2025年6月発表の米消費者物価指数(CPI)と市場の動き

はじめに

米国時間2025年6月11日(水)に2025年5月の米消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が米労働統計局から発表された。

前回2025年5月13日発表のCPIは市場予想を下回ったのだが、株式市場を除いて市場の反応は限定的。ただこれは前日5月12日に米中関税一時大幅引き下げが影響していた可能性もある。

その後の経済指標はまちまちで米国の関税政策によってインフレが加速している兆候が見られるものもあれば、そうでもないものもあり経済指標の判断が難しい状況が続いている気がしており、そのあたりの最新の所感は

2025年6月第1週の米各種経済指標と市場の動き(2025/6)

でまとめている。

そんな状況の中、今回のCPI結果内容とそれを受けて市場はどう動いたのかを確認して整理しておく。


2025年6月11日米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)発表の2025年5月消費者物価指数(CPI)

以下の情報は米労働省労働統計局の発表資料より引用・抜粋。

  • 2025年5月の前月比消費者物価指数(季節要因調整済)は前月比0.1%の上昇、市場予想は0.2%の上昇

  • 2025年5月の前年比消費者物価指数(季節要因調整済)は全品目では2.4%上昇、市場予想も2.4%の上昇。変動の大きい食品及びエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは前年比2.8%上昇、市場予想も2.9%の上昇、前月比では0.1%上昇、市場予想は0.3%の上昇

  • 家庭用食品(Food at home)は前年比2.2%上昇。2025年4月は前年比2.0%上昇
  • 電気代(Electricity)は前年比4.5%上昇。2025年4月は前年比3.6%上昇
  • 住居費(Shelter、主に家賃。サービス分野で最大の構成要素でCPI全体の約3分の2を占める)は前年比3.9%上昇。2025年4月は4.0%上昇

ブルームバーグの算出によると住宅とエネルギーを除いたサービス価格は前月比0.1%上昇(前月は0.2%上昇)。

今回のCPIは上乗せ分は一時停止はされたものの4月に米国が実施した関税(ほとんどの国に対する10%の基本関税はそのまま)の影響が反映されると予想されていたのだが、実際には市場予想を概ね下回る内容。

ただしこの結果を関税の影響が一時的なものであったと捉えるか、上乗せ分が反映されていないことや企業が追加コストを吸収している/関税発動前に在庫を確保していたためと捉えるかは判断が難しいところ。


同日の市場の動き

米国株式市場

主要3指数は前日比横ばいからやや下落。前半は予想を下回るCPI結果を受けてやや上昇したものの、後半は在イラク米大使館が地域的な安全保障上のリスクが高まっているとして避難命令を出す準備を進めていると報道されたことや、イラクのナシルザデ国防軍需相が、米国との核協議が予定される中、交渉が頓挫し米国との間に紛争が生じた場合、イランは地域の米軍基地を攻撃すると述べるなどの地政学的リスクの影響を受けて下落したものと思われる。

米国10年債

CPIが発表された米国東部夏時間8:30は上記チャートのCDT(米国中部夏時間)では7:30。

今回のCPI結果を受けて利回りは低下、その後は小動きだったが利回りは低下したままで取引を終えている。同日財務省が実施した10年債入札も堅調で、一時懸念のあった米国債売り(利回り上昇)の懸念はやや落ち着いてきている。

ドル円為替

CPIの発表があった米EDT8:30は上記ドル円チャートのGMT+1の13:30。

発表前は1ドル=145円台をやや上回る水準で推移していたが、CPIが市場予想を下回る伸びとなったことで利下げが意識され1ドル=144円台前半のドル安に。その後は米中関税交渉の進展などからややドル高となったものの、株式市場と同様に地政学リスクが意識されたためかドル安傾向が続き1ドル=143円台後半、そしてこれを書いている6月12日の米国市場開場前に発表された5月PPIを受けて1ドル=143円台前半となっている。


まとめ

今回のCPIも市場予想を下回る結果となったが、同日あった米中交渉や、中東情勢の緊迫化などの影響もあり、株式市場はほぼ変わらずの結果。またCPI結果も上述した様に捉え方が難しかったと思われる。CMEのフェドウォッチでは9月の利下げ確率がCPI発表前の53.5%から57.2%へとやや上昇している。

結局今回の経済指標も冒頭に挙げた最近の傾向通り、市場に大きな変動はもたらさなかった訳だが、本当にこの傾向が続くのか、それともどこかで関税の影響がはっきり経済指標に表れてくるのかは不透明。市場では7、8月の経済指標に顕著に表れてくるとの見方が有力なようだが、その前に米国の上乗せ関税一時停止90日間の期限が切れるため、そちらの結果/動きについても引き続き注意しておきたい。

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