FRBパウエル議長ジャクソンホール講演と市場動向(2021/8)

はじめに

昨日2021年8月27日(金)は米国市場に大きな影響を与える可能性があった米カンザスシティ連邦準備銀行主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)で米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演が現地東部時間の10時(日本時間23時)から行われた。

以下にその内容について確認しておくとともに、昨日の米国市場及び自分の所有しているシティグループ(C)、JPモルガン・チェース(JPM)株についても確認しておくことにする。


2021年ジャクソンホール会合におけるパウエル議長の講演概要

以下は米連邦準備制度理事会(FRB)のWebサイトより引用・抜粋。

講演全体のテーマは”Macroeconomic Policy in an Uneven Economy(不均衡な経済におけるマクロ経済政策)”で、パウエル議長は”Monetary Policy in the Time of COVID(COVID下におけるマネタリーポリシー)”というテーマで講演を行った。

講演の流れは以下の通り。

  • 前置き/前段
  • The Recession and Recovery So Far(これまでの不況と回復)
  • The Path Ahead: Maximum Employment(今後の道筋:雇用最大化)
  • The Path Ahead: Inflation(今後の道筋:インフレ)
    • 1. The absence so far of broad-based inflation pressures(これまでの広範なインフレ圧力の欠如)
    • 2. Moderating inflation in higher-inflation items(高インフレ品目におけるインフレの緩和
    • 3. Wages(賃金)
    • 4. Longer-term inflation expectations(長期的なインフレ想定)
    • 5. The prevalence of global disinflationary forces over the past quarter century(過去四半世紀における世界的なインフレ緩和の蔓延
  • Implications for Monetary Policy(金融政策への影響)

元々講演が注目されていた点は

  • 米金融当局が債券購入のテーパリング(段階的縮小)をいつどのように開始するかについての言及及びその表現

だったと思う。日本人である自分には英語の微妙なニュアンスは掴みにくいのだが、以下に講演の中から上記の点にかかわる言及を抜粋してみると以下の様になる。

  • At the FOMC’s recent July meeting, I was of the view, as were most participants, that if the economy evolved broadly as anticipated, it could be appropriate to start reducing the pace of asset purchases this year.
    最近のFOMC7月の会議で、私は、ほとんどの参加者と同様に、経済が予想通りに大きく発展した場合、今年から資産購入のペースを落とし始めることが適切であると考えました
  • The intervening month has brought more progress in the form of a strong employment report for July, but also the further spread of the Delta variant. We will be carefully assessing incoming data and the evolving risks.
    その間の月は7月の力強い雇用レポートの形でより多くの進歩をもたらしましたが、デルタ変異株のさらなる広がりももたらしました。我々は入手するデータと変化するリスクを慎重に見極めていきます
  • The timing and pace of the coming reduction in asset purchases will not be intended to carry a direct signal regarding the timing of interest rate liftoff
    今後の資産購入減少のタイミングとペースは、金利上昇のタイミングに関する直接的なシグナルを伝えることを意図したものではありません

年内に緩和縮小を開始することが適切である可能性を指摘する一方で、デルタ変異株に対する警戒と資産購入減少のタイミングとペースが金利上昇に直接つながるものではないとするなど、金利引き上げのタイミングには含みをもたせたような印象であった。


講演を受けての市場等の動き

昨日の市場は

ダウ工業平均が0.69%、S&P 500が0.88%、NASDAQが1.23%いずれも上昇という結果になった。

S&P 500の日中の動きと共にに自分の所有しているシティグループ(紫色)、JPモルガン・チェース(黄色)の動きを見てみると以下の様になる。

開場直後はパウエル議長の利上げにつながる発言があるかもしれないとの想像から銀行株はやや上昇で始まったようだが、上記の通り債券購入プログラムの縮小開始が利上げに直結しない旨の発言もあった事から、長期金利が低下し銀行株は下落し市場は逆に上昇。その後は長期金利と短期金利の差が広がらなかったこともあってか、銀行株も市場なりに持ち直して閉場を迎えるという形になった。

かなり不安があったのだが結果から見ると、自分の資産は予想よりかなり上手くパウエル議長の講演を乗り切ったと言えるだろう。講演内容からすると長期金利の下落に伴い銀行株が急落する可能性もあった(実際に講演直後は銀行株は下落)のだが、実際には銀行株が先に書いた様に長期金利と短期金利の差が広がらなかったせいか市場なりに上昇してくれたのは嬉しい誤算だったと言える。

ただ今回は無難に乗り切ったが、今後のFRBの動きの見通しがはっきりした訳ではないのでFRB関係者の発言によって金利が変動し、それに応じて銀行株が上下するという神経質な状況が続きそうな気が個人的にはする。

取り合えずFRBには今後もあまり大きく市場が動かない様に政策を選択してもらいたいものだ。

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