はじめに
米国時間2024年10月10日(木)に2024年9月の米消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が米労働統計局から発表された。
前回2024年9月発表のCPIは概ね市場予想通りだったのだが、コアCPIではインフレ圧力が未だ根強いことが示唆され米株式市場は下落してのスタート。しかしその後はエヌビディア(NVDA)に好材料があり前日比8.15%上昇したこともあり、時間経過と共にハイテク銘柄を中心に持ち直して前日比プラスで終えている(NASDAQ:2.17%、S&P 500:1.07%、DOW:0.31%)。また米国10年債、ドル円為替にも変動はあったがその範囲は限定的であった。
その後9月のFOMCでは予想通り利下げが行われその幅は0.5%だったのだが、FOMC後の各種経済指標は0.5%の利下げを補強するような結果だったため、9月下旬にかけて米国株市場は概ね高値で安定。10月に入ってから中東情勢の更なる緊迫化などがあり下落したものの、今回のCPI前2営業日は上昇して9月末水準を上回っている。高値圏で推移しているものの、やや方向感に乏しいというところだろうか。
まだまだ今後の利下げ幅/タイミングを睨んで神経質な動きが続いている米国市場だが、そんな中で今回のCPI結果、そしてそれを受けて市場はどう動いたのか。以下に確認して整理しておく。
2024年10月10日米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)発表の2024年9月消費者物価指数(CPI)
以下の情報は米労働省労働統計局の発表資料より引用・抜粋。
- 2024年9月の前月比消費者物価指数(季節要因調整済)は前月比0.2%の増加、市場予想は0.1%の上昇
- 2024年9月の前年比消費者物価指数(季節要因調整済)は全品目では2.4%上昇、市場予想は2.3%の上昇。変動の大きい食品及びエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは前年比3.3%上昇、市場予想は3.2%の上昇、前月比では0.3%の上昇、市場予想は0.2%の上昇
- 家庭用食品(Food at home)は前年比1.3%上昇。2024年8月は前年比0.9%上昇
- 電気代(Electricity)は前年比3.7%上昇。2024年8月は前年比3.9%上昇
- 住居費(Shelter、主に家賃。サービス分野で最大の構成要素でCPI全体の約3分の2を占める)は前年比4.9%上昇。2024年8月は5.2%上昇
全品目の指数は前年同月比2.4%で2021年2月以来の小幅な伸びだが、市場予想は上回っている。また前月比コアCPIは6月の0.1%、7月の0.2%、8月の0.3%、今回の0.3%と4ヶ月連続で伸びており、今回は市場予想を上回っている。
サービス分野で最大部分を占める住居費は前月の前月比0.5%上昇に対して0.2%上昇に留まっているが、逆に言うとそれ以外の価格が大きく上昇したことになる。
ブルームバーグの算出によると住宅とエネルギーを除いたサービス価格は0.4%上昇。前月は0.3%上昇で3ヶ月連続で上昇している。
同日の市場の動き
米国株式市場
主要3市場とも下落して始まり、方向感に乏しい動きでいずれも前日比やや小幅マイナスで取引を終えている(ただしS&P 500の主要11セクターは8セクターで前日比マイナス)。
この日は米CPI発表の他に過去1週間の米新規失業保険申請件数の発表があり、そちらは予想23万件に対して3万3000件増の25万8000件(2023年8月以来最大)となっている。ただし、これは最近米南東部でのハリケーン被害が関連していると見られ、FRBの金利政策にどの様な影響を及ぼすかの判断が難しいことが昨日の米国株式市場が方向感に乏しい結果となった一因と思われる。
米国10年債
取引開始直後にやや上昇したもののその幅は小さく、その後も方向感に乏しい動きが続いたまま前日に比べてやや利回りが上昇して取引を終えている。日中取引での4.12%は約10週ぶりの高水準。
またこの日の米国2年債は前日に比べて利回りが低下して取引を終えており、市場の判断も難しかったことが伺われる。
ドル円為替
CPIの発表があった米EDT8:30は上記ドル円チャートのBST13:30。1ドル=149円前後からドル安となったもののその幅は限定的であり、方向感に乏しい動きを繰り返し一時的にはCPI発表前水準に戻している。その後は148円台後半で推移しており変動幅は限定的。
まとめ
今回発表のCPI結果は市場予想を上回る結果だったものの、米国株式市場、米10年債、ドル円為替いずれも変動幅は限定的だった。
これは今回CPIは予想より上振れしたことは悪材料だったが、FRBの金利政策を変えるほどではないと市場が捉えたことが原因なのだろう(CMEのフェドウォッチでは、統計発表後に市場が織り込む11月の2.5%利下げ確率は約80%、据え置きの確率は約20%)。
結果的に今回のCPIイベントも無難に乗り切った訳だがデータを見るとやはりまだ安定しているとは言えず、今後のCPI動向とそれに影響を及ぼす各種経済指標にも引き続き注意していくことにしたい。