アルトリア(MO)2024年第4四半期決算(2025/1)

はじめに

2025年1月30日(木)には自分が所有しているアルトリア・グループ(MO)の2024年第4四半期決算発表があった。

前回2024年第3四半期決算では売上、EPS共に市場予想を上回ってはいたものの特段の好材料は無かった様に見受けられたが株価は7.84%の大幅上昇。ただし上昇の理由が今一つ判らなかったため

「今後のアルトリア株だが、今回決算を受けての上昇が持続するのかがポイントだろう。決算翌日は市場が上昇していたのに対して下落していることを考えると、決算前までの流れが本当に変わるかどうかは不透明。この年初来高値に近い水準を次回四半期決算まで維持してくれれば上出来だろうか。」

と書いていた。

今回の決算結果及びそれを受けてのアルトリア株はどうだったのか。以下に決算内容を確認し情報を整理しておく。


アルトリア・グループ2024年第4四半期決算概要

以下の内容はアルトリア・グループの企業サイトより引用・抜粋。

  • 2024年第4四半期の売上高(Net Revenues)は59億7400万ドル、前年同期比ほぼ変わらず
  • 2024年第4四半期の物品税控除後の売上高(Revenues net of excise taxes)は51億600万ドル、前年同期比1.6%増
  • 2024年第4四半期の1株当たりの調整後利益(Adjusted diluted EPS)は1.29ドル、前年同期比9.3%増

  • 2024年第4四半期のタバコ製品の出荷量は前年同期比8.6%の減少

  • 2024年第4四半期の売上高(Net Revenues)に占める割合
    • タバコ製品(紙巻きタバコ、葉巻):88.10%
    • オーラルタバコ製品(電子タバコ、経口タバコなど):11.58%
    • その他:0.32%

  • 2024年第4四半期の営業損益(Operating Companies Income(Loss))に占める割合
    • タバコ製品(紙巻きタバコ、葉巻):88.88%
    • オーラルタバコ製品(電子タバコ、嗅ぎタバコなど):15.26%
    • その他:‐4.14%

2025年通期見通し

2025年通期の見通しは以下の通り。

  • 2025年通期の調整済希薄化後EPS(Adjusted Diluted EPS)見通し:5.22~5.37ドル
  • 2024年実績(5.12ドル)比成長率:2%~5%

その他

その他決算発表及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。

  • 事業環境とニコチン市場に関する当社の見解
    • 米国におけるタバコの害軽減の可能性は大きく、消費者はこれまで以上に速いペースで煙のない代替品を求めている
      • 過去1年間で、電子タバコと経口タバコのカテゴリーにおける成人消費者の推定数は約2800万人に増加し、成人喫煙者人口とほぼ同数になった
      • 煙のない代替品はニコチン市場全体の約45%を占め、前年より5%ポイント増加したと推定
      • ニコチンの総量では業界換算ニコチン量は2年連続で増加し、過去5年間の年平均成長率は約2%
      • 未成年者の喫煙率は過去最低水準
    • しかし違法な使い捨て電子ベイパー製品の広範な入手可能性は、タバコの危害軽減の長期的な機会を危険にさらしている
      • 電子ベイパーのカテゴリーは2024年に約30%成長したが、違法製品はカテゴリーの60%以上を占めると推定
      • 当社のデータによると、使い捨て電子タバコユーザー増加の約40%は、これまでタバコを吸ったことのないユーザーによるもの
      • 米国には2つの電子ベイパー市場が存在することが明らか
        • 1つは規制の枠組み内で活動するユーザー向け
        • もう1つは規則に著しく違反して回避するユーザー向け
      • 簡単に言えば規制構造が崩壊しており、タバコ市場は議会の意図どおりに機能していないと当社は考えている
      • FDA(米食品医薬局)は合法的な製品で消費者の需要を満たすのに十分な量の無煙製品を認可しておらず、規制当局は悪質な行為者を責任追及していない
      • 違法電子ベイパー市場は当社の予想を超える規模にまで成長しており、この動向により、2028年の無煙タバコの販売量と収益の目標を達成する能力、関連して設定したNJOYの財務目標を達成する能力も損なわれると考えている
      • そのため我々は(2023年3月のInvestor Updateで発表した)無煙製品とNJOYのターゲットを再評価しており、違法電子タバコ市場がどのように発展するかについてより明確になった時点で更新情報を提供する予定
      • 2028年の企業目標の更新は、当社の財務目標や長期成長目標には影響しない
      • FDAはより多くのPMTAを認可して消費者向けの合法的な代替品市場を確立し、他の連邦機関と提携して違法な製品の国内流入を防ぐことで、市場の秩序を回復できると考えている
  • NJOY(電子タバコ)関連
    • 第4四半期のNJOY消耗品数量は15%以上増加して1280万個、通年ではは4660万個
    • 第4四半期のNJOYデバイス出荷量は22%以上増加して110万個、通年では500万個
    • 第4四半期のNJOY消耗品小売シェアは6.4ポイントで、前年同期比2.8ポイント増加、前四半期比0.2ポイント増加し、小売価格は20%以上上昇
    • 昨日、ITC(米国国際貿易委員会) はJUULのNJOYに対する訴訟で最終決定を下し、この訴訟における4つの特許に関してJUULの主張に同意した
      • 我々はITCの決定に同意できず、JUULの特許は無効でありNJOYはこれらの特許を侵害していないと引き続き考えている
      • ITCの決定は現在、米国通商代表部による60日間の審査期間に入っており、同事務所はITCの決定を拒否する可能性がある
  • 加熱式タバコ関連
    • JTとの合弁会社であるHorizo​​nを通じて、加熱式タバコ製品を米国に導入するための準備を進めている
    • 2025年半ばに加熱式タバコ製品の申請をFDAに提出する予定
  • タバコ事業関連
    • 厳しい外部環境の中、喫煙製品の調整後利益は第4四半期に5.5%、通年で2%増加
    • 国内の紙巻きタバコ販売量は第4四半期で8.8%、通年で10.2%減少
    • 業界レベルでは、調整後の国内紙巻きタバコ販売量は第4四半期に8%、通年で9%減少したと推定
    • ニコチン業界の変化のペースは過去2年間で大きく変化し、主に無煙製品を通じてニコチン製品カテゴリーに参入する成人消費者が増加している
  • 財務関連
    • 第4四半期の調整後株式利益は1億5900万ドルで前年比8.1%減
      • これは昨年のABI投資の一部売却により、前年同期と比較して所有持分が減少したことによる影響を反映している
    • 12月31日時点の総負債対EBITDA比率は2.1倍で、約2倍という当社の目標と一致
    • 2024年は承認済みの自社株買いプログラムも完了し、7350万株を34億ドルで買い戻し
      • これは過去 20 年間で最大の年間自社株買い
    • 2025年に向けて取締役会が新たな10億ドルの自社株買いプログラムを承認
      • このプログラムは2025年末までに完了する予定
  • 質疑応答
    • 成人タバコ消費者の可処分所得に対する圧力と傾向について
      • インフレの累積的な影響が消費者に圧力を及ぼしている
      • 2025年にそれがどうなるかはわからないが、示したガイダンスには満足
      • 消費者は代替品が見つかれば乗り換える用意があり、我々に必要なのは合法的な製品を認可し、違法な製品を取り締まる規制システムだけ
    • NJOY訴訟関連の詳細について
      • 弊社のエンジニアたちは、ITCの決定に違反しないようにするための最終的な変更に精力的に取り組んでいる
    • 1月下旬に発表されたFDAによるニコチン規制提案について
      • 技術的に完全に実現可能だと考えており、FDAに詳細なコメントを提出済み
      • 将来の危害軽減が優先されるべきだと本当に考えている
      • 一歩引いてこの規制が何のために作られたか考えてみると、違法な製品を取り締まることが目的
      • 合法的な製品の認可と違法な製品の取り締まりを強化する必要がある
    • 関税政策の不確実性が与える影響について(NJOYの生産は中国で行われていると認識しているのだが)
      • 中国へ関税が課されたとしても影響は限定的
      • 中国国外に代替生産施設があり、それを利用する

市場予測との比較

今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、

  • 2024年第4四半期の物品税控除後の売上高(Revenues net of excise taxes)は51億600万ドル、市場予想の50億5000万ドルを上回っている
  • 2024年第4四半期の1株当たりの調整後利益(Adjusted diluted EPS)は1.29ドル、市場予想と同じ
  • 2025年通期の調整済希薄化後EPS(Adjusted Diluted EPS)見通しは5.22~5.37ドル、市場予想は5.35ドル

となっている。


まとめ

上記の様な決算発表を受けてアルトリア・グループの株価は

前日比2.13%の下落。同日の米国市場が

小幅ながらも上昇しているのと比べると、アルトリア株の下落は目立つ。

四半期決算は売上が市場予想を上回り調整後EPSも一致したものの、違法電子タバコの蔓延がアルトリアの業績を損なっていることが嫌忌されたのだろう(実際カンファレンスコール中では説明、質疑のそこかしこで違法電子タバコに言及していた)。

決算後翌日を含めたアルトリア株の過去1年の推移を市場(S&P 500)と比べてみると

前回決算での上昇以降11月末までは上昇傾向が続いたのだが、その後下落傾向に転じ前回決算発表前に近い水準まで株価落ち込んでいた。1月になって下げ止まったものの回復傾向とは言えない状況で今回の決算を迎えまた下落となってしまった。決算翌日に続落とならなかったのが救い。

今後のアルトリア株だが、決算内容を見る限りでは次回決算まではあまり上昇に期待は出来ないだろう。次回四半期決算の内容が改善されるか、カンファレンスコールでやり玉に挙げていた違法電子タバコに対する施策などが無ければ厳しい状況が続くのだろう。これ以上下げ幅が拡大しないことを願いたい。


補記

2025年2月にはやはり自分が保有しているタバコ銘柄のフィリップ・モリス(PM)が決算を発表したのだが、フィリップ・モリスは10%を超える上昇。その理由の一つとして旧来型タバコ製品からの移行が順調に進んでいる(総売上全体の40%、調整後粗利益の42%が無煙事業)のに対してアルトリアは紙巻きタバコが上述の様に売上、利益で約9割を占めており、業界全体で紙巻きタバコの出荷量が減少し、利益率が高い無煙事業の割合が伸び悩んでいることを考えるとアルトリア・グループは中長期的に不安が大きい。何とか電子タバコのNJOYやJTとの合弁会社であるHorizo​​nによる加熱式タバコが上手く行ってくれるといいのだが。

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