2023年米銀ストレステスト後のシティグループのコメント及び株価

はじめに

先日2023年6月28日(水)の米国市場閉場後には、2023年の米銀ストレステストの結果が米連邦準備制度理事会(FRB)より公表された。

その結果を受けて自分が所有しているシティグループ(C)株は

  • 2023年6月29日(木):46.29ドル、前日比0.13%上昇
  • 2023年6月30日(金):46.04ドル、前日比0.54%下落

他の主要米銀株が両日とも上昇、特に29日にいずれも2~4.5%の上昇だったのと比べると見劣りする結果であった。

これは

2023年6月28日発表のFRB米銀ストレステスト結果まとめ

で触れた様に米銀ストレステストをクリアしたものの、その結果を受けてシティは他行に比べてシナリオに対する回復力が弱く必要な資本バッファーが大きく増加する可能性があり、配当増も期待できないとされていた事が関係していたと思われる。

ここまではFRB公表の米銀ストレステスト結果が元になっていたが、6月30日(金)の米国市場閉場後にはシティを含めた個別行がそれぞれストレステスト結果に対するコメントを発表している。

以下シティの米銀ストレステストを受けてのコメントと、それを受けての7月3日(月)のシティ株について確認・整理しておく。


2023年6月30日(金)米国市場閉場後発表のシティのストレステストを受けてのコメント

以下はシティグループの企業サイトより引用・抜粋。

  • シティは本日、連邦準備理事会の2023年包括的資本分析およびレビュー(CCAR)ストレステストプロセスを完了したと発表
  • 当社の示唆的な(indicative)ストレス資本バッファー(SCB)要件は現在の4.0%から4.3%に増加し、標準化普通株式Tier 1(CET1)自己資本比率規制要件は現在の12.0%から12.3%に増加
  • FRBは2023年8月31日までに最終的なSCB要件を当社に提示し、その要件は2023年10月1日に発効し、2024年9月30日まで有効となる
  • シティの取締役会は、2023年第3四半期に現在の普通株式の四半期配当を1株あたり0.51ドルから0.53ドルに増額する計画
  • 最高経営責任者(CEO)Jane Fraser氏のコメント
    • ストレス資本バッファーの増加は明らかに望ましくないが、これらの結果は依然として連邦準備理事会のストレステストで想定された深刻な不利なシナリオを含むあらゆる経済環境を通じてシティの財務回復力を示している
    • 当社は第2四半期中に10億ドルの普通株を買い戻し配当を増やす予定であり、四半期ごとに資本活動の評価を継続する

ストレステストを受けてのシティコメント発表後の株価

上記の発表を受けての2023年7月3日(月)のシティ株は

前日(先週金曜日)比1.52%の上昇。同日の米国市場は独立記念日前のため13時までと短縮されていたためか

全体的には薄商いで株価もほぼ横ばい。そんな中シティの上昇は評価できるともいえるが、他の主要米銀も

同じ程度に上昇しS&P銀行株指数も1.5%上昇していることから、シティの発表内容が特に高く評価されたわけではない。


まとめ

とはいえ、シティの発表前まではより悪い結果になる可能性もあり、他行との比較は別にしてシティ株が上昇したことをよしとすべきだろう。特に予想外の配当増が個人的にはありがたい。

ただし、これで2023年の米銀ストレステストをシティが乗り切ったと言えるのかというと実はそうではないらしい。

というのも7月3日(月)の米国市場閉場後にシティは米銀ストレステスト結果の詳しいプレゼンテーション資料を開示したと同時に、そのシナリオにおける9四半期のストレス期間の連邦準備理事会のCCAR結果とシティのドッド・フランク法との間の非金利収入(シティの財務報告プレゼンテーションによる非金利収入)の差異を理解するために連邦準備理事会との対話を開始したことも発表しているため。

ちなみにバンク・オブ・アメリカ(BAC)も同様に、米銀ストレステスト結果が金融規制改革法(ドッド・フランク法)に基づく自社の分析結果と異なること(9四半期のストレステストシナリオにおける「その他包括的利益」)について理解するため、FRBと協議を開始したと発表している。

例えばシティの場合、自社の分析では9四半期の非金利収入(Noninterest Income)は644億ドルと予想しているが

FRBの予測は

439億ドルとなっている。

この差異に関する協議の発表を受けて、既に発表されたシティの配当増や自社株買い戻し、自己資本強化にマイナスの影響が出ないといいのだが。米独立記念日の休場明けの7月5日(水)のシティ株がどう動くか(この協議に関しての発表は7月3日(月)の閉場後にあった)に注目するとともに今後の続報について気を付けておきたい。せっかく株価が上昇・増配して米銀ストレステストを想定よりうまく乗り切ったと思ったのだがなあ・・・。

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