はじめに
米イランの緊張については2月下旬にほんの少しだけ懸念を言及していたのだが、日本時間2026年2月28日(土)の15時過ぎ、アメリカ・イスラエルがイランに大規模攻撃を開始した(オペレーション名は、米国が「Operation Epic Fury」、イスラエルが「Operation Shield of Judah(イスラエル国防軍)」または「Roaring Lion(ネタニヤフ政権やイスラエルメディアによる呼称)」)。
以下、その大まかな流れと、それ以降初の取引となる3月2日(月)の米国市場はどうなったかについて確認しておくことにする。
2026年2月、アメリカ・イスラエルがイランに大規模攻撃の大まかな流れ
アメリカ・イスラエルがイランに大規模攻撃に至るには様々な理由があるだろうが、個人的には2026年2月に米国とイランによる核開発交渉が事実上決裂したことが直接の大規模攻撃引き金なのだろうとは思う。以下は日本時間(日付)での主な大まかな流れ。現時点では情報が錯綜し、随時アップデートされており、正確性に欠ける点には注意。特にホルムズ海峡封鎖については混乱が多い。
【2026年2月28日(土)】
- 15時前
- アメリカ・イスラエルがイランに大規模攻撃を開始
- 16時半
- トランプ大統領が緊急会見でイランに大規模攻撃を開始したことを発表
- 18時
- イスラエル国防軍(IDF)が「Shield of Judah」の第1段階完了を報告
- 20時過ぎ
- イラン革命防衛隊(IRGC)による「報復宣言」の声明
【2026年3月1日(日)】
- 2時過ぎ
- イラン革命防衛隊(IRGC)が残存するミサイル基地から、湾岸諸国にある米軍基地計27カ所へ向けて弾道ミサイルを数百発を発射
- 4時
- トランプ大統領がハメネイ師の死亡を発表
- 5時半
- イラン政府及びイラン革命防衛隊が「ホルムズ海峡を敵対勢力に対して完全に閉鎖した」と宣言
- 10時頃
- イラン国営メディアがハメネイ師の死亡を発表
- 12時過ぎ
- トランプ大統領がSNSで「これはイラクではない。また別の終わりのない戦争でもない(This is NOT Iraq. This is NOT another endless war.)」と投稿
- 14時
- ペゼシュキアン大統領を議長とする「緊急暫定統治評議会」の設置が発表(しかし、革命防衛隊強硬派との間で、報復継続か停戦かを巡り激しい内部対立が報じられている)
- 23時
- イラン軍が海峡の最狭部に複数の機雷を敷設した可能性がある(potential risk of mines being laid)との情報が米運輸省海事局(MRAD)から発表
【2026年3月2日(月)】
- 午前
- トランプ大統領が複数のメディアインタビューに対して以下のコメント
- 作戦期間は4週間から5週間程度
- イランの新指導部は米国との協議を望んでいる
- トランプ大統領が複数のメディアインタビューに対して以下のコメント
- 20時過ぎ
- イラン革命防衛隊が「ホルムズ海峡は敵対勢力に対して完全に閉鎖された」と宣言
- 22時
- ヘグセス米国防長官とケイン統合参謀本部議長による国防総省での共同記者会見におけるコメント
- ヘグセス長官
- 我々がこの戦争を始めたのではないが、トランプ大統領の下で我々が終結させる
- これはイラクではない。終わりのないものではない
- 大統領がスケジュールに縛られることはないだろう
- ケイン統合参謀本部議長
- (この作戦は)一晩で終わるようなものではない
- 場合によっては非常に困難なものになるだろう
- ヘグセス長官
- ヘグセス米国防長官とケイン統合参謀本部議長による国防総省での共同記者会見におけるコメント
- 23時過ぎ(米国市場開場前)
- トランプ大統領がCNNのインタビューで以下の発言
- 我々は彼らを徹底的に叩きのめしている
- あまり長く続くのは見たくない。4週間くらいだろうと常に思っていた。予定より少し早い
- まだ彼らに激しい打撃を与え始めたばかりだ。大きな波はまだ来ていない。大きな波はもうすぐ来る
- (イランによる周辺諸国の攻撃について)恐らくそれが最大の驚きだった
- 誰が指導者になるかは分からない。彼らが誰を選ぶかも分からない。運が良ければ、自分たちのやるべきことを熟知した人物が就任するかもしれない
- トランプ大統領がCNNのインタビューで以下の発言
【2026年3月3日(火)】
- 0時過ぎ
- FOXニュースが米中央軍(CENTCOM)からの情報として、「ホルムズ海峡の封鎖は確認されていない」と報道
- 1時~2時頃
- トランプ大統領のホワイトハウスにおける会見でのコメント
- 当初は4〜5週間を見込んでいたが、もっと長く(far longer)続く可能性もある。必要なだけやる
- 私は終わりのない戦争はしないと言ったし、その通りにする(I said no more endless wars, and I meant it)
- (地上部隊の派遣について)必要であれば排除しない
- (ホルムズ海峡の封鎖や原油高騰について)心配していない(lack of concern)
- トランプ大統領のホワイトハウスにおける会見でのコメント
- 朝
- イスラエル軍がレバノン南部への地上侵攻を開始との報道
- 昼頃
- ホルムズ海峡が事実上封鎖(機能しなくなった)ことについての報道が拡散
- 夕方
- 主要欧州市場は前日比下落で始まり、その後も下げ幅を拡大している(これを書いている日本時間3月3日21時半過ぎは2%台後半を超える大幅下落)
2026年3月2日(月)の市場の動き
米国株式市場

いずれも開場直後は前日比1%前後の下落で取引をスタートしたが、徐々に盛り返して最終的にはS&P 500、NASDAQ総合は前日比ややプラス、ダウ工業平均はやや下落に留まっている。
日中のS&P 500の動きを見てみると

前日比1%前後の下落のスタート後は影響を見極めようとする動きやエネルギー株、防衛株の上昇もあってやや持ち直す。その後10時頃に「ホルムズ海峡封鎖は確認されていない」との報道の影響とそれの見極めで方向感に欠ける動き。11時半ごろにトランプ大統領が会見で「これはイラクではない」、「当初の想定は4〜5週間」といったこれまでの発言/投稿を強調したことで前日とほぼ同じ水準に戻った。そして14時頃からトランプ大統領の会見内容に基づくメディアなどの分析が報じられ始め、やや安堵感が広がり前日比プラスとなったものの、やはり不透明感から値を戻して前日比ややプラスで取引を終えている。
米国10年債

米国株式市場が開場する米国東部標準時9:30頃は上記チャートのCST(米国中部標準時)では8:30。
週末の米国とイスラエルによるイラン攻撃を経ての週明けの取引は利回り上昇(債権売り)で始まり、その後も利回りは上昇し4.05%程度の水準で取引を終えている。
通常、地政学リスクが意識されると、株式から比較的安全とされる債券買い(利回り低下)となるのだが、今回は原油、天然ガス価格(カタールエナジーがLNG生産停止を発表している)が上昇し、インフレ懸念が強まったことで債券が売られたものと思われる。
ドル円為替

週明けの取引は前週末の1ドル=156円前後から1ドル=156円半ばで始まる。しばらくはややドル安となって1ドル=156.25円程度となったが、その後はドル高が進み1ドル=157円台に。これは概ね原油先物価格の上昇と連動しており、エネルギー価格高騰の影響を受けやすい円が影響を受けたということだろう。また、その後米国市場の開場前取引が動き出し始めると一段とドルが上昇し1ドル=157円台半ばを超える局面も。その後は1ドル=157.5円を切る水準での推移が続いていたが、欧州市場が始まると1ドル=157.5円を超える動きとなっている。
ニューヨーク原油先物価格

週明けの取引は前週末の1バレル=67ドル前半から1バレル=72ドル台へと急騰。その後1バレル=70ドルを割る局面もあったが、概ね1バレル=70ドル~73ドルを挟んで動きの激しい推移。そして欧州市場が本格化すると更に上昇し1バレル=77ドルを超える局面も。ホルムズ海峡封鎖やイラン情勢が周辺産油国へ及ぼす影響についての報道が錯綜していることが値動きの荒い原因と思われる。
まとめ
以上、2026年2月28日からのアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃の大まかな動きと、それを受けて週明けの3月2日(月)の米国市場がどう反応したかについてまとめてみた。
米国株式市場は大幅下落することを覚悟していたのだが、意外にも前週末からほぼ変わらずで終えている。トランプ大統領がイラク戦争とは違い、終わりのない戦争ではないと強調したことが株式市場に一定の安堵感をもたらしたのだろう。ただS&P 500主要11セクターでは上昇したのは4セクター(エネルギー、工業、情報、不動産)に留まっており、セクターごとのバラつきが大きい。ただ上述した様に既に始まった3月3日の欧州市場は大きく下落しており、米国株式市場の時間前取引でも1%台後半の下落で推移となっており、徐々に経済への影響が明らかになってきた(イランによる中東エネルギー施設への攻撃など)ことが市場に反映されつつあるようだ。
また米国債券市場は、先述の通り株式から比較的安全とされる債券買い(利回り低下)となると思われたのだが、原油、天然ガス価格が上昇し、インフレ懸念が強まったことで債券が売られて利回りが上昇している。
CMEのフェドウォッチツールでは6月FOMCでの利下げ確率が、2月27日の46%から3月2日40%に低下し、代わりに6月FOMCでの利下げ据え置きが2月27日の43%から57%へと上昇して逆転し、次回利下げは6月FOMCではなく7月FOMCになるとの見方になっている。
原油先物価格については、ホルムズ海峡封鎖やイラン情勢が周辺産油国へ及ぼす影響を睨んで先週から高値圏で荒い動きが続いており、その影響を受けやすい円が安くなっているという状況。
今後の先行きは、イランへの軍事侵攻がどういう形で終わるのか、短期で済むのか長期になるのか、米国市場や原油/為替への影響がどういう形でどの程度出てくるのか、そしてそれらを市場がどう判断するのか等、極めて不透明。これ以外にもAIに関する懸念等があり、しばらくは資産の減少傾向が続くことを覚悟しておいた方がいいだろう。イラク情勢が早期に事態が鎮静化することを願いたい。