はじめに
2025年6月13日(金)にイスラエルがイランの核関連施設を空爆するまでの経緯、そして日本時間2025年6月15日(日)夜までの状況については
でまとめたが、その後もイラン/イスラエルは双方断続的に攻撃を行っている一方で、各国が事態の鎮静化へ向けての動きも見せている。
そんな中、米現地時間の2025年6月18日(火)の米国市場取引中にトランプ大統領が掲題の通り、イランに対して無条件降伏要求を行った。以下前回にまとめた以降のイスラエル/イランの状況及び米国市場の動きについて整理しておくことにする。
日本時間2025年6月15日(日)夜以降のイスラエル/イラン情勢
主なものを時系列順に列挙。日付については特記が無い限りは現地時間。
2025年6月15日(日)
- 米CBSニュースが米政府関係者3人の話として、トランプ大統領がイスラエルによるイランの最高指導者アリ・ハメネイ師の殺害計画を認めなかったと報じる
- ロイター通信が、イランは停戦を促すカタール/オマーンに対し、イスラエルからの攻撃が続く限り停戦交渉には応じないとの立場を伝えたと報じる
- トランプ大統領がG7に出発する前ホワイトハウスで記者団に対し以下の発言
- イスラエルとイランが(停戦で)合意することを望む。合意する時だ。可能性は十分ある
- 時には彼らは争わなければならないこともあるが、どうなるか見てみよう。私は合意する可能性は高いと思う
- イスラエルの防衛を支援し続ける
- (イスラエルにイラン空爆の停止を求めたか)いいたくない
2025年6月16日(月)
- ウォール・ストリート・ジャーナル誌が当局者の話として、イランはアラブ諸国の仲介者を通してイスラエルと米国にメッセージを送り、敵対行為の終結のほか、核開発計画を巡る協議の再開を求める強いシグナルを送っている、と報じる
- ロシア大統領府のペスコフ報道官が以下の発言
- (先週述べたイランが製造した余剰核物質をロシアに移送し燃料に転換する用意があるという発言)この提案は依然として有効だ。むろん、戦闘の勃発で状況は深刻なほど複雑化した
- ロシアはこの危機の根本原因を除去するため、必要なあらゆることを行う用意が依然としてある。だが状況は深刻というよりさらに悪化しており、当然ながら、これは状況を好転させるものではない
- われわれは危険な緊張の高まりを招いたそうした行動を非難している。第2に、現在イスラエルが行っている爆撃を背景にイランで社会の結束が強まっていることにも注目している
- ロイター通信がウォール・ストリート・ジャーナル誌の報道を受けて複数関係者の以下の追加報道
- イランは、カタール、サウジアラビア、オマーンに対し、トランプ米大統領がイスラエルに即時停戦に合意するよう圧力をかけるよう要請した
- イランは見返りとして、米国との核協議で柔軟性を示す用意があるとのこと
- トランプ大統領がG7におけるカナダのカーニー首相との会談で以下の発言
- イランはこの戦争に勝っていないと言える。イランは協議を行うべきだ。手遅れになる前に直ちに協議するべきだ
- トランプ大統領がSNSに以下の投稿
- イランは核兵器を持つことはできない。何度も言ってきた!誰もが直ちにテヘランから避難すべきだ!
- ホワイトハウスのレビット報道官が以下の発表
- トランプ大統領は多くの「重要問題」に対応するため、16日夜にG7が開催されているカナダから米ワシントンに戻る見通し
- G7が以下の声明を発表
- 中東の平和と安定へのコミットメントを再確認する
- イスラエルに自国を防衛する権利があることを確認する。イスラエルの安全保障に対する支持を改めて表明する
- イランは地域の不安定な情勢とテロの根源だである。(G7は)イランが決して核兵器を持てないことを明確にする
- イラン危機の解決が、ガザでの停戦を含む中東における敵対行為のより広範な緩和につながることを強く求める
- エネルギー市場の安定を守るため、志を同じくする国々と連携する用意がある
2025年6月17日(火)
- トランプ大統領がSNSに以下の投稿
- もし(イランが)話したいのなら、私にどう連絡すればいいか知っているはずだ
- (イランは)提示された取引に応じるべきだった。そうすれば多くの命が救われただろう
- トランプ大統領が大統領専用機内で記者団に対し以下の発言
- イラン核問題の「真の終結」を望んでいる
- (それはイランが核兵器を)完全に放棄することだ
- イランは核兵器を保有してはならない。非常に単純なことだ
- (イランとの協議について)ウィトコフ中東担当特使かバンス副大統領を派遣する可能性があるが、帰国後に何が起こるかによる
- (イスラエルがイランへの攻撃を緩めるか)今後2日で分かるだろう。現時点では誰も緩めていない
- (イランがどの程度核兵器保有に近づいていると考えているか)かなり近い
- ロイター通信が以下の報道
- 米軍が中東地域により多くの戦闘機を配備し、他の軍用機の配備期間を延長
- 当局者によると配備されるのはF16、F22、F35戦闘機など。こうした戦闘機はドローンなどの迎撃に使用されてきたとし、防衛的な意味合いを強調した
- トランプ大統領がSNSに以下の投稿
- われわれは、いわゆる「最高指導者」がどこに隠れているか正確に把握している。容易な標的だが、そこにいる限り安全だ。少なくとも今のところは、われわれは排除(殺害!)するつもりはない
- だが民間人や米兵に対するミサイル攻撃は望んでいない。われわれの忍耐は限界に達している
- トランプ大統領が上述のSNSの3分後に以下の投稿
- UNCONDITIONAL SURRENDER!(無条件降伏!)
- トランプ政権がホワイトハウスで国家安全保障会議(NSC)の会合を開き、中東情勢を巡り協議。会合は約90分に及んだが協議の詳細は現時点で明らかになっていない
- 米国務省がイスラエルの首都エルサレムにある米国大使館を18日から20日まで閉鎖すると発表
2025年6月18日(水)
- イランの最高指導者ハメネイ師がテレビで以下の声明
- トランプ米大統領の無条件降伏の要求は受け入れない
- イランに平和も戦争も押し付けることはできない
- いかなる米軍介入も間違いなく取り返しのつかない重大な損害を伴うことを米国は認識すべきだ
2025年6月16日(月)、17日(火)の米国市場の動き
イスラエルがイラン核関連施設に空爆を行った6月13日(金)の市場の動きについては
イスラエルのイラン核関連施設空爆直後の米国市場(2025/6)
を参照。
米国株式市場
6月16日(月)
6月17日(火)
6月16日(月)は、イスラエルとイランの攻撃が続く中でも、原油生産と輸出に今のところ大きな影響が出ていないことで原油価格が下落したことで6月13日(金)の下落要因でもあったインフレ懸念がやわらぎ、また既述の様にイランがカタール、サウジアラビア、オマーンに対し、トランプ米大統領がイスラエルに即時停戦に合意するよう圧力をかけるよう要請したとの報道でイスラエルとイランの休戦に対する期待が台頭したことで上昇。
6月17日(火)は、同日米商務省が発表した5月の小売売上高(季節調整済み)が前月比0.9%減少(市場予想は0.7%減少)だっことなどもあって前日比やや下落で取引を開始。しかしその後、米軍が中東に戦闘機を移動させたことやトランプ大統領のSNSへの投稿を受けて中東情勢への懸念が高まり下げ幅を拡大して取引を終えている。
米国10年債
6月16日(月)は方向感に欠ける動きだったが狭いレンジに留まっていたが、6月17日(火)は再び中東情勢への懸念から、比較的安全資産と見なされる米国債へ資金が流れ、利回りは低下して終えている。
本日米国時間6月18日にはFOMCの政策金利発表/パウエル議長の会見を控えているため、16日、17日は様子見模様が主流だったようにに思われる。
ドル円為替
先週時点では1ドル=144円前後だったドル円為替は、今週に入って1ドル=144円台半ばまでドル高。16日には原油/中東情勢への懸念緩和から一時1ドル=144円台を割り込んだが、その後は再び中東情勢への懸念が高まったことから徐々にドル買いが進み、1ドル=145円台までドル高となったが、その後ややドル安となり1ドル=144円台後半での推移となっている。
ニューヨーク原油先物価格
先週時点では1バレル=73ドル台前半だったニューヨーク原油先物価格は、週明けの取引直後は更に上昇し1バレル=75ドル前後。16日はやはり中東情勢の懸念緩和から下落基調となり一時1バレル=70ドルを割りこんだが、17日、18日には再び懸念が高まったことで1バレル=75ドルを挟んでの動きとなり、中東情勢によって大きく変動する不安定な動きとなっている。
まとめ
以上、前回まとめた日本時間2025年6月15日(日)22:00頃までのイスラエルによるイラン核関連施設空爆以降の主な動きと、それらを受けた16日(月)、17日(火)米国市場についてまとめてみた。
個人的には16日(月)の米国株式市場がイスラエル/イランの攻撃が続く中で上昇したのが意外であり、翌17日(火)のトランプ大統領の無条件降伏投稿など米国の圧力が早期解決の期待を高めて市場が上向くかと思ったのだが逆に紛争の激化への懸念を強めて下落幅を拡大したのも意外と、自分の見込みはハズレでばかりだった。しばらくは日々の中東情勢が市場に影響を与えていく状況が続きそうだ。
またここでまとめたイスラエル/イランの紛争以外にも、以前からの懸念要素である相互関税交渉(日米、米中、米EU、他)や上院で検討中の米歳出法案、各種経済指標、米政策金利などが複雑に絡んで更に不安定な市場となる可能性が高い。
とりあえずは、先に米国10年債のところで触れた本日予定されているFOMCの政策金利発表/パウエル議長の会見が穏当あるいは自分の資産にとって良い結果となることを願いたい。