はじめに
2024年10月22日(火)には自分の所有銘柄の一つであるフィリップ・モリス(PM)の2024年第3四半期決算発表があった。
前回の四半期決算では市場予想を上回り、通期見通しも引き上げたことから上昇し、その後数日も市場の下落に対して上昇傾向だったが
「今回決算前後の市場と比べた上昇振りは行き過ぎの感があるので個人的にはこのペースが続くとは思っていない。とはいえ決算内容からすると堅調な事業が続く可能性は高いので、緩やかな株価上昇を期待したい。」
と懸念はありつつも堅調な株価推移を期待する旨を書いていた。今回の決算結果そして株価はどうなったのか。以下フィリップ・モリスの決算内容を確認し整理しておく。
フィリップ・モリス2024年第3四半期決算発表概要
以下の情報は、フィリップ・モリス・インターナショナルのサイトより引用・抜粋。
- 2024年第3四半期の純売上(Net Revenues)は99億1100万ドルで、為替や買収を除いて前年同期比11.6%増加
- 2024年第3四半期の調整後営業利益(Adjusted Operating income)は41億5300万ドルで、為替や買収を除いて前年同期比13.8%増加
- 2024年第3四半期の調整後希薄化1株あたり純利益(Adjusted Diluted EPS)は1.91ドルで前年同期比14.4%増加、為替の影響を除くと1.97ドルで前年同期比18.0%増加
- 2024年第3四半期のタバコ製品(Cigarettes)と加熱式タバコ製品(Heated Tobacco Units)の出荷量は、タバコ製品が前年同期比1.3%の増加、加熱式タバコ製品が前年同期比8.9%の増加。トータルでの出荷量は2.6%の増加
2024年通期見通し
2024年通期の見通しは以下の通り。
- Total Shipment Volumes(総出荷量):2~3%(以前の1~2%から上方修正)
- Net Revenue Growth(既存事業成長率):~9.5%(以前の7.5~9%から上方修正)
- Adj. OI Growth(調整後営業利益成長率):14~14.5%(以前の11~13%から上方修正)
- Adj. Diluted EPS Growth(調整後希薄化1株あたり利益成長率):14~15%(以前の11~13%から上方修正)
- Adj. Diluted EPS(調整後希薄化1株あたり利益):6.45~6.51ドル(前回の6.33~6.45ドルから上方修正)
- Adj. Diluted EPS, ex-currency(為替の影響を除く調整後希薄化1株あたり利益):6.85~6.91ドル(前回の6.67~6.79ドルから上方修正)
その他
その他決算発表及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。
- 2024年9月に2021年に買収した子会社のVectura GroupをMolex Asia Holdingsに1億5000万ポンドで売却すると発表
- Vecturaの買収費用は11億ポンド
- Vecturaの所有権に関連する外部からの制約や批判という不合理な負担から解放(タバコメーカーのフィリップ・モリスが喘息吸入器メーカーVecturaを買収することには当初から批判があった)
- 取引は2024年末までに完了する予定
- 2024年10月18日にカナダで長年続いているタバコ訴訟の和解のため、裁判所が任命した調停者の提案した計画の一部として325億カナダドル(236億ドル)を支払う予定と発表
- 本計画の投票は今年12月に行われ、請求者により受け入れられた場合、計画の承認を検討する公聴会は来年前半に開催される予定
- 第3四半期の全体的な業績はすべてのカテゴリーで基礎的な勢いが強まり、当社の戦略の健全性を象徴するものであった
- 調整後希薄化1株あたり純利益(Adjusted Diluted EPS)の1.91ドルは過去最高
- ICOS及びZYNの出荷量は当社の予想の上限に達し、可燃性製品も非常に好調だった
- 第3四半期の紙巻きタバコの実績は1.3%増となり、中国と米国を除く世界の紙巻きタバコ業界全体の推定成長率である0.5%を上回っている
- トルコ、インド、ブラジルなど無煙タバコが認められていない市場での販売数量が増加したこと
- 地政学的要因もあって多くの市場で違法販売数量が減少したこと
- 第3四半期に1億8000 万ドルのコスト効率化を達成し、特に製造及びバックオフィス コストに重点を置いた取り組みにより今年これまでに約4億9000 万ドルのコスト削減を達成。2024年~26年の目標である20億ドルの総コスト削減に向けて順調に進んでいる
- HTU(Heated Tobacco Units)調整後IMS(In-Market-Sales)は前年同期比14.8%増となり、第2四半期比で18億本という大幅な前四半期比増。これは季節性によるマイナスの影響を受けることが多い四半期としては特に印象的
- 年間約110億ドルの強力な営業キャッシュフローという当社の見通しの変更はない
- 質疑応答
- 加熱式タバコ(IQOS)出荷量の伸びは過去の2桁から第3四半期には1桁台後半に減速したが予想される販売量についてもう少し詳しくコメントしてもらえるか
- IQOSについて考える際には、消費者の消費動向を最もよく表す指標である調整済み市場内販売(HTU調整後IMS)に注目してほしい
- 出荷量は実際の消費から切り離されるという事実を我々は重視している
- 我々は下半期にIQOS の勢いが加速すると予想していると述べていたが、実際、第3四半期の調整済み市場内販売では15%近くまで伸びている
- 供給レベルの不足から市場シェアを落としたZYNの回復軌道について
- 第4四半期のあるタイミングで供給が消費者の需要を満たすと述べたが、すべてのレベルの在庫を完全に補充するという意味ではない
- 我々は在庫レベルを通常のレベルに戻していくが、それは2025年以降になるだろう
- 2025年通年で約9億缶の総生産能力を目標としているが、生産能力の増強は徐々に構築されるものであり間違いなく数ヶ月はかかる
- 第3四半期後半にはZYNの市場シェアが前期比で改善しており、製品の入手性が回復するにつれて明るい見通しが持てると考えているが、現時点ではそれ以上の具体的なことは難しい
- 2025年は紙巻きタバコの販売量と価格設定にとってかなり好調な年になるのでは
- 2025年については今はコメントしない
- ただ良い点は、実際に販売量を増やし、セグメントのシェアを拡大し、同時に非常にダイナミックに価格を上げる(9.7%)ことができていること
- 今後も間違いなく値上げは続くだろうが、8%から9%という数字を将来の目安と捉えないでもらいたい。当社は中期的には1桁台半ばの値上げになると常に述べている
- カナダの訴訟和解への支払いは税金控除の対象になるか。また、この長期にわたる訴訟に最終的な決着がつくのはいつだと思うか
- 先週発表したプレスリリースで、その段階で私たちが言えることをお伝えした
- 提案された解決策には、調停人によって最終決定されていない要素がまだいくつかあり、最終的な条件が決まり次第和解が当社にどのような影響を与えるかという質問にもすべてお答えする
- 加熱式タバコ(IQOS)出荷量の伸びは過去の2桁から第3四半期には1桁台後半に減速したが予想される販売量についてもう少し詳しくコメントしてもらえるか
市場予想との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2024年第3四半期の純売上(Net Revenues)は99億1100万ドルで、市場予想の96億9000万ドルを上回っている
- 2024年第3四半期の調整後希薄化1株あたり純利益(Adjusted Diluted EPS)は1.91ドルで、市場予想の1.82ドルを上回っている
となっている。
まとめ
上記の様な決算結果を受けてフィリップ・モリス株は
前日比10.47%の上昇。同日の米国市場が
ほぼ前日と横ばいだったことを考えると急騰と言っても過言ではない上昇となった。市場予想を上回る好調な第3四半期(調整後希薄化1株あたり純利益(Adjusted Diluted EPS)は過去最高)であり、通年見通し(つまり第4四半期)の見通しも為替の悪影響がありながら引き上げている点や、IQOSの好調さ、ZYNの供給問題が解消へ向かっていることなどが評価されたのだろう。
今回の決算翌日を含めた年初来のフィリップ・モリス株の推移を市場(S&P 500)と比べてみると
2024年7月23日の第2四半期決算から上昇傾向が顕著となり、8月初、9月初の市場下落局面でもあまり影響を受けず上昇。そして9月中旬のVectura売却で下落し、その後は市場が上昇しているのに対しほぼ横ばいの推移だったが、今回の決算を受けての急騰で年初来約40%の上昇となっている。そして翌日も市場は下落したのだが、揺り戻しなどの下落とはなっていない。
今後のフィリップ・モリス株だが、個人的には上がり過ぎで揺り戻しがあるのではという気もしていたのだが、翌日も無難に通過してその懸念は当たらなかった模様。決算では明確な悪材料がなかったので、しばらくは堅調な株価推移を期待してもいいかもしれない。