はじめに
現地時間2025年6月12日(木)、エア・インディアのロンドン行きボーイング787型機がインドのアーメダバード市を離陸した直後に墜落し、240人以上が死亡した。
以下、墜落事故の初期段階の情報について確認し、整理しておくことにする。
2025年6月12日のエア・インディアのボーイング787型機墜落事故に関するまとめ
事故の概要
- 2025年6月12日(木)、エア・インディアのロンドン行き171便ボーイング787型機がインドのアーメダバードを離陸した直後に墜落
- 搭乗していた乗客・乗員242人のうち、241人が死亡し1人の生存者が確認、また墜落地点は住宅地で多くの人が巻き込まれた恐れ
- フライト追跡サービスのフライトレーダー24のデータによると、事故機は2014年にエア・インディアに納入されたボーイング787-8ドリームライナーで、GEエアロスペースのGEnxエンジンを2基搭載
- 同機は離陸後に高度625フィート(約190メートル)に到達し時速174ノット(約322キロ)の速度で航行していたが、着陸装置を出したまま徐々に降下し、地面に衝突して大きな火球となって爆発したとのこと
- 航空管制データによると、171便は現地時間12日午後1時39分にアーメダバードを出発したが、離陸直後にパイロットは管制官に向けて緊急信号を発した。その後管制官からの呼び掛けに操縦室からの応答はなかったとのこと
事故を受けての対応
【ボーイング】
- 社長兼最高経営責任者(CEO)のKelly Ortberg氏が以下の声明を発表
- エア・インディア171便の乗客乗員の皆様、そしてアーメダバードで被害に遭われた皆様に、心よりお悔やみ申し上げます
- エア・インディアのN. Chandrasekaran会長と協議し、全面的な支援を表明しました。ボーイング社はインド航空事故調査局(AICB)が主導する調査を支援する準備を整えています
- ボーイング社は、国連国際民間航空機関の議定書付属書13に従い、エア・インディア171便に関する情報提供をインドの航空事故調査局(AAIB)に委ねます
- Kelly Ortberg氏は、自身とボーイング民間航空機部門責任者のStephanie Pope氏は、チームとともに顧客と調査に集中するため6月16日~20日のパリ航空ショーへの訪問を取り止めたとの社内メールを送付
【GEエアロスペース】
- 6月17日に予定されていたInvestor Dayを中止し、墜落した飛行機のデータを分析するためのインドに派遣する緊急対応チームを編成すると発表
- 今月下旬に財務状況の最新情報を発表する予定
【米政府】
- Sean Duffy運輸長官とChris Rocheleau連邦航空局(FAA)長官代行が会見で以下の発言
- Duffy運輸長官
- (墜落の)動画を検証して何が起きたかを見極めようとしているが、これは事実関係を判断する上で、決して強力で賢明な方法ではない
- 国家運輸安全委員会(NTSB)のJennifer Homendy委員長と話をした
- ボーイングGEエアロスペースの支援を受けたNTSBとFAAのチームがインドへ派遣される
- 安全性に関する勧告があれば(米政府は)躊躇なく実行に移す
- 事実に従い、安全を第一に考える
- RocheleauFAA長官代行
- 調査を進めていく過程で何らかのリスクに関する情報が得られれば、リスクを軽減していく
- Duffy運輸長官
事故直後のボーイング、GEエアロスペースの株価
事故発生後のボーイング、GEエアロスペースの株価は以下。
個人的には両社ともにもっと大幅な株価下落となるのを覚悟していたのだが、思ったよりは下落幅は大きくなかった。現時点では事故原因が判明していないこと、米政府が787型機の運航停止命令を出していないことがその理由と思われる。
まとめ
以上、2025年6月12日のエア・インディアのボーイング787型機墜落事故に関する初期段階での情報を整理してまとめた。
年初来のボーイング、GEエアロスペース株は
4月2日の米相互関税措置に伴い大きく下落したものの、4月9日の相互関税上乗せ分90日間一時停止を受けてやや持ち直した。そして両社とも4月下旬の決算発表で
ボーイング(BA)2025年第1四半期決算発表(2025/4)
6%を超える上昇となり上昇傾向。その後5月に入って米中関税の一時大幅引き下げに伴い、中国が受け取りを停止していたボーイング737MAX型機の納入が再開されるとの報道から上昇幅を拡大していた中で、今回の墜落事故が発生してしまった。
現時点では上述の通り事故原因は判っていないのだが、これまで就航以来10年以上死亡事故が無く、現在世界で約1100機が運航されているとされる787型機の構造上の問題が原因だった場合にはボーイング、エンジンを供給しているGEエアロスペースの更なる株価下落が想定されるため、今後の続報に注意しておきたい。