はじめに
前回2022年6月のFOMCでは27年振りに75bpの大幅利上げが決定されたが、今回2022年7月のFOMCでは6月と同じく75bpの利上げが予想される一方で、FOMC後のパウエル議長の発言次第では市場がどう動くか不透明とされていた。
実際のFOMC結果及びパウエル議長の発言はどうだったのか。そしてそれらがどの様に米国市場に影響を及ぼしたかについて確認し整理しておく。
2022年7月27、28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)結果及びパウエル議長の発言まとめ
FOMC会合結果
以下は米連邦準備制度理事会(FRB)のサイトで現地時間14時に公開されたFederal Reserve issues FOMC statement(FOMC声明)より引用・抜粋。
- Recent indicators of spending and production have softened. Nonetheless, job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher food and energy prices, and broader price pressures.
最近の支出と生産の指標は軟化しています。それにもかかわらず、ここ数ヶ月の雇用増加は堅調であり、失業率は低いままです。パンデミックに関連する需給の不均衡、食料とエネルギーの価格の上昇、およびより広範な価格圧力を反映してインフレは引き続き上昇しています。
全文は4パラグラフあるのだが、上記第1パラグラフ以外は前回とほぼ同じでフェデラルファンド金利の目標範囲2.25%~2.5%とし前回から75bp引き上げている点と、世界経済に関するインフレリスクで前回はロシア/ウクライナ関連に加えて中国でのCOVID関連ロックダウンに触れていたが、今回は中国のCOVIDに関する言及が無くなっている点が異なっている。
パウエル議長の発言
以下はFOMC会合結果開示後のパウエル議長の会見における主な発言より。
- 次の会合で異例に大幅な利上げをもう一度行うことも適切となり得る
- 利上げペースの判断は今から次回会合までのデータや経済見通し次第
- 以前のように(利上げの)明確なガイダンスを示すのでなく、会合ごとに判断する時期となった
- 金利がより抑制的な水準となれば、利上げペースを減速させることが適切
- 経済はしばしば予想外の動きとなり、さらなるサプライズが待ち受けている可能性もある
- 米経済が景気後退に陥っているとは考えていない
FOMC会合結果及びパウエル議長の発言を受けての米国市場
上記FOMC会合結果及びパウエル議長の発言を受けて米国市場にどの様な動きがあったか確認してみる。
米国主要3市場
S&P 500、ダウ工業平均、NASDAQ総合の昨日の動きは以下の通り。
元々昨日の米国市場はマイクロソフト(MSFT)及びグーグルの親会社アルファベット(GOOGL)が決算を受けて大幅上昇していることもあり、開場直後から上昇基調。ただ上記推移を見て分かる通り、FOMC会合結果及びパウエル議長の発言があった頃から更に一段高となっている。
S&P 500の日中推移をよく見てみると
FOMC結果が開示された14時からはあまり変動がなく、パウエル議長の会見があった14時半から一段高となっていることが分かる。という事はFOMC結果はあまり材料視されずパウエル議長の発言に何らかの上昇要因があったという事になる。
報道を見た感じだと、パウエル議長が自動的に再利上げが必要だとはせず、政策の方向性についてのガイダンスを会合ごとに提供、今後の指針をデータに委ねるとしたことが市場に安心感をもたらしたようだ。
米国債長期金利(10年債)
米国債長期金利(10年債)の利回りの日中変化は以下の通り。
やはりFOMC結果が開示された14時からはあまり変動がなく、パウエル議長の会見があった14時半から一瞬上昇したものの会見が進むにつれて利回りが低下しており、S&P 500とは逆の動きとなっている。
ここ最近はJPモルガンの決算等で少し言及した2年債と10年債の利回りが逆転する逆イールド現象が続いているのだが、昨日はその差が少し狭まっている。
まとめ
2022年7月のFOMC会合結果とパウエル議長の発言を確認し、それらの市場への影響を確認してみた。
個人的には昨日は上述したマイクロソフト(MSFT)及びグーグルの親会社アルファベット(GOOGL)が決算を受けて大幅上昇しており、その決算内容が市場に及ぼした影響が大きく、FOMC会合結果とパウエル議長発言の影響は限定的だったようにも思う。それでも発表を受けて市場が崩れずに一段高となったのは、市場がFRBの決定に対して一定の評価をしたという事なのだろう。
次回のFOMC会合は9月20、21日に行われる予定だが、それまでにどの程度米国経済が景気後退に陥らずにインフレを緩和できるのか、各種データやFRBの動向等に気を付けておくことにしたい。