はじめに
先月2024年9月13日(金)にボーイングのワシントン州シアトルとオレゴン州ポートランドの工場で16年振りのストライキが始まったことについては既にまとめたが、1ヶ月が経過しようとする10月9日(水)時点でもまだストライキは続いている。
時間も経過したことだし、ここでは前回まとめた9月15日時点からどのような交渉があり、現在どのような状況になっているのかを確認して整理しておくことにする。
ボーイング労組ストライキの経緯と現状(10月8日時点)
9月15日(日)時点までは以前のまとめ参照。日付は米国時間。
- 9月16日(月)、ボーイングの最高財務責任者(CFO)Brian West氏の従業員宛てのメール
- このストライキは我々の回復を大きく危うくするものであり、資金を温存し、我々の共有する未来を守るために必要な行動を取らなければならない
- ストの影響を受ける737、767、777プログラムに関するサプライヤーの発注の大半を停止する
- これらの行動が不確実性と懸念を生むことは承知している
- 9月17日(火)、ボーイングと最大労組のIAMが交渉を行うも賃金と年金の重要問題で合意できず。翌18日(水)に連邦調停官の立会いの下、契約協議を再開
- 9月18日(水)、ボーイング最高経営責任者(CEO)Kelly Ortberg氏の従業員宛てのメール
- 今後数日間に一時帰休を始め、米国に在籍する大勢の役員と管理職、従業員に影響を与えることになる
- ストライキ期間中、一部の従業員を対象に4週ごとに1週間の一時帰休を実施することを計画している
- ボーイング経営陣はストライキ期間中相応の減給を受ける
- 9月18日(水)、連邦調停官の立会いの下交渉を行うも合意には至らず。以下はIAMの声明
- 意味のある進展はなかった
- 直接であろうと調停を通してであろうと更なる話し合いに前向きではあるが、現在のところ追加日程は予定されていない
- 我々は組合員にふさわしい契約を求めて闘うことを約束する
- 9月20日(金)、ワシントン州とオレゴン州の数千人のボーイング従業員の一時帰休が始まる
- 9月23日(月)、ボーイングがストライキを続ける労働組合に対して「最善にして最終」とする以下の内容などを含んだ提案を労組執行部に送る
- 4年間で30%の賃上げ
- 年次賞与の復活や退職給付金積み増し
- 雇用契約締結時の賞与を2倍の6000ドル
- 9月27日(金)までに提案が受け入れられることが条件
- 9月23日(月)、IAMはボーイングの提案を組合員の投票にかけることを拒否
- ロジスティック的に3万3000人を対象にした投票を数日で実施する能力はない
- その上、組合員が重要だと言っていたことの多くが(ボーイングの提案では)的外れだった
- 23日(月)の夕方に組合員にアンケートを実施し、ボーイングの最新提案に対する意見を聞く予定
- 9月24日(火)、ボーイングは労働組合に対し、新たな労働条件について労働組合が投票に踏み切った場合、より多くの時間を与え、後方支援を提供するために連絡を取った、と発表
- 9月24日(火)深夜、IAMは月曜日に行った組合員へのアンケート結果を発表
- 昨日の調査結果は圧倒的に明確で、最初の提案とほとんど同じぐらいだった
- 私たちは皆さんの声を聞き、この提案は組合員の優先事項に取り組むには十分なものではないことをはっきりと伝えました
- このストライキの解決策を見出す道として、ボーイングとの調停または直接協議を予定する用意があります
- 9月25日(水)、ボーイングとIAMは27日(金)に交渉を再開することで合意
- 9月27日(金)深夜、IAMは賃金交渉が中断され、現時点では次回以降の交渉日程が未定だと発表
- IAM:我々は直接であれ仲介であれ、会社との交渉に引き続き前向きだ
- ボーイング:可能な限り早く合意に達することを望んでおり、いつでも交渉のテーブルに着く用意がある
- 10月1日(火)、ブルームバーグがボーイングが新株発行によって最低でも100億ドルの資金調達を検討していることが分かった、と報道。ボーイングはコメントせず
- 10月4日(金)、IAMはストライキに終止符を打つ合意を求める両者の協議が10月7日(月)に再開されると発表
- 10月7日(月)深夜、IAMはボーイングおよび連邦調停委員と終日会談したが報告すべき有意義な動きはなく、明日また交渉に戻ると発表
- 10月8日(火)、S&Pグローバルがボーイングの格付けを引き下げ方向のクレジット・ウオッチ(CW)に指定したと発表。現在ボーイングの格付けは投資適格級で最低水準の「BBB-」であり、格下げした場合には投機級水準に転落する
- 10月8日(火)深夜、ボーイングはストライキを実施中の労働組合に提示していた賃上げ案を撤回し、交渉を中断した。以下はボーイングの最高執行責任者(COO)Stephanie Pope氏の従業員宛てメールより
- 残念ながら、組合はわれわれの提案を真剣に検討しなかった
- (組合の要求は)交渉不可能だ
- これ以上の交渉は現時点では意味がなく、われわれの提案は撤回された
まとめ
アナリストによると1日あたり1億ドルの収入を失うともされるストライキが続いている訳だが、過去1ヶ月のボーイング株を見てみると
9月13日(金)のストライキ開始で160ドルをして回ってからは155ドル前後の推移が続いており、期間中米国株式市場が上昇しているためもあってか意外にも持ちこたえている印象。そして10月8日の状況は米国株式市場閉場後の事であり株価に反映されておらず、本日10月9日の米国株式市場で大きく下落する可能性もある。
たとえ10月9日の米国市場でもここ1ヶ月の様にボーイング株が持ちこたえたとしてもストライキが続いていることが問題であるのに変わりは無く、現状些細な事がキッカケで株価が急落する可能性があると思っている。
一日でも早いストライキ終結を望みたいが、上で確認してみた過去1ヶ月の流れを見る限りでは残念ながらまだまだ時間がかかるのだろう。そしてここ1ヶ月は持ちこたえたボーイング株だがこれからの株価下落にも精神的に備えておいた方がいいだろう。10月23日に予定されている2024年第3四半期決算発表で説明されるであろうストライキの業績への影響が今から思いやられる。
補記
ちなみにこれを書いた翌日10月9日(水)のボーイング株は
やはり前日比3.41%の下落。同日の米国株式市場が
いずれもプラスだったのに助けられた感はあるが、150ドルを割って年初来安値を更新してしまったが自分が想定していた程の急落とはなっていない。この日の下落で8日の悪材料を株価に吸収してくれているといいのだが。