米ウ首脳会談と米PCE発表当日の米市場の動き(2025/2)

はじめに

米現地時間2025年2月28日(金)には掲題の通り米国とウクライナの首脳会談が行われ、見込みではウクライナの鉱物資源の権益に関する合意文書に署名がなされる予定だったのだが決裂している。

そして同日にはそれ以外にも、米商務省が2025年1月の個人消費支出(PCE:Personal Consumption Expenditures)価格指数を発表している。

これらの内容を確認しておくと共に、それらが同日の米国市場にどのような影響を及ぼしたのかについて整理しておく。


2025年2月28日の米国とウクライナの首脳会談決裂

以下は各種報道より引用・抜粋。事実だけを簡単に。

  • 2月26日にウクライナ政府は米国との鉱物取引の条件に合意したことを発表
    • ウクライナが有する鉱物資源資産および関連インフラから将来的に得られる全ての収益の50%を、ウクライナ、米両国が新たに創設し共同管理する基金に拠出する計画。ただしウクライナの同意なしに基金の運営に関する決定は下せない
    • 合意案にはウクライナが求める米国による安全の保証は盛り込まれず
    • 細部については今後
  • 2月28日にホワイトハウスでアメリカのトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が会談
    • 交渉は決裂し、予定されていたウクライナの鉱物資源権益に関する合意文書への署名はなされず
    • また会談後に予定されていた共同会見も中止

2025年2月28日米商務省発表の2025年1月個人消費支出(PCE)価格指数

以下は米商務省のサイトより引用・抜粋(発表は米東部時間8:30)。

  • 2025年1月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年比2.5%上昇、市場予想も2.5%の上昇
  • 変動の大きい食品及びエネルギーを除いた2025年1月の個人消費支出(PCE)コア価格指数は前年比2.6%上昇、市場予想も2.6%の上昇

また物価の瞬間風速を示すとされる前月比では

  • 2025年1月の個人消費支出(PCE)価格指数は前月比0.5%減、市場予想は0.1%減
  • 変動の大きい食品及びエネルギーを除いた2025年1月の個人消費支出(PCE)コア価格指数は前月比0.3%上昇、市場予想も0.3%の上昇

となっている。


同日の市場の動き

米国株式市場

主要3市場はいずれも前日比で1%を超える上昇で取引を終えている。

S&P 500の日中の動きを見てみると

開場直後は前日比下落して始まったものの、最近の経済指標がインフレ圧力が強いことを示すものが多かっただけに、開場前に発表されたPCEが概ね市場予想通りだったこともあってかやや上昇。その後は米ウクライナ首脳会談を控えてか小幅な動き。そして米東部時間11:30過ぎから始まった米ウクライナ首脳会談が進み、交渉が決裂したことで下落に転じ一時前日比マイナスとなったが、その後は何故か上昇し、取引終了直前にかけて更に上げ幅を上昇して終えている。

米国10年債

PCEが発表された米国東部標準時8:30は上記チャートのCST(米国中部標準時)では7:30。

利回り低下で取引が始まりPCEを受けて一瞬利回りが上昇したものの概ね低下傾向。その後米ウクライナ首脳会談の不調を受けて利回りは低下したものの一時的なものに留まり再び上昇。しかし時間経過と共に利回りは徐々に低下して取引を終えている。

ドル円為替

PCEの発表があった米ET8:30は上記ドル円チャートのGMT13:30。

PCE発表直後はドル高となり一瞬1ドル=151円台に迫ったが一時的なものに留まり発表前と同水準へ戻る。その後方向感が定まらない動いだったが米ウクライナ首脳会談が不調に終わったことでGMT16:00位からドル安傾向へ。しかしその後は方向感に乏しい動きながらもややドル高となって先週の取引を終えている。


まとめ

以上米PCE発表と米ウクライナ首脳会談を受けての市場の動きについて確認してみたが、予想外だったのは米株式市場が前日比で大きく上昇して取引を終えた点。

ほぼ予想通りのPCE結果、そして米ウクライナ首脳会談の決裂を受けて、特に取引終盤にかけて株式市場が上昇したのか理由は不明。考えられるのはメキシコが米国との関税をめぐる交渉で譲歩を検討しているとの報道があった事や、2月28日と月末だったため機関投資家のリバランスで買戻しが入ったのかもしれない、という程度。

そして米ウクライナ首脳会談の決裂が米国市場に思ったよりも影響を与えなかった点も意外の感がある。株式、債券、ドル円為替のいずれも首脳会談を受けて変動はしたのだが、一時的なものに留まっている。米国市場は思ったよりも冷静に対応したということなのだろうか。

結果的に自分の資産にとっては米国株高、ドル円為替もややドル高と有利に働いた2025年2月28日のイベント通過だった訳だが、今後を考えると不安は解消されていない。米ウクライナ首脳会談が不調に終わったことを受けてヨーロッパ市場が月曜日にどういう反応をするか(米ウクライナ首脳会談はヨーロッパ主要市場閉場後)、ヨーロッパ市場を受けては思ったよりも変動が限定的だった米国市場がどう動くか。そもそも決裂した米ウクライナ首脳会談を受けてウクライナ情勢はどうなってしまうのかなど予断を許さない状況は続いている。

そしてそれとは別に1ヶ月延期されたカナダ、メキシコへの関税は3月4日に発動するのか。また中国への関税は2月4日の10%からさらに10%上乗せされるのかといったイベントも控えており、米国市場がどう動くかはますます予想がつかなくなっている気がする。

ここ最近何度も書いている様な気がするが、気の休まらない日々は一体いつまで続くのだろうか・・。

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