シリコンバレー銀行破綻と自分所有の米国銀行株雑感(2023/3)

はじめに

掲題の通り2023年3月10日(金)に、昨年末時点で総資産が全米16位であったシリコンバレー銀行(米金融持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ(SIVB)の傘下)が破綻した。

この破綻に至る流れを確認しておくと共に、自分の所有しているシティグループ(C)、JPモルガン・チェース(JPM)への影響について推察してみることにする。


シリコンバレー銀行破綻の流れ

【2023年3月8日(水)】

  • SVBファイナンシャル・グループが時間外後に以下の発表を行う
    • 12億5000万ドルの普通株式と5億ドルの預託株式を売り出す予定
    • 売却可能な有価証券ポートフォリオの大部分の売却を完了(約210億ドルの有価証券)
    • 顧客向けのプレゼンテーション資料を発表し、通期業績見通しを下方修正
    • 顧客向けのレターを発表し「金利の上昇が続き、公募および私募市場が圧迫され、顧客のキャッシュバーン(現金燃焼)水準が事業投資に伴い上昇すると予想されるためこれらの措置を講じている」と説明

【2023年3月9日(木)】

  • SVBファイナンシャル・グループの株価は前日の終値267.83ドルから106.04へと60.41%の急落
  • 他の銀行株にも売りが広がり同日のS&P 500銀行指数は6.6%下落(S&P 500は1.85%の下落)
  • SVBファイナンシャル・グループのグレッグ・ベッカーCEOが顧客に対し電話会議を開き、落ち着くよう呼び掛け

【2023年3月10日(金)】

  • 10日時間前にSIVB株の取引停止措置
  • CNBCがSVBファイナンシャル・グループが計画していた増資に失敗し、身売りを交渉していると報道
  • イエレン米財務長官が同日、連邦準備制度と連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)の幹部と会議を行いSVBを巡る状況を討議した、と米財務省が電子メールで声明を発表
  • カリフォルニア州の銀行規制当局がシリコンバレー銀行を閉鎖(正確な時間は判らないが恐らく取引時間内)
  • 規制当局は米連邦預金保険公社(FDIC)を管財人として選任し、その管理下でシリコンバレー銀行の資産が処分される
  • FDICの主な声明は以下の通り
    • シリコンバレー銀行の本店および全支店は13日に再開され、遅くとも同日午前には預金引き出しに応じる
    • FDICによる保護対象の預金全額にアクセスできる
    • ただしFDICによると、昨年末時点でシリコンバレー銀行の預金1750億ドルのうち89%が保護の対象外であり、こうした預金の扱いは未定
  • 報道ではFDICがこの週末シリコンバレー銀行との統合に応じる金融機関を探す予定だが、合意が成立するかは不透明

シリコンバレー銀行破綻の影響(想定含む)

自分が所有している米銀株(シティグループ、JPモルガン)の動き

3月10日(金)にシティグループが前日比下落しているのに対し、JPモルガンが前日比2.54%を超える上昇となっているが、過去5日間で見るとほぼ同程度の下落。

その他米大手銀行も10日の取引は

まちまちではあるものの

市場に比べて悪くはなかった。

ただし、大手以外の一部の米銀行株(特に西海岸地域)では1日で15%を超える下落をしているものが複数あった。

今後の見通し

ここからは各種報道を見た自分の個人的な意見。

【楽観的な見方】

  • 大半の銀行(特に大手)は個人や法人で幅広い顧客層を持っている
  • シリコンバレー銀行は新興テクノロジー企業を主な取引先としていた
  • 報道によると、シリコンバレー銀行は米国のベンチャーキャピタルが出資するスタートアップのほぼ半数と取引している
  • 米国でインフレ抑制のため急速に金利を引き上げる中で債券価格は昨年下落している
  • 報道によると、総資産に対する債券投資ポートフォリオの比率がシリコンバレー銀行は際立って高く57%、米国の主要74行のうちこの比率が42%を上回るところはない

こういった点を踏まえると、シリコンバレー銀行の破綻は特殊なものであり、他の銀行に大きな影響を及ぼすものではない可能性が高い。

【悲観的な見方】

  • 今後もFRBが利上げを続ければ他の中堅銀行でも資金繰りが悪化して経営破綻につながりかねず、金融システムに亀裂が生じる可能性が懸念される
  • そもそもシリコンバレー銀行が増資を発表したのは、顧客であるスタートアップ企業が預金を引き出していた可能性
  • 積極的な利上げで投資家が米経済のリセッション(景気後退)に関する慎重姿勢を強め、ベンチャーキャピタルからのスタートアップ企業への資金が減少傾向
  • 米パーテック・パートナーズの調査では、こうしたファイナンスは昨年35%減少

今回の件で米銀の健全性が疑問視され今後の銀行株が弱含みになったり、ストレステストのハードルが高くなる可能性もある。

またシリコンバレー銀行破綻のきっかけとなった(と考えられる)スタートアップ企業に資金が集まらなくなっている現在の状況は、銀行だけではなく米経済の景気後退の兆候として捉えることも出来るのではないか。


まとめ

シリコンバレー銀行の破綻に関する情報を確認しながら現状を整理し、今後の見通しについても考えてみた。シリコンバレー銀行の破綻が自分が想像もしていなかった原因であったことは興味深かった。

先に書いた様に、現時点では今後について楽観的/悲観的いずれの見方も出来る気がする。10日(金)の株式市場は何とか乗り切った感があるが、個人的には今後も景気後退を意識した下落基調が続きそうな気がするので、自分のポートフォリオ下落が進む可能性を(残念だが)頭に入れておくことにしよう。

こうなってくると3月21日、22日のFOMC会合及びそれに続くパウエル議長の会見が一段と重要になってくるのだろう。そしてその結果で市場がどう動くのか。短期的には大幅下落もやむを得ないが、何とか中長期的に景気後退が続くような事態にならない金利政策となって欲しいものだ。

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