はじめに
2020年7月29日は、自分が所有しており昨年来の737MAXの問題に加えて新型コロナウイルスの影響による航空需要の減少により株価低迷が続いているボーイング(BA)の2020年第2四半期決算発表があった。
決算内容、特に今後の見通しがどのようになったかについて注意しながら、以下にその内容をまとめて整理しておく。
2020年第2四半期決算発表
以下の内容はボーイングの企業サイトより引用・抜粋。
- 2020年第2四半期の売上高(Revenues)は118億700万ドルで、前年同期比25%減少
- 2020年第2四半期の純損失(Net Loss)は23億9500万ドルの損失、前年同期は29億4200万ドルの損失
- 2020年第2四半期の一株当たり損失(Loss Per Share)は4.20ドルの損失、前年同期の一株当たり損失は5.21ドル
- 2020年第2四半期の調整後一株当たり損失(Core Loss Per Share)は4.79ドルの損失、前年同期の一株当たり損失は5.82ドル
- 2020年第2四半期のフリーキャッシュフローはマイナス56億2800万ドル、前年同期はマイナス10億1100万ドル
- 2020年第2四半期の財務状況は総債務が614億ドル、前四半期の389億ドルから57.8%増加
- 2020年第2四半期の商用機の引き渡しは20件、前年同期は90件で78%のマイナス
全般的なビジネス環境については以下の様にまとめている。
防衛、宇宙、政府向けサービス事業は比較的安定しているが、商用機部門は引き続きCOVID-19の影響が顕著であり、旅客需要も予想できない状態が続いているとしている。
具体的に商用機部門を見てみると、
売上が前年同期の47億2200万ドルから16億3300万ドルへ65%の減少。そして737MAXの認証テストを7月に実施したが、引き続きFAA(米連邦航空局)と運航再開に向けた作業を実施しているとするにとどまり、具体的な運航再開時期については触れていない。
今回も2020年の通期見通しや、第3四半期の見通しについては四半期決算資料では言及されず。
その他めぼしいところでは、
- 前四半期決算で言及した約16万人の従業員を10%削減する計画に関連し、4億6800万ドルの費用を計上
- 737型機の生産コストやコロナ流行に絡む工場閉鎖の影響で、商用機部門の営業利益は8億4500万ドル押し下げられた
といった点が目を引いた。
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2020年第2四半期の売上高(Revenues)は118億700万ドル、市場予想の131億6000万ドルを下回っている
- 2020年第2四半期の調整後一株当たり損失(Core Loss Per Share)は4.79ドルの損失、市場予想の2.54ドルの損失よりも悪い
となっている。
まとめ
この様な決算内容を受けてボーイングの株価は、
2.83%のマイナス。同日のダウ工業平均が0.61%、S&P 500が1.24%それぞれ上昇した事を踏まえると大きく下落している。市場予想を超える赤字、一株当たり損失を考えればそれも致し方ないところだろう。
ただ過去半年の株価を見てみると
6月中旬以降は150ドル以上を維持しているのが不思議なところ。今回の決算発表内容は既に株価に織り込み済みだったという事なのだろうか。
いずれにせよ、COVID-19の影響による旅客需要は予想がつかないが、737MAX機の運航再開がはっきりするまで、そして自分としては配当が出るぐらいになるまでボーイング株は情報を気にする程度に留めておき、追加購入はしないのが無難だろう。
補足
ボーイングの決算発表後の8月3日に、米連邦航空局(FAA)が「737MAX」の安全問題への対応策として、4点の重要な設計変更を要求する「耐空性改善通報」案を公表している。
通報案によると、FAAは飛行制御ソフトウエアの修正とディスプレー警告表示ソフトウエアの修正、乗員操作手順の一部改訂、配線変更を義務付ける方針とのこと。
何故これをわざわざ補足として付け加えたかというと、これは運航再開に向けた一歩であるともいえるので必ずしも悪い事ではないと思うのだが、一方で設計変更に対するパブリックコメント募集期間が45日間であるため。パイロット訓練手順の最終確定など、737MAXの運航再開前に完了しなければならない残されている重要な手続きのことを考えると、年内の運航再開は厳しいのではないだろうか。そうなるとボーイングの本格的な回復は2021年以降になる公算が高い気がするのだが…。