はじめに
日本時間の2026年2月28日(土)に米・イスラエルのイラン大規模攻撃が開始され、1ヶ月超に渡って戦闘が続いていた訳だが、日本時間2026年4月8日(水)朝には米・イランが2週間の停戦合意を発表していた。
そして日本時間2026年4月11日(土)から12日(日)にかけてパキスタンで米・イランが紛争終結に向けて協議を行ったのだが、掲題の通り協議は物別れに終わっている。
そのため週明け2026年4月13日(月)の米国市場がどこまで下がるのかと危惧していたのだが、実際の米国主要3株式指数は

取引開始直後こそ下落して始まったものの、いずれもその後上昇して前営業日比プラスで取引を終えるという意外な結果となっている。
以下、米イラン停戦協議の概要とその後の主な動き、それを受けた米国市場について確認し整理しておく。
パキスタンでの米・イラン停戦協議概要
協議は日本時間2026年4月11日(土)から12日(日)にかけて実施された。
- 米国からはバンス副大統領、ウィトコフ中東担当特使、イラン側からはガリバフ国会議長やアラグチ外相らが出席
- 協議は21時間に及んだとされるが、合意には至らず
- 協議終了後のコメント/報道
- バンス副大統領の記者団へのコメント
- 悪いニュースは合意に達しなかったということだ
- 米国にとってよりも、イランにとってはるかに悪いニュースだと思う
- 合意しないまま米国に戻ることになる。我々のレッドラインが何であるかは明確に示した
- イランが核兵器を追求せず、核兵器の迅速な開発を可能にする手段も求めないという明確な確約が必要だ。それが米大統領の中核的な目標であり、今回の交渉で達成を目指してきたことだ
- イラン側との交渉中に、トランプ米大統領と数回から十数回にわたって話した
- イランメディアの報道(ソースは複数)
- 米国の過度な要求が合意の妨げになった
- 一部の問題では合意があったものの、ホルムズ海峡とイランの核計画が主な相違点であった
- イラン外務省報道官によると協議は不信感の雰囲気の中で行われた
- 1回の会合だけで合意に達すると期待していなかったのは当然だ
- いくつかの相違は残っているが、交渉は継続する
- パキスタンのダール外相の声明
- 両国が停戦へのコミットメントを維持し続けることが不可欠だ
- バンス副大統領の記者団へのコメント
- 協議中のトランプ大統領のSNS投稿
- 交渉はしているが、合意するかどうかは私にとって違いはない。我々は勝利したからだ
週末の米・イラン停戦協議終了後の主な動き
以下は基本的に現地時間。
2026年4月12日(日)
- トランプ大統領のSNSへの投稿抜粋
- イランとの会談は早朝に始まり、夜通し続き、20時間近くに及んだ
- 詳細に説明し、得られた多くのことを話すこともできるが、重要なことはただ一つ、イランは核開発の野望を放棄するつもりはないということだ
- 会議はうまくいき、ほとんどの点で合意に至ったが、本当に重要な唯一の点である核問題については合意に至らなかった
- イランはホルムズ海峡を開放すると約束したが、それを意図的に怠った
- 即日発効で、世界最高峰の米国海軍は、ホルムズ海峡に出入りしようとするすべての船舶の封鎖を開始する
- また、イランに通行料を支払った国際水域のすべての船舶を捜索し、阻止するよう海軍に指示した。違法な通行料を支払った者は、公海を安全に航行することはできない
- 我々はまた、イランが海峡に敷設した機雷の破壊を開始する
- SNS投稿後、トランプ大統領のFOXニュースでのインタビュー
- 協議は非常に友好的だった
- 彼らはこの件で交渉のテーブルに着くと私は信じている。なぜなら核兵器が欲しいなどと言うほど愚かな人間はいないし、彼らには切り札がないからだ
- 北大西洋条約機構(NATO)の同盟国が海峡での作戦に協力したいと申し出ている
- (秋までに原油とガソリンの価格が下がるかどうか)下がるかもしれないし、同じかもしれない。あるいは少し上がるかもしれないが、概ね同じ水準になるはずだ
- トランプ大統領のSNS投稿後の革命防衛隊の声明
- 海峡に接近する軍艦は停戦協定違反と見なされ、断固とした厳しい措置が取られる
- トランプ大統領のSNS投稿後のガリバフ国会議長のSNS投稿
- 現在のガソリン価格をせいぜい楽しんでおくことだ。いわゆる「封鎖」により、間もなく4~5ドルのガソリン価格を懐かしく思うようになるだろう
2026年4月13日(月)
- イラン軍報道官のコメント
- (米国の)国際水域の船舶に対する制限は違法であり、海賊行為に等しい
- ホルムズ海峡を管理するための恒久的なメカニズムを断固として実行する
- ペルシャ湾の港湾は全てに開放されるか、あるいは誰にも開放されないかのいずれかでなければならない
- イランの港湾が危険にさらされれば、ペルシャ湾やオマーン湾のどの港湾も安全ではあり得ない
- 英スターマー首相のBBCラジオでの発言
- 我々は封鎖を支持していない
- 海峡を完全に開放することが極めて重要であり、我々はそこに全力を注いできたし、今後もそうしていく
- 明確な法的根拠と「綿密に練られた計画がない限り、参戦はしない
- 私の決断は極めて明確だ。いかなる圧力があろうとも ー 実際かなりの圧力がかかっているが ー 我々が戦争に巻き込まれることはない
- 仏マクロン大統領のSNS投稿
- ホルムズ海峡に関し、今後数日中に英国および同海峡における航行の自由を回復することを目的とした平和的な多国籍任務への参加を望む国々との会議を開催する予定だ
- この厳格に防衛的な任務は、紛争当事者とは一線を画すものであり、状況が許す限り速やかに展開されることを意図している
- 米東部夏時間10:00から、米中央軍がイランの港に出入りする全ての船舶に対する封鎖措置を開始
- ホルムズ海峡の東側に位置するオマーン湾とアラビア海でイランの港湾・沿岸部への海上封鎖を実施
- イランの港湾、石油ターミナル、沿岸施設に出入りする船舶は、国籍を問わず、アクセス制限の対象となる
- 許可なく封鎖海域に出入りする船舶は、臨検、進路変更、拿捕(だほ)の対象
- 封鎖の対象はイラン沿岸全域で、イラン以外を目的地とする航行は妨げない
- トランプ大統領のホワイトハウスでの記者団に対する発言
- イラン側から13日朝に電話があった
- 彼らは合意に向けて取り組みたいと考えている
- (イランの核兵器保有に関して)我々は世界を脅迫する国を許すわけにはいかない。イランの核兵器保有を認めるいかなる合意にも応じない
- バンス副大統領は、非常に良い仕事をした
- ロイター通信の報道
- 米当局者は、米国とイランの間で引き続き協議が行われていると述べ、合意に向けた取り組みで前進があるとの認識を示した
- 米ニュースサイトのアクシオスの報道
- 米当局者や関係筋の話として、週末の協議で米側はウラン濃縮を20年間停止するよう提案し、イラン側はより短い一桁の年数の期間を提案した
- 米側は全ての高濃縮ウランを国外に撤去することも要求し、これに対しイラン側は監視下でのダウンブレンド(濃縮度を緩める)プロセスに同意する姿勢を示した
- 協議は合意には至らなかったが、イラン側は暫定合意に近づいていると受け止めていたとされ、合意に至らなかったとするバンス副大統領の記者会見に不意を突かれた形となった、とのこと
- バンス副大統領のFOXニュースでのインタビュー
- イランとの協議では大きな進展があった
- イランはわれわれの方向に動いた。だからこそ、良い兆候が幾らか見られたと言えるだろう。しかし、彼らの動きは十分ではなかった
- (さらなる協議が行われるかどうか)ボールはイラン側にある
- 米国はイランがホルムズ海峡の開放に向けて前進することを期待しており、そうでなければ交渉の構図が変わる
2026年4月13日の市場の動き
米国主要3株式指数
冒頭に挙げた通り米主要3株式指数はいずれも上昇。S&P 500の日中の動きを見てみると

開場直後は下落したものの、すぐに前週末と同水準に戻りそのレベルでの動きが続いた。12時過ぎにやや上昇に転じているのはトランプ大統領が記者会見でイラン側が交渉継続/合意を望んでいると発言したことを受けてのこと。米軍による海上封鎖の状況見極めもあってかそのまま上昇とはならなかったが、閉場間際にバンス副大統領の発言が材料視されて一段高となって取引を終えている。
米国10年債

開場直後こし利回りが上昇した(債権売り)が、その後は方向感に乏しいものの前週末と大きく変わらない水準での動き。そしてトランプ大統領の記者会見での発言が伝わると、利回りは低下してそのまま取引を終えている。日中の変動幅はそれほど大きくはなく、事態の推移を見極めようという市場の姿勢が株式市場よりも強く表れているように思われる。
ドル円為替

前週末は1ドル=159.2円台だったが、週末の米イラン停戦協議が物別れに終わった事もあって週明けの取引は1ドル=159.8円を超えて始まり、1ドル=159.75円を挟んで方向感の乏しい推移が続いていた。
そして株式市場や債券市場がトランプ大統領のホワイトハウス会見に反応した様にドル円為替もそれを受けてドル安に転じた後は、その流れが変わることなく1ドル=158.7円までドル安となり現在もその流れは続いている。
ニューヨーク原油先物価格

前週末は1バレル=約96ドルだったが、週末の米イラン停戦協議が不調だったことを受けて週明けは1バレル=105ドル近辺に急上昇して取引を開始。その後各種状況のアップデートを受けて1バレル=102~105ドルで方向感が定まらない荒い動きを続けていたが、やはりトランプ大統領のホワイトハウスでの会見を受けて大きく下落し、再び1バレル=100ドルを割って90ドル台に。その後も方向感が定まらない荒い動きを続けているのは変わらないが、そのレンジは主に96~98ドルとなっている。
まとめ
以上、合意に至らなかった米イラン停戦協議の概要、そしてそれを受けての市場の動きについてまとめてみた。
週末の協議が決裂したことを受けて週明けの株式市場下落は覚悟しており、実際に下落して始まったのだが、起きて市場を確認してみると予想外にプラスに転じて取引を終えていた。
開場直後の下落幅が1%未満とそれ程大きくなかったのが意外だったが、これは市場が協議は難航すると冷静に見ていたことが原因だろう。そして上述の様に上昇に転じたのは米・イランが更なる協議を排除した訳ではないことが伝わったことが原因と思われる。
今回の様に市場も一時期よりも落ち着いた反応(特に3月最終日から)を示しており、掲題に挙げた様にS&P 500は

2月末の戦闘開始前の水準とほぼ同等の水準まで持ち直している。3月下旬にはNASDAQ総合とダウ工業平均が直近高値から10%下落となるいわゆる調整局面に入っていた(S&P 500は8.7%下落)ことを思うと大きな改善ではある。
とはいえ協議が完全に決裂し、再び戦闘状態に入ったりすれば株式市場は大きく下落するだろうし、交渉戦術という側面もあるが米・イラン双方の隔たりやイスラエルの動きなどを考えるとその可能性も決して低いとは思えないし、事態が長期化している現在、直接的な出来事はもちろん、その影響が経済指標などに表れてくれば市場心理が再び悪化する可能性もある。
何とか市場心理が持ち直している間に、事態鎮静化に向けた動きが進展することを願いたい。