はじめに

現地時間2021年3月3日には掲題の通りUBSのアナリストによってゼネラル・エレクトリック（GE）の目標株価が引き上げられていた。

以下にその内容を整理しておくと共に、GEの株価についてまとめておくことにする。

UBSのアナリストMarkus Mittermaier氏のGE目標株価引き上げ

投資格付け：Buyを維持

目標株価：14ドルから15ドルに上方修正

以下はMittermaier氏の目標株価引き上げの要旨。

今回の目標株価引き上げはGEの業績改善によるものではない
積立不足の年金債務を潜在的に削減することでGEに利益をもたらす可能性がある3つの「重要な推進力（material drivers）」があるため
第1に、米下院で最近可決されたCOVID救済法案には年金不足の償却を7年から15年に延長することと、金利に関する前提を安定させる（stabilizing assumptions for interest rates）ことが含まれている
特に金利の安定に関して、GE年金制度における1974年の従業員退職所得保障法（Employee Retirement Income Security Act of 1974：Erisa）の資金調達要件が、現在ガイドされている2023年までの事前積立を大幅に超えて、さらに将来まで適用される可能性があることを意味すると考えている
第2に、GEの将来の支払いを評価するために使用される割引（discount）が25ベーシスポイント（0.25パーセントポイント）増加するごとにGEの年金債務は約24億ドル削減され、GEの未積立年金債務からの純債務拠出額は今年約30億ドル減少すると想定される
第3に、GEは年金債務がバランスシート、フリーキャッシュフロー、1株当たり利益（EPS）に「明らかに過剰である（clearly an overhang）」と捉えており、年金債務をさらに積極的に引き下げると考えている
実際GEは既に確定給付型の制度を凍結し、一時金の決済を通じて年金のリスクを軽減し始めている
“We believe de-risking of pension liabilities will reduce volatility, improve the overall sentiments, along with removing cash and earnings drag, which can provide further upside to the stock”
「年金債務のリスクを軽減することで、ボラティリティが低下し、全体的なセンチメントが改善されるとともに、キャッシュと利益への足かせが無くなり、株価がさらに上昇する可能性があると考えている」

2点目に挙げている割引（Discount）に関しては、2020年に入ってからの米長期金利（10年債利回り）の上昇を踏まえてのことだろう。

まとめ

上記の内容を受けて3月3日のGEの株価は、

3.54%の上昇。同日のダウ工業平均が0.39%、S&P 500が1.31%、NASDAQが2.70%いずれも下落したことを考えると大幅な上昇と言ってよいだろう。これはやはりMittermaier氏の目標株価引き上げによる所が大きく寄与していると思われる。論拠も自分には納得感のあるものだった。

Mittermaier氏の投資格付けについては昨年11月に

UBSのアナリストがGE目標株価引き上げ（2020/11/26）

でまとめた後は、調べた所今年2021年1月15日目標株価を12ドルから14ドルに引き上げていた。今の所はMittermaier氏の分析に沿った株価の推移をしているように見受けられるが、今後もGEの株価上昇は続くのか。まだ自分の取得価額@16.21ドルまでは遠いが、2020年の半分ぐらいは6ドル台だったことを思えば、よくここまで回復してくれたものだ。

これを書いていてGEのアナリストで思い浮かぶのはJPモルガンのStephen Tusa氏。

8月末ツサ氏のGE情報アップデート（2020/9）

でまとめた様に目標株価の設定を止めてしまったのだが、その後も目標株価は設定せず、投資格付けもHoldのまま（自分の調べた範囲では分析詳細までは追えていないのだが2020年9月17日、2021年1月17日、25日にそれぞれアップデートがあったようだがHoldを維持）。Tusa氏がGE株に対して強気に転じる時は何時なのか、あるいはその時が来るのだろうか。ちなみにTusa氏はGEの四半期決算発表時のアナリストとのカンファレンスコールには出席し質疑を続けている。

最後に、来週の米東部時間2021年3月10日午前8時から10時までの予定で2021 GE Investor Outlookが開催されるので、そこでまたGEの株価に大きな変化があるかもしれないので注意しておきたい。個人的には期待込みでポジティブな状態が続いていると思うのだがどうなるか。