はじめに
2023年7月20日(木)には自分の所有銘柄の一つであるフィリップ・モリス(PM)の2023年第2四半期決算発表があった。
前回の四半期決算発表ではAdj. Diluted EPS(調整後希薄化1株あたり利益)の見込が下方修正されたこともあってか5%近い大幅下落。その整理をした際には
「決算内容・アナリストとのカンファレンスコールからは第2四半期も厳しい状況が続きそうであり、2023年後半の結果が判るまで、つまり秋の決算発表まではフィリップ・モリス株は振るわない気がする。余程の好材料が無い限り株価が大きく上昇することは見込めないだろう。」
と、この2023年第2四半期決算もあまり期待できない業績だろうと書いていた。
では実際の決算結果がどうだったか、以下フィリップ・モリスの決算内容を確認し整理しておく。
フィリップ・モリス2023年第2四半期決算発表概要
以下の情報は、フィリップ・モリス・インターナショナルのサイトより引用・抜粋。
- 2023年第2四半期の純収入(Net Revenues)は89億6700万ドルで、為替や買収を除いて前年同期比10.5%増加
- 2023年第2四半期の調整後営業利益(Adjusted Operating income)は35億3200万ドルで、為替や買収を除いて前年同期比6.9%増加
- 2023年第2四半期の調整後希薄化1株あたり純利益(Adjusted Diluted EPS)は1.60ドルで為替の影響を除くと前年同期比16.9%増加
- 2023年第2四半期のタバコ製品(Cigarettes)と加熱式タバコ製品(Heated Tobacco Units)の出荷量は、タバコ製品が前年同期比0.4%の減少、加熱式タバコ製品が前年同期比26.6%の増加。トータルでの出荷量は3.3%の増加
- 前四半期からSwedish Matchの買収に伴いオーラル製品の出荷量も開示しているが、タバコ製品及び加熱式タバコ製品に比べると約1%程度
2023年通期見通し
2023年通期の見通しは以下の通り。
- HTU Shipment Volumes(加熱式タバコ出荷量):1250~1300億ユニット(前回と変わらず)
- Net Revenue Growth(既存事業成長率):7.5~8.5%(前回の7.0~8.5%から下限を上方修正)
- Adj. Diluted EPS Growth(調整後希薄化1株あたり利益成長率):8~9.5%(前回の7~9%から上方修正)
- Adj. Diluted EPS(調整後希薄化1株あたり利益):6.13~6.22ドル(前回の6.10~6.22ドルから下限を下方修正)
- Adj. Diluted EPS, ex-currency(為替の影響を除く調整後希薄化1株あたり利益):6.46~6.55ドル(前回の6.40~6.52ドルから上方修正)
2023年第3四半期の見通しは以下の通り。
- Third-quarter adjusted diluted EPS in a range of $1.60 to $1.65, including an unfavorable currency impact, at prevailing exchange rates, of $0.06 per share, notably reflecting HTU shipment volume of around 31 to 33 billion units and high-single-digit organic top-line growth
第3四半期の調整後希薄化後EPS は1.60~1.65ドルで、実勢為替レートで1株あたり0.06ドルの不利な影響を含み、約310~330億の加熱式タバコ製品出荷量と1桁台後半の既存事業売上高成長を反映しています
その他
その他決算発表及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。
- 第2四半期に吸入可能なアスピリン製品の最初の臨床試験が失敗したことや、ウェルネスおよびヘルスケアの他製品の開発が予想より遅れたことを受けて6億8000万ドルの減損処理を行った
- これによりウェルネスおよびヘルスケア製品から10億ドル以上の純収益を達成するという2025年の目標の達成は延期される
- 9月28日にスイスのローザンヌで開催されるInvestor Dayで、米国におけるIQOSの計画やウェルネスおよびヘルスケア事業の最新情報を提供する予定
市場予想との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2023年第2四半期の純収入(Net Revenues)は89億6700万ドルで、市場予想の86億5000万ドルを上回っている
- 2023年第2四半期の調整後希薄化1株あたり純利益(Adjusted Diluted EPS)は1.60ドルで、市場予想の1.47ドルを上回っている
となっている。
まとめ
上記の様な決算結果を受けてフィリップ・モリス株は
同日の米国市場は
大型ハイテク銘柄のテスラ(TSLA)が9.74%、ネットフリックス(NFLX)が8.41%それぞれ大きく下落したためNASDAQとS&P 500が下落していたが、売上、EPSが市場予想を上回ったフィリップ・モリスが下落して終えたのは今一つ納得感が薄い。
日中の動きを見てみると
開場直後は前日比1%を超える上昇だったものの、時間の経過と共に下落して前日比マイナスで終えている。2023年の見通しは概ね上方修正されたもののAdj. Diluted EPS(調整後希薄化1株あたり利益)の上限値は据え置きだったことや、ウェルネス事業の見通しが冴えないことが時間経過と共に疑問視されたのだろうか。それでも前四半期決算時ほど悪くなかったことを良しとすべきなのだろう。
年初来のフィリップ・モリス株の推移を見てみると
市場(S&P 500)が約18%上昇しているのに対して3%程度のマイナスとかなり見劣りがするパフォーマンス。ただ前回決算以降続いた下落傾向で一時10%を超えるマイナスとなった株価が6月から市場と同様の傾向にはなっている。
今回の決算を受けてフィリップ・モリス株がどう動くのかは想像しづらいのだが、市場には及ばないのは当然としてもこれ以上の下落とならないでくれることを期待したい。とりあえずは9月末のInvestor Dayに注目しておくことにしよう。