AT&T アナリスト&Investor Day(2021/3)

はじめに

米東部時間の2021年3月12日午前10時から掲題のAT&T Analyst & Investor Day 2021が開催された。

以下にその内容と発表を受けてのAT&Tの株価について整理しておく。


AT&T Analyst & Investor Day 2021まとめ

以下はAT&Tの企業サイトより引用・抜粋。プレスリリースはプレゼンテーション開催の2時間前、3月12日午前8時に開示されている。

事前のプレスリリースまとめ

プレスリリースより太字の部分を抜粋。

  • 120-150 million HBO Max/HBO subscribers by 2025.
    2025年までに1億2000万~1億5000万のHBO Max / HBO加入者
  • HBO Max international expansion and AVOD launch in June.
    HBO Maxの世界的な拡大と6月にAVOD(Advertising Video On Demand:広告付き)バージョン投入
  • 3 million new fiber locations.
    300万の新規ファイバーロケーション
  • C-band spectrum deployment to begin in 2021.
    2021年にCバンドスペクトルの展開を開始
  • Funding C-band spectrum.
    Cバンドスペクトルへのファンディング
  • End-of-year 2021 debt ratio target of 3.0x.
    2021年末の負債比率目標は3.0倍
  • 2024 debt ratio of 2.5x or lower.
    2024年の負債比率は2.5倍以下
  • 2021 guidance unchanged.
    2021年見通しは変更なし

これだけでは分かりにくいのでそれぞれ説明ををまとめると以下の様になる。

HBO Max/HBO関連

  • 元々2019年10月時には2025年までに7500万~9000万の加入者見込だったのだが、今回1億2000万~1億5000万と上方修正
  • 2021年にHBO Maxを米国を除いた60ヶ国に展開(39はラテンアメリカで上半期、21は欧州で下半期)
  • 2021年6月に米国で広告付きHBO Maxを開始

通信関連

  • 2021年中に追加で300万の新規ファイバーロケーションを90以上の都市圏に展開
  • 最近オークションで入札したCバンドスペクトルの展開を2021年から開始
  • Cバンドスペクトルの展開に60〜80億ドルを費やすと予想しており、支出の大部分は2022年から2024年に発生
  • 予想されるCバンド展開のコストは、2021年の設備投資ガイダンスと2024年のレバレッジ比率目標にすでに含まれている
  • オークションでのCバンドワイヤレススペクトルへの274億ドルの投資に関して、2021年に230億ドルの支払いが見込まれる
  • 2021年は、2020年末の手元現金97億ドルを含め、合計で少なくとも300億ドルの現金を利用できると見込んでいる

財務関連

  • 2021年末の負債比率目標3.0倍には、Cバンドスペクトルの購入資金に関して予想される約60億ドルの純負債の増加を考慮に入れている
  • 2024年の負債比率は2.5倍以下。この目標を達成するため、配当以外のすべてのキャッシュフローを使用して債務を返済し、非戦略的資産を収益化する機会を引き続き模索する。またこの期間中に自社株買いを行う予定はない

プレゼンテーション

基本的にはプレゼンテーションに先立って発表された上記の内容をAT&T Communications、WanerMedia事業部ごとにそれぞれ深堀りし、財務状況の説明、Q&Aという流れ。

以下プレスリリースで述べられた以外の内容で、プレゼンテーションで気になった点を記しておく。

  • HBO Max/HBOの収益は、今後5年間で2020年の68億ドルの2倍以上の150億ドルになると予想
  • HBO Max AVODの広告予約が既に8000万ドル(we already have $80 million in upfront commitments)あるとのこと
  • 映画プレミアム(day-and-date movie premieres)はHBO Max AVODには含まれず、HBOオリジナル作品は広告無しで提供する

  • ビデオユニット(DirecTV)分離により、収益で100bps(basis points、1%)、EBITDAマージンで300bps(3%)程度の改善を想定

Q&Aに関しては特に気になるものは無かった。


まとめ

上記の様な発表を受けて昨日のAT&T(T)株がどうなったかというと、

0.91%の上昇。ダウ工業平均が0.90%、S&P 500が0.10%それぞれ上昇、NASDAQが0.59%下落している中、微妙な上昇具合。

日中の推移を見てみると

開場後は順調に上昇し(プレスリリースは午前8時、プレゼンは午前10時~)午前11時前には一時前日比4%超の上昇となっていただけに余計に昨日のAT&T株の終値を微妙と感じてしまうのかもしれない。

見た感じではプレゼンテーションとそれに続くアナリストとのQ&Aで特筆すべき悪材料があったとも思えないし、ベライゾン(VZ)の株価を見てもどちらかというとダウ工業平均に近い動きをしていたので、AT&T株がAnalyst & Investor Day後に徐々に下落していった理由が今ひとつ判然としない。発表を受けて利益確定の動きが活発化したのだろうか。

それにしてもHBO Max/HBOの加入者見通しの上方修正もAT&T株の大幅上昇のきっかけにはならないのか。先日のDirecTVスピンオフもAT&T株上昇のきっかけにはならなかった(むしろ下がった)し、しばらくAT&T株は長い目で見た方が良いのかもしれない(前にも書いたかもしれない)。

過去3ヶ月の株価を見ても

四半期決算の発表(2021年1月)、DirecTVのスピンオフ(2月末)などがあったにもかかわらず、株価はダウ工業平均より低いパフォーマンスのまま狭い範囲で推移している。

市場より悪いパフォーマンスではあるが、概ね取得価額(@34.37ドル)のマイナス10~20%で収まっているし、今回のAT&T Analyst & Investor Day 2021でも配当性向が50%台後半、負債の返却も配当を除いてという事が以前と変わらず言及されているので、現在の配当レベルが維持されることで良しと考えることにしよう。

最後に直近でゼネラル・エレクトリック(GE)が2021 GE Investor Outlookの後にアナリストの格付けアップデートで大きく株価を下げた様な事態にはならないことを祈りたい。

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