はじめに
昨日2022年7月15日(金)には自分の所有しているシティグループ(C)の2022年第2四半期決算発表があった。
一昨日の7月14日(木)には同じ米銀株であり自分が所有しているJPモルガン・チェース(JPM)の決算発表があったのだが、決算を受けてJPモルガンは大きく下落しており
「JPモルガンの方がシティに比べて堅調な決算発表をすることが多いので、シティが決算を受けて更に下落するのではないかという懸念がある。昨日のJPモルガン決算を受けての下落でシティ株が下落をある程度織り込み済みで本日のシティ決算内容が冴えなくてもシティ株がそれ程下落しないことを期待したいのだがどうなるか。」
とシティ株の決算後株価を非常に懸念していたのだが、実際には
まさかの13%を超える想定外の急伸となった。
以下シティの決算内容を整理し、なぜシティ株が決算を受けて急上昇したのかについて確認しておくことにする。
シティグループ2022年第2四半期決算の概要
以下の内容はシティグループ企業サイトの発表資料より抜粋・引用。
- 収入(Total Revenues)は196億3800万ドルで前四半期より1%増、前年同期比11%増
- 純利益(Net Income)は45億4700万ドルで前四半期より6%増、前年同期比27%減
- 希薄化後1株あたり純利益(Diluted EPS)は2.19ドルで前四半期より8%増、前年同期比23%減
純利益(Net Income)/希薄化後1株あたり純利益(Diluted EPS)が前年同期比で20%以上減少しているが、今四半期は貸し倒れ引当準備金(Net ACL(Allowance for Credit Losses)Build)を3億7500万ドル計上しているのに対し前年同期は24億ドル差し戻していること、経費が増加したことなどを挙げている。
全体的にはトレーディングの業績が債券商品や株式デリバティブ等で好調だった一方、投資銀行業務は低調だった(投資銀行業務が低調だったのは昨日のJPモルガンも同様)。
ストレステストを受けての資本要件
2022年6月のストレステスト及び2023年のG-SIB(Global Systemically Important Banks:グローバルなシステム上重要な銀行)要件を加味した資本要件について以下の様に想定している。
- 2022年第2四半期終了時点でのCET1比率は11.9%(規制要件は10.5%)
- ストレステストを受けてストレス資本バッファーが3%から4%に増加することを考慮し、2022年10月から規制要件が11.5%に増加すると想定
- 更に2023年1月にG-SIBのサーチャージが引き上げられるのに伴い規制要件が12.0%になると想定
2022年通期見通し
2022年通期見通しは以下の通り。
数値目標としては以下のものを挙げている。
- 収入(Total Revenues)(2022年の売却除く):一桁台前半の増加
- 費用(Expenses)(2021年、2022年の売却除く):7~8%の増加
その他
その他シティの決算発表で気になった内容には以下の様なものがある。
- 2022年第2四半期のロシア向けエクスポージャーは84億ドル(第1四半期は78億ドル)。第1四半期に比べて増加しているのは通貨変動によるものでルーブル建てが増加、その他通貨建ては減少している
- ロシア向け貸し倒れ引当準備金は16億ドル(第1四半期は19億ドル)
- ロシアにおける個人向けおよび商業銀行業務からの撤退を検討している
- アナリストのカンファレンスコール内で自社株買い戻しの停止を発表
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2022年第2四半期の収入(Total Revenues)は196億3800万ドル、市場予想の184億3000万ドルを上回っている
- 2022年第2四半期の希薄化後1株あたり純利益(Diluted EPS)は2.19ドル、市場予想の1.70ドルを上回っている
となっている。
まとめ
シティグループの2022年第2四半期決算を確認してみたが、市場予想を大幅に上回る結果ではあったものの、自社株買いの停止を発表するなど正直10%を超える急上昇に見合う結果では無かった気がする。
そこで米国市場及びその他米主要銀の株価も確認してみたところ
市場、米主要銀共に大幅上昇し、JPモルガンも決算発表後のマイナス分を回復している。調べてみると
- 連邦準備理事会(FRB)が今月の会合で100ベーシスポイント(bp)の利上げに踏み切るとの観測が後退した
- 米ミシガン大学が7月15日発表した7月の消費者信頼感指数(速報値)が51.1と過
去最低だった6月の50.0から上昇(市場予想は50.0) - 米商務省が7月15日発表した6月の小売売上高(季節要因調整済)が前月比1.0%増で市場予想の0.8%増を上回った(ただし小売売上高はインフレを加味していないため、インフレを加味すると実際に消費者の購買意欲は増加していない可能性が高い)
といった要因も市場上昇の一助となったようだ。とはいえシティ株上昇が他の主要米銀株にくべて突出して高いことを踏まえると、シティの予想を上回る決算が市場を引っ張る大きな要因の一つであったと言えるだろう。
年初来のシティ株推移を市場(S&P 500)と比べてみると
決算発表後の急伸で市場と同程度のパフォーマンスまで回復した。
今後の事を考えるとJPモルガンの決算時に書いた様に
「最近の市場低迷、FRB利上げの不透明さ、逆イールド現象など米銀株に期待できる要素はあまりないのが実状。今後も弱含みでの推移が続くのだろう。」
というスタンスは変わらない。
ただ、JPモルガンの決算を受けての下落でシティの決算発表前までは下落する可能性が高いと想定しシティの株数が大きいため資産全体に与える影響が心底不安だったので、ひとまず無難に決算を乗り越え株価が大幅上昇したことは本当に助かった。今後にやや不安はあるものの、今は決算を受けてシティ株が下落せずに大幅上昇した事を素直に喜んでおきたい。