無煙事業の利益率が高いことを考えると堅調な株価推移が期待できそうな気がする。」
と堅調な株価推移を期待する旨を書いていた。
その後周知の通りトランプ政権の関税政策のため市場は下落の一途をたどっているのだが、その中でフィリップ・モリス株はそこまで大崩れしていない印象もある。
そんな状況の中で、今回の決算結果そして株価はどうなったのか。以下フィリップ・モリスの決算内容を確認し整理しておく。
フィリップ・モリス2025年第1四半期決算概要
以下の情報は、フィリップ・モリス・インターナショナルのサイトより引用・抜粋。
- 2025年第1四半期の純売上(Net Revenues)は93億100万ドルで、為替や買収を除いて前年同期比10.2%増加
- 2025年第1四半期の調整後営業利益(Adjusted Operating income)は37億9000万ドルで、為替や買収を除いて前年同期比16.0%増加
- 2025年第1四半期の調整後希薄化1株あたり純利益(Adjusted Diluted EPS)は1.69ドルで前年同期比12.7%増加、為替の影響を除くと1.76ドルで前年同期比17.3%増加
- 2025年第1四半期の出荷量
- 無煙製品(SFP:Smoke Free Products):前年同期比14.4%増
- 加熱式タバコ製品(HTU:Heated Tobacco Units):前年同期比11.9%増
- 口腔無煙製品(Oral SFP):前年同期比27.2%増
- 電子タバコ(E-vapor):前年同期比100%超増
- タバコ製品(Cigarettes):前年同期比1.1%増
- 売上全体に占める割合はタバコ製品が58%、無煙製品が42%
- 利益全体に占める割合はタバコ製品が56%、無煙製品が44%
2025年通期見通し
2025年通期の見通しは以下の通り。
- Total Shipment Volumes(総出荷量):最大2%増
- SFP(SFP:Smoke-Free Products) Shipment Volumes(無煙製品出荷量):12~14%
- HTU Adj. IMS(Inter Market sales) Growth(加熱式タバコ調整後市場内販売成長率):10~12%
- U.S. ZYN Shipment Volumes(米国ZYN出荷量):8億~8億4000万缶(前回の7億8000万~8億2000万缶から上方修正)
- Net Revenue Growth(既存事業成長率):6~8%
- Adj. OI Growth(調整後営業利益成長率):10.5~12.5%
- Adj. Diluted EPS Growth(調整後希薄化1株あたり利益成長率):10.5~12.5%
- Adj. Diluted EPS Growth, USD(ドルベース調整後希薄化1株あたり利益成長率):12~14%(前回の7~9%から上方修正)
- Adj. Diluted EPS(調整後希薄化1株あたり利益):7.36~7.49ドル(為替の利益0.10ドルを含む)(前回の7.04~7.17ドル(為替の不利益0.22ドルを含む)から上方修正)
2025年第2四半期のAdj. Diluted EPS(調整後希薄化1株あたり利益)は1.80~1.85ドル(為替の利益0.06ドルを含む)。
その他
その他決算発表及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。
- 第1四半期は非常に好調なスタートを切った
- 事業の主要要素すべてが力強く貢献し、既存事業売上高、営業利益、調整後希薄化後EPSは二桁増を達成
- 無煙製品事業
- すべての分野で非常に好調で総粗利益の44%を占めている
- IQOSはEUのフレーバー禁止による年間換算の影響にもかかわらず、日本と欧州の両方で好調な業績を維持し、HTU調整後のIMS成長率は約10%増。年末にかけて2桁成長を見込んでいる
- ZYNは米国で再び力強い成長となり、出荷量は前年比53%増の2億200万缶に達し当初の予想を上回った。これは需要が堅調に推移し、生産能力が3月後半に予定より早く増強されたため
- 電子タバコ分野ではVEEVの第1四半期の業績が目覚ましく、出荷量は前年比で2倍以上となり粗利益率もさらに拡大した
- 可燃製品事業
- 全体的な販売数量の増加に加え、強力な価格設定と継続的なコスト削減策が奏功し堅調な業績を達成
- 今年はまだ始まったばかりで世界経済の見通しには不確実性もいくつかあるが、当社は今年も優れた成長を達成できると確信している
- 2025年の見通しについて
- 予想を上回る利益率など非常に好調な第1四半期であり、年間を通じ優れた成長を達成できると確信している
- したがって、世界的なマクロ経済環境の不確実性が高まっているにもかかわらず、前回決算時に示した為替変動の影響を除いた成長見通しを維持する
- 状況は不安定だが、最近導入または議論されている関税が当社の事業に重大な影響を与えることは現時点では予想していない
- また為替による好影響などを鑑みAdj. Diluted EPS(調整後希薄化1株あたり利益)を7.36~7.49ドルに引き上げる
- Net Revenue Growth(既存事業成長率)は目標レンジの上限付近、Adj. OI Growth(調整後営業利益成長率)は目標を若干上回ると想定
- 財務関連
- レバレッジ削減が引き続き重要な優先事項であり、2026年末までに目標とするレバレッジ比率の約2倍を達成できる見込み
- 質疑応答
- 米国におけるZYNの在庫状況について
- 依然として深刻な在庫切れの状況はあり、第2四半期、そしておそらく第3四半期の一部にも発生する
- しかし第3四半期には深刻な在庫切れは発生しない
- 可燃製品事業と無煙製品事業のマージンについて
- 第1四半期にはマージン拡大という点で明確な実績が見られた
- 無煙製品事業がマージン拡大を牽引していることは明らかで粗利益率は70%を超え、可燃製品事業より5%高い
- この可燃製品事業と無煙製品事業のマージン差異は維持されると考えており、無煙製品事業が可燃製品事業より急速に拡大していることを考えると、マージンに関しては非常に前向きな見通し
- 今年の出荷量について
- 無煙製品事業は年間を通して力強い勢いを維持すると予想
- 可燃製品事業は第1四半期の販売数量がプラスであったが、通年では1桁台前半の減少を見込んでいる
- ZYNの米国における通期出荷量見通しを引き上げたが、全体の通期利益率を据え置いた理由
- ZYNは非常に収益性の高いブランドだが、年間見通しを劇的に変えるほどではない
- 年間ガイダンスを提示する際に考慮するべきシナリオではあるが、まだ1四半期しか経っておらず、この不確実で不安定な環境においては慎重な姿勢を崩すことはできない
- (在庫切れが解消される)今後数ヶ月で、ZYNの普及が徐々に加速すると予想している
- FDA(米食品医薬品局)の人員削減とILUMAの米国展開時期への影響について
- 現在の状況とそれがIQOSにどのような影響を与えるかについては、今のところ断言するには時期尚早であり、報告できることは何もない
- 何が起こるかは分からないが、効率的なプロセスが導入されFDAが6ヶ月後に回答するという従来の予定に従うことを期待している
- 米国におけるZYNの在庫状況について
市場予想との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2025年第1四半期の純売上(Net Revenues)は93億100万ドルで、市場予想の91億2000万ドルを上回っている
- 2025年第1四半期の調整後希薄化1株あたり純利益(Adjusted Diluted EPS)は1.69ドルで、市場予想の1.61ドルを上回っている
となっている。
まとめ
上記の様な決算結果を受けてフィリップ・モリス株は
前日比2.44%の上昇。同日の米国市場が
ハイテク銘柄を中心に大きく上昇したが、業種を考えるとフィリップ・モリス株の上昇はまずまずだろう。市場予想を上回る決算内容に加え、為替の好影響などを加味して調整後希薄化1株あたり利益見通しを引き上げたことが好感されたのだろう。
決算後数日を含めた年初来のフィリップ・モリス株の推移を市場(S&P 500)と比べると
2月の2024年第4四半期決算で大きく上昇した後も関税に揺れる市場とは違い堅調な株価推移となっており、冒頭に「大崩れしていない」としていた自分の印象を上回る好調振りで、今回決算を受けて年初来40%の上昇となっている。
今後のフィリップ・モリス株だが、決算内容や年初来の状況下でも堅調な株価推移をしていることから、余程の事が無い限り期待できそうだ。とはいえConsumer Defensiveセクター銘柄であり、通常この期間でこれ程の上昇をする銘柄ではないので、過度な期待は禁物だろう。