2024年7月FOMC結果とパウエル議長発言(2024/7)

はじめに

米現地時間2024年7月30日(水)、7月31日(木)には2024年5回目となるFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)が開催された。

前回2024年6月のFOMC会合では7回連続で政策金利が据え置きとなり、同日朝にあった米消費者物価指数(CPI)結果発表の変動からはそれ程大きく変わらずで

「今回のFOMC結果も前回に続いて無難ではあったが、インフレに関するデータを総合的に判断するという従来の姿勢は変わっていないため、今後も引き続き経済指標の結果次第で市場が大きく動くことになる可能性が高い。」

と書いていた。

そしてその後はまずまず穏当に株式市場は動いていたのだが、7月半ばには様々な要因があったためかここ最近のAI関連大型ハイテク銘柄主導の株高(特にS&P 500、NASDAQ総合)に変化が見られていた。ただしそれが一時的なものなのか、これまでの流れが変わるものなのかはまだ判断するには時期尚早。

そんな状況の中で行われた今回のFOMCによる政策金利結果及びパウエル議長の会見はどうだったのか、そして市場はどう反応したのかを以下に確認し整理しておく。


2024年7月30日、31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)結果及びパウエル議長の発言まとめ

FOMC会合結果

以下は米連邦準備制度理事会(FRB)のサイトで現地時間14時に公開されたFederal Reserve issues FOMC statement(FOMC声明)より引用・抜粋。

前回からの主な変更点等は以下の通り。

【最近の経済】

  • 前回は「経済活動は堅実、雇用増は堅調、失業率は低くインフレは高止まりで、ここ数ヶ月委員会の2%のインフレ目標に向けていくらかの進展が見られた」といった内容
    ⇒雇用増加は緩やかで(strongからmoderatedに変更)、失業率は上昇しているが依然として低い(has moved upという言葉が追加)
    ⇒2%のインフレ目標に向けて更なる進展が見られた(modest further progressからsome further progressに変更)

【今後の政策金利決定に関して】

  • Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent
    委員会はフェデラルファンド金利の目標誘導レンジを5.25~5.50%に据え置くことを決定した
    ⇒前回と同じ
  • 上記を含めてその他は前回と一言一句変わらず、引き続き経済状況を注視していく姿勢や確信を強めるまで政策金利の引き下げは適切ではないとしている

パウエル議長の発言

以下はFOMC会合結果及び経済予測要旨開示後のパウエル議長の会見における主な発言より。

  • インフレが急速に低下もしくは予想通りに推移し、成長が適度に堅調で労働市場が現状と一致すれば9月に利下げが検討される可能性がある
  • 問題となるのは、データの全体像や変化する見通し、リスクバランスのインフレに対する確信の強まり、そして堅調な労働市場の維持と整合するかどうかだ
  • 経済の展開の仕方次第で、年内の利下げがゼロにも複数回にもなるというシナリオは想像し得る
  • 今回の会合で動くかについて行きつ戻りつの真剣な議論があったが、今会合では動かないことを大多数が支持した
  • (0.5ポイントの利下げ見通しに関する質問)現時点で考えているものではない
  • 過去2、3回のインフレ指標は確信を高めるものだった。良好なデータがさらに得られれば確信は一段と高まる

FOMC会合結果及びパウエル議長の発言を受けての市場

米国主要3株式市場

ダウ工業平均は少し変動があったものFOMC後での大きな変動は無し。同日は米半導体大手のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が決算で今年通期の人工知能(AI)向け半導体の売上高見通しを上方修正したことを受けて、大型ハイテク銘柄が上昇したためS&P 500、NASDAQ総合の上昇が大きく、FOMC結果はあまり影響が無かった。

米国10年債

FOMC声明が発表された米国東部夏時間14:00は上記チャートのCDT(米国中部夏時間)では13:00。FOMC後にやや利回りが上昇したものの、前日比で利回りは低下して終えている。

直近5日間でも

利回りは低下傾向にある。

ドル円為替

FOMC声明が発表された米国東部夏時間14:00は上記チャートのBST(英国夏時間)では19:00。それ以前の英国夏時間の午前8時前後に1ドル=153円台から150円台に大きく円高となったのは日本銀行の金融政策決定会合で0〜0.1%としていた政策金利(無担保コール翌日物レート)を0.25%に引き上げる追加利上げを決めたため。FOMC会合以降は1ドル=150円前後で方向感が定まらない動きが続いている。


まとめ

今回のFOMC会合は概ね市場の予想通りに金利据え置き、9月に利下げの可能性大といった内容であったためか、市場に大きな変動は無し。決算を受けての大型ハイテク銘柄主導の株式市場上昇や日銀の政策金利引き上げによるドル円為替変動に埋没してしまった感がある。

冒頭に挙げた通り前回は米消費者物価指数、今回は上記の理由によりFOMC会合での大きな変動は無かったのだが、9月17、18日のFOMCでは0.25%の利下げが有力視されているため、次回はそれなりに動きがあるのではないかと思っている。そして今後の経済指標にも注目しておきたい。FRBの思惑通りソフトランディングは達成されるのだろうか。

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