はじめに
2024年10月23日(水)には自分の所有銘柄であるGEベルノバ(GEV)の2024年第3四半期決算発表があった。
前回の第2四半期決算時には決算内容自体は悪くなかった気がしたのだが、決算前にあった北米での風力発電プロジェクトでのタービンブレード事故がGEベルノバの製造上の欠陥であったことが影響してか市場も大幅下落だったのだがGEVはそれ以上の4.45%の下落。しかし決算後に複数の証券会社/アナリストが目標株価を引き上げて持ち直しており、
「風力発電プロジェクトにおける事故の影響は短期的なものであり、それにもかかわらず見通しを上方修正しているのを評価している点が共通している。これらアナリストの見解/GEベルノバの経営陣の見通しが正しく、今後も堅調な業績/株価を維持してくれることを望みたい。」
と書いていた。
そしてその後は9月20日に
2024年第2四半期決算以降GEベルノバ株が好調(2024/9)
でまとめた通り、9月12日に最高経営責任者(CEO)のScott Strazik氏のポジティブな講演内容もあってか、2024年第2四半期決算を含めた過去3ヶ月のGEベルノバ株はS&P 500の4.39%上昇に対して37.97%の上昇と予想以上の好パフォーマンス。流石に上がり過ぎの感が自分はしており、
「個人的にはやはり未だ原因が特定されていないヴィンヤード風力発電プロジェクトのブレード破損原因の影響/風力事業の赤字が気になるのだが、それを電力/電化事業が補って余りあるとアナリスト及び市場は見ているのだろう。アナリスト/市場の見方が正しく自分が考えすぎであって、ここ最近の状況が続いてくれることを期待したい(でも流石に短期間で株価が上昇し過ぎている気がする・・・)。」
としていたのだが、今回のGEベルノバの決算内容そしてそれを受けての株価はどうなったか。以下に内容を確認し整理しておく。
2024年第3四半期決算概要
以下の内容は、GEベルノバの企業サイトより引用・抜粋。
- 2024年第3四半期の総売上高(Total Revenues)は89億1300万ドル、前年同期は82億5300万ドルで前年同期比8%の増加
- 2024年第3四半期の調整後EBITDA(Adjusted EBITDA)は2億4300万ドル、前年同期は2億500万ドル
- 2024年第3四半期のフリーキャッシュフロー(純現金収支・Free Cash Flow)は9億6800万ドル、前年同期は5200万ドル
事業部別業績
【Power(電力事業)】
- 受注(Orders):52億200万ドルで前年同期比28%増加
- 売上(Revenues):42億600万ドルで前年同期比8%増加
- EBITDA(Segment EBITDA):4億9900万ドルで前年同期比2億1900万ドル増加
- EBITDAマージン(Segment EBITDA margin):11.9%で前年同期比4.7%増加
【Wind(風力発電事業)】
- 受注(Orders):17億4700万ドルで前年同期比19%減少
- 売上(Revenues):28億9100万ドルで前年同期とほぼ変わらず
- EBITDA(Segment EBITDA):3億1700万ドルの損失で前年同期は2億2500万ドルの損失
- EBITDAマージン(Segment EBITDA margin):11.0%の損失で前年同期は7.8%の損失
【Electrification(電化事業)】
- 受注(Orders):25億1000万ドルで前年同期比17%増加
- 売上(Revenues):19億2800万ドルで前年同期比22%増加
- EBITDA(Segment EBITDA):2億100万ドルで前年同期は6500万ドル
- EBITDAマージン(Segment EBITDA margin):10.4%で前年同期比6.3%増加
2024年見通し
2024年の通期見通しは以下の通り。
- 売上(Revenue):340億~350億ドル(前回と変わらず)
- 調整後EBITDAマージン(Adj. EBITDA margin):5%~7%(前回と変わらず)
- Free cash flow:13億~17億ドル(前回と変わらず)
その他
その他決算発表及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。
- 2024年9月に初めて持続可能性レポート(Sustainability Report)を発行
- このレポートの目的は、当社が事業を展開するコミュニティが繁栄し、同時に当社自身の事業で毎年資源の節約が進むことを保証しながら世界の電化と脱炭素化の進捗状況を示す指標を提供すること
- 各セグメントの状況
- Power(電力事業)
- ガス電力が主導する電力事業は、2桁の受注増、好調な売上でEBITDA、EBITDAマージン共に拡大
- 2024年第4四半期が最大の機器受注四半期になると予想
- 機器需要の増加に加え、インストールベースでのサービス需要が大幅に増加している。顧客がプラントの生産能力とパフォーマンスの向上を目指すにつれてアップグレードの需要が高まり、サービスの成長が促進されると予想
- Electrification(電化事業)
- 当社で最も急成長している分野で、販売量と価格の上昇により四半期の売上が 22%増加
- 過去2年間で、当社の機器の受注残は大幅に増加し収益性も向上している。受注残は2022年末の60億ドル強から2024年末には3倍以上に増加する見込み
- 今四半期、電化事業は初めて2桁のEBITDAマージンを達成した。需要動向と遂行力の向上によりマージン拡大が加速しており、この事業は今後も一貫して2桁のEBITDAマージンを達成できると期待している
- Wind(風力発電事業)
- 陸上風力発電はここ数年で最も収益性の高い四半期を達成。今年は1桁台後半のEBITDAマージンを達成できる見込み
- 洋上風力発電はこの4ヶ月間は厳しい状況にあり、今四半期に多額の損失を被ったことで顧客や財務結果に与えた影響を考えると残念
- ヴィンヤード風力発電プロジェクトにおけるブレード事故の根本原因の分析を完了し、カナダの工場での製造上の逸脱が原因であることを確認
- 遅れている北米ヴィンヤード、英ドッガーバンクの洋上風力発電プロジェクトでは、お客様と当社自身にとって経済的に合理的な最も安全で最高品質のデリバリーモデルによる実現に注力していく
- 組織全体にリーンをさらに浸透させ、安全性、品質、納品、コストの継続的な改善を推進することに注力していく(四半期中にスウェーデンの陸上風力発電所で死亡事故が発生)
- 第3四半期の業績は大幅な利益率拡大という堅調な四半期を達成したが、洋上風力発電における品質と実行の課題がなければ、当社の四半期はさらに好調だった可能性が高い
- 当四半期中にElectrification(電化事業)の一部であるGE Vernova T&D Indiaの16%の所有権を売却し、約7億ドルの税引前収益を生み出した
- 電力および電化事業の好調な業績が風力発電事業の追加損失を相殺しているため、2024年の通期見通しは維持
- 12月10日にニューヨークで開催されるInvestor Updateで、複数年にわたる当社の財務見通しと資本配分戦略について説明予定
- 質疑応答
- 風力発電事業の諸問題についての最新状況
- 遅れている北米ヴィンヤード、英ドッガーバンクの洋上風力発電プロジェクトに関する約30億ドルのバックログ消化については12月10日のInvestor Updateでより詳細を提供予定
- ヴィンヤードでのブレード破損原因は7月に私たちが想定していた通り、カナダの工場の1つで製造上の逸脱があった。製造された洋上風力発電用のブレードをすべて非常に体系的に見直してきたが、1桁台前半の割合でヴィンヤードで故障したブレードと同様の製造上の逸脱があった
- 通期見通しにはこれらが含まれており7億ドルの費用が計上されている
- 需要が堅調であるガス電力について
- 現在受注している金額と現在出荷している金額を比較すると価格設定環境は大幅に改善しており、26年後半から27年通年の収益に大きく影響し始める
- 2025年は2024年と同等かそれより若干良い受注レベルを想定
- 風力発電事業の諸問題についての最新状況
- Power(電力事業)
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2024年第3四半期の総売上高(Total Revenues)は89億1300万ドル、市場予想の87億8000万ドルを上回っている
- 2024年第3四半期の調整後EBITDA(Adjusted EBITDA)は2億4300万ドル、市場予想の2億7600万ドルを下回っている
となっている。
まとめ
上記の様な決算を受けてGEベルノバの株価は
前日比1.25%の上昇。同日の米国市場が
比較的大きく下落していることを踏まえるとGEベルノバの決算は高評価だったと言える。実は調整後EBITDAが市場予想を下回ったこともあってか、米国市場開場前に決算資料が発表された直後は約3%下落していたのだが、カンファレンスコールが進むにつれて値を戻し、開場直後はプラスでスタート。その後市場の下落に引きずられたのか前日比マイナスに沈んでいたが午後に入って上昇し、結局プラスで取引を終えている。カンファレンスコールでの経営陣の説明が功を奏したのだろうか。
決算後数日を含めた年初来のGEベルノバ株の推移を市場(S&P 500)と比べてみると
冒頭に挙げた9月中旬までの上昇以降も自分が危惧していた事態とはならず、9月の上昇ペースよりは落ちたが10月も株価は上昇基調。23日の今回決算翌日の24日も以下の各社等が目標株価を引き上げた
- Barclays:300ドルから320ドル(格付けはOverweightで変わらず)
- JP Morgan:285ドルから330ドル(格付けはOverweightで変わらず)
- Morgan Stanley:256ドルから301ドル(格付けはOverweightで変わらず)
こともあってか一段高となり、年初来(実際には4月の分割以後)からの上昇率は100%を超えている。
今後のGEベルノバ株だが、決算内容、そして翌日のアナリストの評価を見る限りでは、好調な電力/電化事業により今後も堅調な株価推移が続きそうではある。ただ風力発電(特に洋上)が懸念材料であることは変わらないので注意はしておきたい。そして12月のInvestor Updateでは資産配分についても語る予定とのことなので、願わくば配当を開始してくれると完全リタイアをして配当金生活をしている自分にとっては有難いのだがなあ。