2026年7月FOMC結果とウォーシュ議長発言(2026/7)

はじめに

米現地時間2026年7月28日(火)、29日(水)に2026年5回目のFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)が開催された。

前回2026年6月16、17日のFOMC会合は政策金利は市場予想通り据え置きだったものの、半期に一度の経済予測要旨では年内の利上げが予想されたこと、FOMC声明及びウォーシュ議長の会見でもインフレ抑制(つまり利上げ)が強調されていたことで米国主要3市場は

と大きく下落していた。

その後2026年7月発表の米雇用統計が市場予想を下回った(それまでは3ヶ月連続で市場予想を上回った)ことで、FRBが利上げをする可能性がやや後退し、7月半ばに発表された6月の米消費者物価指数(CPI)も市場予想を下回ったことで、FRBは利上げを急がないのではという見方が市場の主流となっているが、中東情勢の緊迫化もありCPI発表後よりは利上げの確率は高まっている模様。今回FOMC会合前日のCMEフェドウォッチツールでは9月のFOMCでの利上げが有力視されているが、7月FOMCでの利上げ可能性も約30%とそれなりにあった。

以下、今回のFOMC結果、そしてウォーシュ議長の会見はどういう内容となったのか、またそれらを受けて市場はどう反応したのかを確認しておく。


2026年7月28日、29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)結果及びウォーシュ議長の発言まとめ

FOMC会合結果

以下は米連邦準備制度理事会(FRB)のサイトで現地時間14時に公開されたFederal Reserve issues FOMC statement(FOMC声明)より引用・抜粋。

今回(2026年7月のFOMC statement概要)

前回は後述。前回との違いは太字で表す。

  • 連邦公開市場委員会は、9対3の賛成多数で以下の声明の公表を承認した
  • 委員会は連邦準備制度の二重責務(dual mandate)を支持するため、フェデラルファンド金利の目標レンジを3.5~3.75%に維持することを決定した。委員会は、銀行システムにおける十分な準備預金の維持という方針を再確認した
  • 中東紛争に起因する不確実性の高まりにもかかわらず、経済活動は堅調に拡大している。生産性の伸びと設備投資は力強く、雇用者数の増加は労働力人口の増加に追いついており、失業率はほとんど変化していない
  • インフレ率は委員会が目標とする2%に対し依然として高い水準にある。これは、エネルギーを含む一部のセクターにおける価格上昇を引き起こした供給ショックを部分的に反映したものである。委員会は物価安定を実現する
  • 今回の金融政策の決定に反対したのは、Beth M. Hammack、Neel Kashkari、Lorie K. Loganの各氏であり、彼らは今回の会合でフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0.25%ポイント引き上げることを支持していた

前回(2026年6月のFOMC statement概要)

  • 連邦公開市場委員会は、12対0の賛成多数で以下の声明の公表を承認した
  • 委員会は連邦準備制度の二重責務(dual mandate)を支持するため、フェデラルファンド金利の目標レンジを3.5~3.75%に維持することを決定した。委員会は、銀行システムにおける十分な準備預金の維持という方針を再確認した
  • 中東紛争に起因する不確実性の高まりにもかかわらず、経済活動は堅調に拡大している。生産性の伸びと設備投資は力強く、雇用者数の増加は労働力人口の増加に追いついており、失業率はほとんど変化していない
  • インフレ率は委員会が目標とする2%に対し依然として高い水準にある。これは、エネルギーを含む一部のセクターにおける価格上昇を引き起こした供給ショックを部分的に反映したものである。委員会は物価安定を実現する

前回とほとんど内容が変わらず、変更点はFOMC声明冒頭の承認内容(12:0から9:3に)と、誰がどう反対したかの内訳のみ。

ウォーシュ議長の発言

以下はFOMC会合結果開示後のウォーシュ議長の会見における主な発言より。

  • 議論は協調的なものだった
  • 経済は目覚ましい底堅さを示しており、FOMCは物価安定の実現に向けて引き続き断固たる姿勢を維持するが、FOMCは予測の提示を控えている
  • 5年間続く高インフレにより、FRBの暗黙の目標が2%を上回っているのではないかとの印象が根付いており、それを払拭するのは難しい
  • こうした状況が(自身がFRB議長に就任してからの)9週間という期間に、物価上昇のやや鈍化が示された単月の経済指標だけで解消することはないと理解している
  • 改めて強調するが、事実上のインフレ目標などは存在しない。目標は1つしか存在せず、その目標は2%だ
  • FRBはインフレ率を2%目標へ戻す取り組みを緩めることはない
  • 名目金利、実質金利ともに大幅に上昇しており、前回FOMC会合以降に生じた上昇の一部は、ここ数十年で最も顕著なものだった
  • 市場は今後も適切と判断する方向と規模で反応し続けるだろうし、これはポジティブなことだと見ている
  • FOMCの決定は極めて重要な意味を持つと強調したい。必要、かつ適切と判断されれば、行動をためらうことはない
  • ハイテク分野の設備投資の急増は目覚ましいものだが、だからといって連邦準備制度理事会(FRB)の役割が楽になるわけではない
  • AI関連のハイテク機器およびソフトウェア分野では、最新のデータによると、4四半期連続で約20%の成長率を示し、これは製造業の生産高の健全な勢いを維持するのに役立っていまるが、供給面への影響の正確な時期と規模を予測するのは依然として困難
  • 活発な議論は4つの論点を中心に行われた
    • 1:5年に及ぶ高インフレ
    • 2:最近の経済ショック
    • 3:ショックに起因する物価上昇
    • 4:金融政策の手段と戦略
  • 質疑応答
    • FOMCにおける議論について
      • 私は家族同士の活発な争い(good family fight)を望んだが、まさにその通りになった
      • より幅広い議論の結果、難しい問題については多くの点で意見が一致した
      • 経済ショックがどの程度インフレを拡大させているのかなど、衝撃下でのインフレの基調的なダイナミクスを理解することに焦点の多くを当てた
      • 我々はこれらの経済ショックを真剣に受け止めており、それらを無視して大したことがないと言っているわけではない
      • むしろ、これらのショックがどの程度の影響力を持つのかを理解しようとしている
      • 本日の決定は、私が想像し得る限り惰性とはかけ離れたものだった
    • インフレについて
      • インフレに関し心強いデータがいくつか出ており、しばらく状況を注視していくが、単一のデータに過度に依存してはいない
      • インフレ率2%の達成に向け、米個人消費支出(PCE)価格指数だけでなく幅広いインフレ関連データを注視している
      • 金利は現時点で42日前(前回FOMC)よりも高い
      • 我々は2%のインフレ目標を達成する
    • 金利政策について
      • FRBの二大責務(「最大限の雇用実現」、「物価の安定」)は二者択一ではないと考える
      • 雇用に関する責務については現時点で順調に進んでいる
      • 危機的状況下で将来を見据えた指針を示すことは賢明だが、平穏な時期にはそうすべきでない
      • いかなる中央銀行も、安定した雇用と基調インフレの上昇が確認されれば、金融政策を引き締める傾向が強くなる
      • 我々が今回行ったこと(政策金利据え置き)を 一時停止(ポーズ)のようなものとしては一切表現しない。我々が行ったのは、経済状況の厳格な検証(rigorous review)、山積する困難な大問題についての検証であり、それらの問題を今後解決していくために、我々自身が果たすべき宿題の検証であると表現する
    • FOMC声明後の記者会見について
      • 今年は記者会見を必ず開催するつもりだ
    • 市場のシグナルについて
      • 市場のシグナルを注視しているが、干渉しないよう努める。市場の解釈は完璧ではない
      • 市場が我々やドットプロットに反応するのではなく、リアルタイムの事象に反応していることに安心している
      • 我々は市場の動向に縛られたり、市場の動きをそのまま鵜呑みにしたりするつもりはないが、市場は非常に優れた情報源になり得ることを理解しており、それは有益だと考えている
    • 経済情勢について
      • 経済活動は堅調、労働市場も堅調かつ安定で、米債券市場もそれを示唆しているようだ
    • (8月27~29日の)ジャクソンホール会議について
      • ジャクソンホールでの演説内容については検討すら始めていないが、ジャクソンホールで重要な問題を提起したい
      • ジャクソンホール前にタスクフォースと対話する。それがジャクソンホールでの私の発言に影響を与えるかもしれないし、与えないかもしれない

FOMC会合結果及びウォーシュ議長の発言を受けての市場

米国主要3株式指数

米国市場開場前にトランプ大統領がFOXニュースとのインタビューで「(イランを)激しく攻撃するつもりだ」などと発言(一方で「(イランに)対話を続けさせるつもりだ」とも発言しているが)したこともあって、開場直後から下落してスタート。FOMCで政策金利が据え置きとなったことで一時持ち直す局面もあったが、ウォーシュ議長の会見が進むにつれて下落に転じ、下げ幅を拡大して取引を終えている。

日中のS&P 500の動きを詳しく見てみると

14時の政策金利据え置き発表で一時上昇。14:30からのウォーシュ議長の会見が始まると前日比上昇となる局面もあったのだが、15時から急に下落傾向となり、その下落幅を拡大しているのが判る。

何が理由だったかを調べてみると、確証はないのだが時間的に今回の金利据え置きに関する質疑が契機となった模様。より正確な記者の質問とウォーシュ議長の回答は

質問:市場や一般の間では、今回の据え置きを「利上げの一時停止(ポーズ)」と捉える向きが多いですが、今回の決定をそのようにキャラクター付けして良いのでしょうか?それとも追加利上げはまだ選択肢にありますか?

回答:私は、我々が今回行ったことを 「一時停止(ポーズ)」のようなものとしては一切表現しない。我々が行ったのは、経済状況の厳格な検証(rigorous review)だ。山積する困難な大問題についての検証であり、それらの問題を今後解決していくために、我々自身が果たすべき宿題の検証であると表現する

であり、この質疑がそれまでのFOMC声明やウォーシュ議長の会見で見られた利上げにやや慎重な姿勢ではなく、次回FOMCでの利上げ可能性が高いと受け止められたことが原因と思われる。

実際CMEのフェドウォッチツールでの次回2026年9月FOMCでの政策金利確率は

  • FOMC前日の2026年9月FOMCでの政策金利確率
    • 3.50%~3.75%(金利据え置き):約45%
    • 3.75%~4.00%(0.25%利上げ):約55%
  • FOMC後の2026年9月FOMCでの政策金利確率
    • 3.50%~3.75%(金利据え置き):約28%
    • 3.75%~4.00%(0.25%利上げ):約72%

と前日の利上げがやや優勢から、FOMC後には利上げが70%越えで有力視される状況となっている。

米国10年債

FOMC声明及び経済予測要旨が発表された米国東部夏時間14:00は上記チャートのCST(米国中部時間)では13:00。

取引開始前のトランプ大統領のFOXニュースとのインタビューを受けて、米イランの戦闘再開による原油価格の上昇からインフレ圧力が再び強まるとの見方のため、利回りは前日比上昇。その後はFOMC待ちのためか緩やかな動きが続いていたが、FOMC声明発表でやや激しい動き。そしてウォーシュ議長の会見が始まると利回りが低下傾向となったが、取引終了直前にやや利回りは上昇となっている。ちなみに株式市場の流れが大きく変わった米東部夏時間15時が債券市場の取引終了時間のため、それはチャートには反映されていない。

ドル円為替

FOMC声明及び経済予測要旨が発表された米国東部夏時間14:00は上記チャートのGMT(英国標準時)+1では19:00。

FOMC発表前は1ドル=164円を伺う上昇傾向で推移していたが、FOMC声明の発表で金利がス置かれたことから1ドル=163円台半ばへとドル安に。そしてウォーシュ議長の会見初期段階でもドル安は進み1ドル=163.2円台となる局面もあったが、その後は1ドル=163.3~5円程度で方向感に欠ける動きとなった。

その後日本市場が本格化すると1ドル=163円半ばを中心にした動きが続いたのだが、日本時間の30日18:00頃からドル安が顕著になり、1ドル=162円台後半での推移となっている(急にドル安になった理由は今の所不明だが介入ではなさそう。介入への警戒感もあるのだろうか)。


まとめ

以上FOMC声明及びウォーシュ議長の会見を受けての市場の動きについて整理してみた。

今回会合での利上げ可能性もあったが結果的には金利据え置き(ただし票決は9:3で割れた)となり、米国株式市場は一時上昇傾向となったものの、その後のウォーシュ議長の会見で次回9月のFOMCでの利上げが有力視される様になると、下落傾向に転じ、中東情勢なども相まって最終的には大きく下落することとなった。債券市場は株式市場が下落に転じるタイミングで取引を終了したため、当日の変動は限定的。ドル円為替はまず政策金利が据え置きだったことでドル安に。そしてウォーシュ議長の会見で利上げが有力となったことから日米金利差拡大を睨んでドル高となるかとも思われたのだが、実際にはドル安傾向になった。米国株式下落に伴い比較的安全と思われる円買いが進んだ可能性がある。

今後は2026年9月のFOMCでの利上げが有力視される中で、それまでの経済指標がどの様な結果となるかに注目が集まるだろう。その内容・結果次第では9月FOMCにおける政策金利見通しが変わる可能性もあり、それに伴い市場の急変もあり得る。

また8月下旬のジャクソンホール会議で、ウォーシュFRB議長がどういう発言をするかにも要注目。会見ではまだ内容は未定としながらも、重要な問題を提起したいと発言しており、その内容次第では市場に大きな影響を及ぼす可能性もある。

不透明な中東情勢、それに伴い安定しない経済指標結果など、FRBの政策金利決定は難しい状況にあるが、市場に悪影響を与えずにインフレ抑制、雇用安定というFRBの二大責務を達成してもらいたいものだ。

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