はじめに
ひと月ほど前にトランプ大統領が新型コロナウイルスに関する対中報復を示唆という事をまとめたが、
トランプ氏が新型コロナに関して対中報復を示唆(2020/5)
この時は結局具体的な対中報復は無かった(はず)。
しかしながら、ここ数日香港やウイグルの人権問題も絡んで再びトランプ大統領から対中報復を示唆するという状況になっている。以下にその内容を整理しておく。
ここ最近の米中の動き
ここ数日の米中の主な動きを簡単に整理すると以下の様になる(日付は現地時間)。
5月21日:
■中国の全国人民代表大会の報道官が、昨年の香港民主化デモを踏まえ中国政府が香港を対象にした国家安全法を制定する方針だと明らかにした
■トランプ米大統領は、中国が計画する法案の具体的内容については「まだ誰も知らない」と前置きした上で、実際に導入すれば米国は「極めて強硬に対応する」と警告
■ 米共和党上院トップのマコネル院内総務は、中国政府が香港への「弾圧」を強めれば上院は米中関係を見直すと警告
5月22日:
■中国政府が香港に国家安全法の制定を義務付ける新たな法案を全国人民代表大会(全人代)に提出
■ポンペオ米国務長官は同日、「横暴かつ破滅的で、香港の自治の終えんの前兆」と非難
■米商務省が人権侵害や国家安全保障上の懸念を理由に33の中国企業・団体をブラックリストに追加すると発表
5月23日:
■中国外務省の香港出先機関の報道官は「(香港の高度な自治は)今後も変わらない。香港の海外投資家の利益は同法の下で引き続き保護される」との声明を発表。「内政干渉をする国」は「ダブル・スタンダードで、ギャングの論理」を振りかざしているとし、「どれほど激しく中傷・挑発・強要・脅迫されても、中国人民は今後も揺るぎなく国家の主権と安全保障を守っていく」と表明
5月24日:
■香港で、中国の香港国家安全法制定に抗議するデモが行われ、警察は数千人規模のデモ隊を解散させるため、催涙ガスや放水砲を使用
■中国の王毅国務委員兼外相が、米国に対し新型コロナウイルス対策で時間を無駄にすべきではないと主張、虚偽の情報を広めたり中国を攻撃するのではなく、感染対策で中国と協力すべきだと述べた。米国で多数の死者が出ていることに深い哀悼の意を表した上で「残念ながら、猛威を振るうウイルスに加えて、米国では政治的なウイルスも広がっているようだ。この政治的なウイルスはあらゆる機会をとらえて中国を攻撃・中傷している」と発言
■オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は米NBCテレビに対し、「この法律によって中国は実質的に香港を乗っ取ろうとしているようだ」と述べ、「そうなれば、ポンペオ国務長官は香港が高度の自治を維持していると認定できなくなる可能性が高く、香港と中国に制裁が科されることになる」と指摘
5月25日:
■香港の治安部門トップである李家超(ジョン・リー)保安局長は、中国による国家安全法導入計画を巡り香港で抗議デモが起きたことを受け、香港内で「テロリズム」が拡大しているとの認識を示す
■中国外務省は「国家安全法」を香港に導入する動きを米国が批判し、制裁発動の可能性も示唆したことについて、香港に関する中国の利益を米国が弱めようとするなら対抗措置を講じる方針を示す。また前日のオブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の発言について中国政府が米政府に厳しく抗議したと述べた
5月26日:
■米商工会議所は、中国政府が制定を目指す「香港国家安全法」によって「一国二制度」で保障された香港の高度の自治が脅かされる恐れがあるとの懸念を表明し、緊張緩和に努めるよう中国に要請した。商工会議所は声明で、香港が魅力的な投資先かつ金融の中心地という役割を果たす上で不可欠である特別な地位を損なうことは「重大な過ち」と強調
■米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は、FOX系メディアとのインタビューで、新型コロナウイルスなどを巡ってトランプ大統領は中国に対し「怒り心頭」に発しており、米中通商合意の重要性は以前よりも薄れているという認識を示した。また香港を巡る中国の対応は大きな誤りだとし、「香港国家安全法」制定の動きをけん制した。その上で「米国企業がサプライチェーン(供給網)や生産拠点を(香港や中国から)米国本土に戻す場合、移転費用の全額補填に向け、できるだけのことを行う」と表明
■ トランプ米大統領は、中国が香港を対象にした国家安全法を制定する方針を示したことを巡り、米政府は強力な対応を準備しており週内に発表すると明らかにした。ホワイトハウスで記者団に述べた。香港問題を巡り中国への制裁や中国からの留学生や研究者に対する査証(ビザ)の発給制限を計画しているか問われ、「われわれは何らかの措置を取ろうとしている。非常に興味深いものになるだろう。数日内に説明するつもりだ」と応じた。制裁が含まれるかとの質問には「週内に分かることだ。非常に強力な内容になるだろう」とした
■米下院は27日に上院で既に可決されたウイグル人権法案を承認し、トランプ氏に送付する見通し。中国政府がウイグル族などイスラム教の少数民族を弾圧しているとして、トランプ政権に強硬な対応を求める内容。トランプ氏は同法案に署名するか問われ、26日中にさらなる説明を受ける予定で「徹底的に精査する」考えだと述べたが、明確な回答はなし
■米上院で超党派法案が検討中であり、中国が香港に対する新たな制限を導入すれば中国の政府当局者や銀行に制裁を科す内容。具体的には香港国家安全法の施行に責任を持つ個人の米国における不動産資産を凍結するものとなっている。過去の法案と異なり、当局者と大きなビジネスを手掛ける中国の銀行も対象とし、米国の銀行との取引を断ち、米ドル取引へのアクセスを制限する
5月27日:
■中国外務省の趙立堅報道官は定例会見で、前日のトランプ大統領発言について問われ、「われわれはいかなる外国の干渉も受け入れない。外部勢力が香港に干渉する間違った行動を取れば、対抗措置を取って反撃する」と指摘。「この問題は純粋に中国の内政問題だ」と強調した
まとめ
といった具合に連日香港をめぐる報道が相次いでおり、個人的には市場ひいては自分の資産への悪影響が出ないかを懸念しているのだが、実際の市場は以下の通り(ダウ工業平均)。単に自分がこの件を気にし過ぎなのだろうか。
22日はやや下がっているが、昨日26日のダウ工業平均は2.17%と大きく上昇している。理由はあまり明確ではないのだが、25日がメモリアルデーで閉場だったこと、予想を上回った住宅販売指標やJPモルガン・チェースのダイモンCEO(最高経営責任者)が、年後半の貸倒引当金
について増やす必要はないと指摘したことなどが材料視された模様。
一応為替も確認してみたが、こちらも特段大きな影響はない。
経済再開やワクチン関連の前向きな報道もあり、このまま市場も持ち直してくれるといいのだが、やはり米中の対立は自分にとってはどうしても気に掛かるところ。今週明らかにするとしているトランプ大統領の措置がどのようなものにるのか引き続き注意していこう。
ちなみに自分が米国株所有なので米国を中心に見ているが、最近は英紙デーリー・テレグラフ(電子版)が22日に、英国のジョンソン首相が次世代通信規格「5G」の通信網構築で、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の参入余地を制限する方針(1月には限定的な参入を容認する方針だった)と報道したり、12日に中国がオーストラリア産牛肉の輸入を一部停止したと発表したり、中国と各国の間で色々と軋轢が生じている。原因は新型コロナウイルスを巡る中国の対応だったり、それに対する中国の報復措置だったりする。
中国は世界経済にとって無視できないファクターではあると思うので、今後も神経質な相場が続きそうな気がするのだが、どうだろう。自分の市場に対する考え(予想まではいかない)は外れることが多いので、これも外れてくれると良いのだが。